~前回までのあらすじ~
「重要文化財とは違うのだよ、重要文化財とは!」
そんな国宝至上主義、国宝馬鹿の男・とに~が、
日本全国を巡って国宝を目にする企画、それが国宝ハンター。
これまでに目にした国宝の数は、実に935件。
そして、次なる国宝を求めて、旅に出る。
フフフ……この風、この肌触りこそ国宝ハンターよ!
天高く馬肥える秋。
今回は、紅葉の季節にこそ行きたい国宝を求めて、滋賀県へとやってきました。
最寄りのJR稲枝駅からお目当ての国宝のある場所までは・・・
この企画始まって以来初となるタクシーを利用。
もちろん金銭的に余裕があったからではなく、
予約型乗合タクシーなるこの地独自のサービスがあったからゆえ。
実際は3000円以上かかる距離ですが、なんと片道900円で乗せてもらえるのです。
ちなみに、僕が乗ったタクシーの運転手さんは、大の話好きのよう。
朝一だというのの、休みなく話しかけてきます。
「お客さん、滋賀は初めて?」
「まぁ、以前に1度」
「ここは琵琶湖と近江牛しかないから」
「そんなことないんじゃないですか?」
「何はともあれ、琵琶湖と近江牛は楽しんでってよ」
「・・・・・はい。」
そうこうしているうちに、目的に到着しました。
こちらは、滋賀県愛知郡愛荘町にある金剛輪寺。
紅葉の名所としても知られるお寺です。
あまりに赤く染まるため、「血染めの紅葉」 という、
“それって逆にイメージ悪いんじゃないの?” と心配になる呼び名も付けられています。
確かに、紅葉はうっとりするほどに美しかったです。
あいにくの雨でしたが、お寺の人によれば、
雨の日のほうが、紅葉の色がクッキリして綺麗とのこと。
らしくなく、国宝そっちのけで、紅葉の写真をバシバシ撮ってしまいました。
と、そろそろ、国宝の本殿へ。
受付から本殿までは、まぁまぁの距離があるようです。
参道の左右両側には、お地蔵さまがビッシリ。
開店直後の百貨店を彷彿とさせる光景です。
さらには、隊列を組んだお地蔵さまも。
これだけお地蔵さまがいると、有難いどころか、うっすら気味が悪いです。
そんな大量のお地蔵さまに見守られながら、
ゴールの 《金剛輪寺本堂》(ジャンル:建造物) に辿り着きました。
こちらは、元寇の役 、すなわち蒙古襲来の戦勝記念として、
当時の近江守護職であった佐々木頼綱によって建立された建造物。
それだけに、威風堂々とした佇まいです。
横綱のように風格のある立派な本殿でした。
本殿の内部も拝観し、下山。
次の目的地である西明寺を目指します。
西明寺があるのは、滋賀県犬上郡甲良町。隣町です。
道のりは3㎞ほどありますが、歩いて向かうことに。
さてさて、歩き始めてすぐに、猫らしきものが目の前を横切りました。
いや、明らかに、猫とは走り方が違います。
よく見ると、その正体は・・・
猿!!!
しかも、見渡せば、そこかしこに猿がいるではないですか。
朝食のパンを食べながら歩いていたのですが、
なんとなく、そのパンが狙われているような気がします。
猿に襲われる前に、急いで口に詰め込みました。
そんな猿出没ゾーンを越えて、
いくつもの田畑を越えて、お次は謎のフェンスが登場。
どうにも一筋縄ではいかないルートです。
「行き止まり?」
と、一瞬焦ったのですが、どうやら先には進めるようです。
ただし、この先には、イノシシがいる模様。
このまま引き返すか、それともデンジャーな道を進むか。
悩みに悩みましたが・・・
前進することにしました。
この日のスケジュールを考えると、ここでのタイムロスは避けたいところ。
というわけで、いつイノシシが現れるかわからない大冒険に挑むことにしました。
一人ドラゴンクエストの始まりです。
しばらく山道を進むと、今度は森が現れました。
雨のせいで、道はかなり滑りやすくなっています。
足元が危険なので、滑った時に両手が使えるよう、傘は畳むことに。
濡れ鼠になりながら、森の中を進みます。
すると、森の奥のほうからガサゴソという音が。
「もしかして、イノシシ?!」
脱兎のごとく駆け出す僕。
人間、危険を察知すると、自然と逃げるようにプログラミングされているようです。
これぞ本能。
しかし、周囲を森に囲まれているため、どちらに逃げればよいかわかりません。
完全に迷える子羊状態に陥ってしまいました。
そんな危機的状況の中に突如として現れたのが、この看板。
「いや、どこにそんな余裕があんだよ!!」
さらに進むと、こんな看板も。
「こんなところで、熊、出すなよ!!」
不本意にも思わず鳥肌が立ってしまいました。
そんなこんなが続き、途中何度も道に迷いながら、どうにか森を脱出。
先日の投入堂への道のりも相当にヘビーでしたが、今回も相当にヘビーな体験でした。
この後、無事に辿り着いた西明寺にて、
国宝の 《西明寺本堂》(ジャンル:建造物)と、
《西明寺三重塔》(ジャンル:建造物) を観たわけですが・・・
その感動よりも、イノシシと遭遇せず森から生還できた感動のが圧倒的に勝っています。
しかも、この日、運良く秘仏の虎薬師 (※) を拝観させて頂けたのですが。
(※虎の上に薬師如来が乗っているという超レアケースの仏像)
やはり森からの生還に比べたら。
ところで、こちらの西明寺。
立派な十二神将が祀られていることから、別名、「えとの寺」 とも呼ばれているそうです。
ちなみに、僕の干支であるイノシシだけ、なぜかナルシストキャラでした (笑)
・・・・・ん?干支?
そういえば、ここまでの道のりを振り返ってみると・・・
天高く馬肥える秋。近江牛。犬上郡甲良町。猿。イノシシ。
一人ドラゴンクエスト。濡れ鼠。脱兎のごとく。鳥肌が立って。
迷える子羊。ヘビーな体験 (←これはちょっと無理があるw)。虎薬師。
干支が全部揃ってる!!
きっと西明寺のお導きです。
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第百五十三話 国宝ハンター、気付く!
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