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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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第7回菊池ビエンナーレ 現代陶芸の〈今〉

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2年に1度の現代陶芸の祭典、菊池ビエンナーレの季節がやってきました!
第7回となる今回には、日本国内を中心に総数322点がエントリー。
そのうちの入選作52点 (大賞1点、優秀賞1点、奨励賞3点を含む) が、菊池寛実記念 智美術館で、
今まさに開催中の展覧会 “第7回菊池ビエンナーレ 現代陶芸の〈今〉” で紹介されています。


栄えある大賞に輝いたのは、和田的さんの 《表裏》
一対からなる作品です。

和田的《表裏》


フォルムはほとんど一緒なのですが。
よく見ると、片方には縦に線が入っています。
その線とライティングによって生まれる絶妙な陰影が、なんともいえない緊張感を生み出していました。
こちらの緊張感のあるほうが “表” なのか、
はたまた、もう片方の表面がのっぺりしたほうが “表” なのか。
哲学的な印象すら受ける作品でした。


続く優秀賞に輝いたのは、前回に引き続き今回も津守愛香さん。
前作は 《サムライ・マーメイド》 でしたが、今作は 《人魚仏》 です。

人魚仏》


前作は、のほほんとした空気を漂わせていましたが。
今作は、そこに情念のようなものがプラスされていました。
感情に深みが増していたような気がします。
ちなみに、パッと見は可愛らしい雰囲気なのですが、
よくよく近づいてみると、目が笑っていないことに気が付かされました。
思わず、「ゾッ」「ゾクッ」 とします。
パンダの目って意外と怖い。それに通ずるものがありました。


奨励賞の受章者は、今回は3名。
一人は、人間国宝だった三代 徳田八十吉を師に持つ田島正仁さん。

《彩釉鉢》
田島正仁 《彩釉鉢》


どこか富士山を彷彿とさせる青から、
どこか陽の光を彷彿とさせる薄い黄色へのグラデーションが、実に美しかったです。
まるで壮大な景色を見たかのよう。
心が洗われました。


二人目は、中田雅巳さん。

中田雅巳《SEN》


一見しただけでは、わりかしシンプルな作品なので、
「んー?どのあたりが奨励賞??」 と失礼なことを思ってしまったのですが。
タイトルである 《SEN》 の意味が判明した際には、「そりゃ受章するわ!」 と納得しました。
器の表面にビッシリと細い線がありますが、
実はこの1本1本の線は、手作業で掻き落されたされたもの。
奥に見える黄色い器にいたっては、線を1本1本削った後に、黄色を象嵌したものなのだとか。
確かに、よーく近づいてみると、フリーハンドで作られた線であることがよくわかります。
それを知った上で改めて観てみると、陶芸作品というよりも、抽象絵画のような印象を受けました。
で、その抽象絵画を、筒状にくるっとまるめたような。
2.5次元な陶芸作品です。


そして、三人目は、1991年生まれの若手作家・釣光穂さん。

釣光穂《Ivy》
釣光穂 《Ivy》


まるでアミモノのようなアミモノ陶芸で、注目を集めている作家だそうです。
造形も独特ですが、色合いも独特。
なんとなく、きゃりーぱみゅぱみゅを連想させるカラーリングです。


ちなみに、釣さんをはじめ、今回はこれまで以上に20代の作家の活躍が目立ちました。
僕のイチオシは、井上俊博さん。

井上俊博
井上俊博 《将棋盤 銘“豪傑頼光之化物屋敷二巣喰土蜘蛛ト対峙スル夜”》


決して、最近の将棋ブームに乗っかったわけではなく、
以前より、陶で将棋盤と将棋の駒を制作し続けているそうです。
もちろん、実際に将棋を指すことも可能とのこと。
是非いつか。プロ騎士にこの将棋盤で対局して欲しいものです。
(注:ただし、美術館に展示されている限りは、お手触れなく!)


そういう意味でも、まさに現代陶芸の〈今〉がわかる展覧会でした。
「陶芸って難しい・・・」 とか、
「陶芸って古臭くない??」 とか思っている人のほうが、
かえって素直に楽しめる展覧会かもしれません。
星


最後に。
世の中の誰も期待していないでしょうが、
もし入選作の中で、とに~賞をあげるとするならば、と考えてみました。
熟考の末、伊藤北斗さんの作品に決定!

伊藤北斗《釉刻色絵金銀彩鉢》


皿の内側にも外側にも、イカがビッシリと描かれています。
そのイカの可愛さたるや!
こんなにもイカをカワイイと思ったのは、生まれて初めてです (笑)
ちなみに、タイトルは 《釉刻色絵金銀彩鉢》
全くイカ関係なかったです。
タイトルは、かわいくない。




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