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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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アジェのインスピレーション ひきつがれる精神

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天才アラーキーこと荒木経惟氏には、
「やっぱ <私情> がなくちゃね。やっぱりアッジェだね。」 と言わしめ、
日本を代表する写真家・森山大道には、
「現代に至るまで、アッジェの写真への心の追及は止むことがない」 と言わしめる写真家。
それが、ウジェーヌ・アジェ (1857~1927) です。

俳優を目指すも、結局目が出ず劇団を解雇。
画家を目指すも、才能が開花せず、やはり挫折。
41歳のときに、職業写真家へと転向しました。
当時失われつつあった19世紀パリの古き良き時代の姿を、丹念に記録し続けたアジェ。
30年の職業写真家人生で撮影した写真は、実に8000枚にも及ぶそうです。
全体的には、驚くほどパッとしない人生でしたが、
最晩年になって、マン・レイらシュルレアリストの芸術家たちからジワジワ注目を浴びはじめます。
そして、その死後、マン・レイのアシスタントを務めていたベレニス・アボットや、
ニューヨーク近代美術館のキュレーターの功績により、アジェは 『近代写真の父』 と呼ばれるまでに。
そして、現在もなお、多くの写真家に影響を与えているようです。


そんなアジェの作品とその系譜を受け継ぐ写真家の作品を合わせて紹介する展覧会、
“アジェのインスピレーション ひきつがれる精神” が、東京都写真美術館で開催されています。

道
ウジェーヌ・アジェ 《ショワジー館、バルベット通り8番地》 1901年

トリニ館、ケ・ダンジュ通り11番地
ウジェーヌ・アジェ 《トリニ館、ケ・ダンジュ通り11番地》 1902年


正直なところ、写真の良し悪しがイマイチわかっていないので、
“何で、そんなにアジェが絶賛されるんだ?” と、謎だったのですが。
アジェの写真と他の写真家の作品を見比べるうちに、おぼろげながらわかってきたことがありました。
アジェ以外の写真家の作品を鑑賞する際には、
“こういう意図でこの写真を撮ったのかな” と写真家の存在が感じられるものですが。
記録写真に徹したアジェの写真からは、ほとんどといっていいほどアジェの存在が感じられません。
完全にステルス状態。
特にそれを感じたのが、今回のポスターにも使われている 《日食の間》 という一枚です。

日食の間


今でこそカメラが当たり前の世の中ですが、
この当時は、カメラはまだまだ珍しかったはず。
いくら日食に集中しているとは言え、一人くらいはカメラを気にしそうなものです。
まるで画面のこちら側に誰もいないかのよう。
撮影したアジェは、透明人間だったのかも。
『世にも奇妙な物語』 に通ずる世界観があります。
怖い絵ならぬ、怖い写真です。


怖いといえば、こんな写真も。

ウジェーヌ・アジェ《フルーリー街76番地、シャペル大通り》1921年
ウジェーヌ・アジェ 《フルーリー街76番地、シャペル大通り》 1921年


こちらは、2人のモデルがカメラに向かってポーズをしています。
ただ、2人が微妙に距離があるためか、
どこか現実感がなく、まるでコラージュ作品のような印象を受けました。
ちなみに、画面左にご注目。
実は、建物の陰から顔だけ覗かせている3人目の女性がいます。
動いてしまったのでしょう。
顔はブレブレで、半透明になっています。
心霊写真のようでした


個人的に一番心に残ったのは、《紳士服店、ゴブラン通り》 という一枚です。

アジェ


ショーウィンドウの中にあるマネキンのギュウギュウ感 (?) を狙ったのか。
それともショーウインドウに写り込む景色の面白さを狙ったのか。
撮影したアジェの意図が全く見えてこない不思議な写真でした。
よーく見ると腰に手を当てた似たようなポーズをした男性2人の姿が映り込んでいます。
そして、その間に一人の人物のシルエットがうっすらと見えます。
それがアジェなのかも。


ちなみに、展覧会としては、アジェの精神を受け継いだのでしょうか、
アジェの影響を受けたという写真家の作品を、ただただ記録的に並べただけという印象。

ウォーカー・エヴァンズ 《写真家のウィンドウディスプ
ウォーカー・エヴァンズ 《写真家のウィンドウディスプレイ、バーミンガム洲、アラバマ》 1936年


どの辺がどうアジェの影響を受けているのか、
特に現代の日本の写真家に関しては、イマイチ伝わらなかったです。
星
アジェがすごいということだけは伝わりました。




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