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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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Film:39 『セザンヌと過ごした時間』

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セザンヌ


■セザンヌと過ごした時間

  監督:ダニエル・トンプソン
  出演:ギョーム・カリエンヌ、ギョーム・カネ
  2016年/フランス/114分

近代絵画の父と称されるフランスの画家ポール・セザンヌと、
文豪エミール・ゾラの40年にわたる友情を描いたドラマ。
少年時代に出会い、境遇こそ異なるがともに芸術を志す2人は、夢を語り合って成長する。
やがて先にパリに進出したゾラは小説家として成功を収めるが、
同じくパリに出て絵を描き始めたセザンヌはなかなか評価されず、落ちぶれていく。
そんな時、ゾラがある画家をモデルにした小説を発表したことで、2人の友情に亀裂が入ってしまう。
(「映画.com」より)


「今月2日より、Bunkamuraル・シネマにて、
 公開が始まったばかりの 『セザンヌと過ごした時間』 をてまいりました。
 
 作品や制作スタイルはともかくも、どうもイマイチ好きになれないセザンヌ。
 その理由が、この映画を通して、よくわかった気がします。
 気難しいし、すぐキレるし、わめくし、人を不快にさせるし。
 屈折ぶりがハンパではありません。
 近隣住民にトラブルを起こしてニュースで取り上げられているオッサンに近いものがありました。
 
 でも、心を開いたゾラだけには、時折、チャーミングな素顔を見せるセザンヌ。
 基本的に、終始ダメ人間なセザンヌですが、
 あんな姿を見せつけられたら、ゾラも見放せないよなぁ。
 僕も、友人に一人、セザンヌタイプの男がいるので、ゾラの気持ちがよくわかりました。
 いやぁ、男の友情っていいものですね。


 男同士の友情を描いた映画としては、もちろん。
 画家の人生を描いた映画としても、よくできていました。
 セザンヌの画家としての葛藤が、実に丹念に描かれていた気がします。
 
草上の昼食


 特に、マネの問題作 《草上の昼食》 が話題をさらった落選展のシーンは、胸に迫るものがありました。
 セザンヌの切なさといったら・・・。

 ちなみに、絵を描いている最中に、モデルが動いてしまうと

 「動くな!リンゴは動かないだろ!」

 とキレたというセザンヌの有名なエピソードがありますが。
 映画の中では、2回もこのセリフが登場しました。
 大事なことなので、2回言いたかったのでしょう。


 ちなみに、今回一番驚かされたのが、役者がちゃんと老けていくところ。
 若いころはイケメンだったセザンヌとゾラですが、ストーリーが進むにつれ、
 肌のツヤが失われたり、髭に白いものが混じったり、髪の毛が薄くなったり、お腹が出てきたり、
 と、実にリアルに歳を取っていくのです。
 別の役者に変わったのかと思うくらいの変貌ぶり。
 役者2人の演技力とメイクの技術の賜物です。







 最後に、まぁまぁのネタバレになりますが。
(これから映画を観に行かれる方は、スルーしてください!)

 ラストシーンが、とにかく切ない!
 あまりに切なさすぎて、悲しみを通り越して、笑えてきました。
 切なさが突き抜けると、むしろ可笑しみに感じられるようです。
 そう言えば、志村けんのコントにも、
 サラリーマンの悲哀、貧乏人の悲哀をテーマにしたものがありますね。
 笑いとしては、それに近いものがありました。

 もちろん、ラストシーンで笑いをこらえていたのは、きっと僕だけ。
 周りの人は、普通にウルウルしているようでした。
 スター スター スター スター ほし (星4つ)」


~映画に登場する名画~

《サント=ヴィクトワール山》

サント=ヴィクトワール山


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