サントリー美術館が、赤坂のサントリービルから、
現在の東京ミッドタウン内に移転してから、今年でちょうど10年。
それを記念して、今年は六本木開館10周年を祝う特別展が続々と開催されていますが、
その真打ともいえる展覧会 “天下を治めた絵師 狩野元信” が、いよいよ始まりました!
(注:館内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。)
室町時代末期から江戸時代の終わりまで、
実に400年という長きに渡って画壇に君臨し続けた日本絵画史上最大の画派・狩野派。
その繁栄の基礎を築いた室町時代の絵師、狩野元信の本格的な初回顧展です。
狩野元信という名前だけに、元祖、狩野派の祖のような印象も受けますが。
狩野派の祖は、狩野正信。
元信は、その息子。つまり二代目です。
初代である正信も、室町幕府に御用絵師として仕えるほどの実力の持ち主でしたが、
二代目である元信は、絵師として優れていたのはもちろん、経営者としても優れていました。
そして、その経営センスをいかんなく発揮して、狩野派を一大ブランドにのし上げた人物です。
何とも頼れる二代目。
あの時代に、『カンブリア宮殿』 があれば、間違いなくゲスト出演していたことでしょう。
狩野派が日本美術界のトップブランドとして君臨した理由。
それは、「真」「行」「草」 の3つの画体を確立させたことにあります。
当時、日本で人気があったのは、中国の絵画。
日本の絵師たちは、中国絵画を規範としていましたし、
パトロンたちは、中国絵画のような絵を絵師たちにオーダーしていました。
元信は、そんな中国絵画の様式を徹底的に研究。
その結果、「細密な描写と描線による真体」「もっとも崩した描写である草体」、
そして、「その中間にあたる行体」 の3パターンの画体を確立することに成功したのです。
これにより、パトロンからの幅広いオーダーに対応することが可能に。
また、弟子たちは 「画体」 を学ぶことで、
誰でも狩野元信スタイルで描けるようになります。(←今でいう、業務のマニュアル化ですね)
そうして育成された弟子たちがたくさん増えることで、
障壁画などの大型のオーダーを受けることも可能になったのです。
まさに、一石二鳥のシステムです。
それに加えて、元信は中国絵画だけでなく、やまと絵も徹底的に研究し、
やまと絵系絵師の専門領域であった絵巻物の部門にも積極的に取り組んでいきました。
重要文化財 《酒伝童子絵巻》 三巻のうち巻三(部分)
画/狩野元信 詞書/近衛尚通・定法寺公助・青蓮院尊鎮 室町時代 大永2年(1522) サントリー美術館
(注:全期間展示。ただし、会期中に展示替あり)
さらには、贈答用品の需要が見込んで、扇絵の制作にも力を入れていきます。
京都市指定有形文化財 《月次風俗図扇面流し屛風》 「元信」印 六曲一隻 室町時代 16世紀 京都・光圓寺
(注:展示期間は10/11~11/5)
ちょっと引いてしまうくらいの事業拡大ぶり。
いや、でも、ここで頑張ったからこそ、狩野派はその後400年も続いたのでしょうね。
そういう意味では、日本美術ファンにはもちろん、ビジネスマンにオススメしたい展覧会です。
ちなみに、今回の展覧会のメインビジュアルに使われているのは・・・
重要文化財に指定されている 《四季花鳥図》 全八幅のうちの一幅。
重要文化財 《四季花鳥図》 八幅のうち一幅 狩野元信筆 室町時代 16世紀 京都・大仙院
(注:展示期間は、10/18~11/5)
キジなんだか、クジャクなんだか、七面鳥なんだか。
センターに描かれている鳥の正体が、サッパリわかりません。
こういう時は、「高橋君に聞いてみないとネ」 のコーナーで、
お世話になっている高橋博士に聞いてみるに限ります。
すると、早速答えが判明。
顔料が褪せてしまっているだろうから、おそらく完成時はもっと鮮やかな色彩だったはず。
であるなら、この鳥は中国南西部に生息するベニジュケイに違いないとのことです。
メスへの求愛の仕方が独特で、気に入ったメスを見つけると、
首の下からワインレッドとブルーが混じった 「肉垂れ」 を出して、見せびらかすのだそうな。
絵に描かれているのは、まさにそんな求愛のシーンなのだとか。
と言われても、まったく映像が浮かばないので、
Youtubeでベニジュケイの求愛シーンの動画を探してみることに。
絵からはイメージできない衝撃的な映像でした (笑)
なんでまた、狩野元信はこんなシーンを描いたのか?!
謎です。
┃会期:2017年9月16日(土)~11月5日(日)
┃会場:サントリー美術館
┃http://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/2017_5/
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天下を治めた絵師 狩野元信
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