「命短し恋せよ乙女」～マツオヒロミ×大正恋愛事件簿～

いつの時代も、人は恋愛ゴシップが大好き。
そんなことを実感させられる展覧会が、弥生美術館で開催されています。
その名も、“「命短し恋せよ乙女」～マツオヒロミ×大正恋愛事件簿～”。

こちらは、明治の末から大正時代にかけて、世を賑わせた文化人の恋愛事件の数々を、
当時の記事や写真、初公開を含む貴重な遺品など約200点の資料を通じて紹介する展覧会です。

帰国した義江を東京駅に出迎えた長男・義昭とあき

平塚らいてうの手紙初公開 NPO 法人平塚らいてうの会所蔵

ネットやワイドショー、週刊文春もない現代と比べたら、
大正時代なんて、それなりに寛容な時代だったんだろうなぁ・・・なんて思っていたら。
とんでもなかったです！
この時代は、それらすべての役割を、新聞が担っていたようでした。
それも、スポーツ紙ではなく、一般紙が。

松井須磨子の後追い自殺を報じる『朝日新聞』

恋愛ゴシップを堂々と取り上げているだけでなく、
そのニュースに対して一般人から寄せられた投稿も載せていたようです。
大正時代も、ちゃんと（？）炎上していたのですね。

しかも！

Ｗ不倫やら叔父と姪との禁断の恋やら、心中やら逃避行やら山荘での情死事件やら。
いちいちゴシップが衝撃的。
「事実は小説よりも奇なり」とは、まさにこのことです。

大正時代を賑わせた恋愛事件に比べたら、
矢口真里もベッキーも松居一代の事件なんて、大したことがない気がしてきました。

主演映画の撮影の途中で、相手役の俳優と駆け落ちし失踪、
さらにその数年後には、別の男性とロシアに亡命したという元祖お騒がせ女優・岡田嘉子。
そのお騒がせっぷりも、加藤紗里の比ではないほど、相当に強烈でしたが。
個人的にもっとも印象に残ったのは、山田順子という女性のお騒がせぶりでした。

山田順子写真

最初の結婚によって3人の子供を得るも、夫の破産によって離婚。
シングルマザーとなって、小説家を目指します。
ある出版社社長の愛人となって、処女小説を刊行。
その本の装幀を依頼した竹久夢二とも恋仲に。
順子の出現により、夢二はお葉と破局したそうで。
このスキャンダルが原因で、夢二の人気はガタ落ちとなったのだとか。
その後、順子は、夢二の元を離れ、徳田秋聲ら大正の文壇人と恋愛を繰り返したのだそうです。
ザ・魔性の女。

ちなみに、夢二は順子と結婚する気満々だったよう。
その証拠となる手紙が展示されています。

夢二が順子の兄にあてた手紙山田家所蔵

そんな手紙が存在しているにも関わらず、夢二は破局後、順子について、

出帆 (1972年)/竜星閣

自伝小説の『出帆』で、このようなことを述べています。

「夢二と順子は大正14年に順子の実家のある秋田県本荘を訪れ、
　二人が結婚するかのような印象を与えたものの、夢二にそのつもりはなく、迷惑だった―」

あちゃー。
これはカッコ悪い。
いつの時代も、男は『女々しくて』な生き物なのかもしれません。

さて、今回の展覧会は、展示の内容が内容だけに、全体的にモノクロです。
そこで、現在人気急上昇のイラストレーター・マツオヒロミさんが大抜擢！
彼女の代表作数点と、今回のために描き下ろした新作3点が、会場に色と華を添えています。