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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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【特別展】没後50年記念 川端龍子 ―超ド級の日本画―

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山種美術館で開催中の “【特別展】没後50年記念 川端龍子 ―超ド級の日本画―” に行ってきました。

川端
(注:館内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。)


こちらは、大正から昭和にかけて活躍した川端龍子の超ド級の回顧展です。
「たつこ」 と書いて、「りゅうし」。
小野妹子と同じくらいに間違えられやすいですが、れっきとした男性です。

そんな “日本画界のドラゴン” こと川端龍子を、まずは簡単に紹介いたしましょう。
若き日は洋画家を目指していた川端龍子。
しかし、留学先のアメリカでなんやかんやあって、日本画家へと転向。
独学で日本画を習得します。
当時、日本画界の主流であったのは、 “床の間芸術” (=個人的な空間で楽しむ芸術)。
しかし、そんな風潮にNOを突き付け、

「日本画は、もっとダイナミックであるべき!
 展覧会の会場で、多くの観客に楽しんでもらうべきだ!」


という “会場芸術主義” を唱えました。

かくして、龍子は迫力満点の大画面の作品を次々と発表していきます。
例えば、中国の山を飛ぶ戦闘機 (なぜかシースルー!) を大胆に描いた 《香炉峰》

香炉峰
川端龍子 《香炉峰》 1939(昭和14)年 紙本・彩色 大田区立龍子記念館


その横幅は、なんと7.2mもあります!

また、鳴門の渦潮を臨場感たっぷりに (それも、想像だけで!) 描いた 《鳴門》

鳴門
川端龍子 《鳴門》 1929(昭和4)年 絹本・彩色 山種美術館

その横幅は、なんと約8.5mもあります!
しかも、使用した群青は、なんとなんと約3.6kg!!

それまでの日本画がミニシアター系の映画なら、
龍子の描いた日本画はまさにド迫力のハリウッド映画。
この圧倒的なスケール感は、会場で実物を目の前にしない限り、味わえません。
自分の作品を飾るために龍子自身が設計した大田区立龍子記念館で観るのもいいですが。
近い距離で目にできる今回の山種美術館での展示は、特にオススメ!

会場尾

龍子作品の会場芸術主義っぷりを、より実感することができます。
ハリウッド映画を4Dで観ているくらいの臨場感です。
山種美術館で絶賛ロードショー中のこの機会を、どうぞお見逃しなく!
星星


ちなみに、僕のイチオシ作品は、《爆弾散華》

爆弾散華
川端龍子 《爆弾散華》 1945(昭和20)年 紙本・彩色 大田区立龍子記念館


一見すると、無駄に (?) 背景がキラキラとした植物の絵。
ちょっとお上品な植物画にしか見えないかもしれません。
しかし、この絵は何を隠そう戦争画。
『プラトーン』 や 『プライベート・ライアン』 なみの戦争画なのです。
終戦直前に、米軍の戦闘機から落とされた爆弾が、龍子の自宅の庭を直撃したそうで。
畑の作物は、一瞬にして吹き飛ばされました。
そんな悪夢のような光景をストップモーションのように描いたのが、この一枚。
そう、画面のキラキラは爆弾の閃光を表現しているのです。


それと、《草の実》 も、必見の一枚。

草の実


紺の絹地に焼金、青金、白金の金泥で描かれているのは、
ススキやオミナエシといった秋の草花、そして、龍子の自宅周辺に生えた雑草です。
何気ない植物を描いた作品なのですが、《爆弾散華》 と同様に迫力が満点。
さらに、荘厳で高貴な印象すら受けます。
尋常でないくらいにカッコイイ日本画です。


ちなみに、展覧会は前後期で一部作品が展示替えされます。
後期には、龍子のジャーナリズム精神がいかんなく発揮された、
放火によって金閣寺が炎上したその年に発表された 《金閣炎上》 が出品されるとのこと。

金閣炎上
川端龍子 《金閣炎上》 1950(昭和25)年 紙本・彩色 東京国立近代美術館
(注:後期展示は、7/25~8/20です)



出来れば、前後期合わせて訪れたい展覧会です。
星星


最後に、個人的にどうしても気になった作品をご紹介。

真珠


こちらも、横幅約8mという龍子の “会場芸術主義” を代表する作品です。
そのタイトルは、《真珠》
こんだけの大画面で、描かれている真珠は1粒だけ。

真珠


「小っちゃ!!」

会場で誰もがそうツッコんだに違いありません。




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