先日は、東京国立近代美術館へと足を運んできました。
こちらでは、現在、“没後40年 熊谷守一 生きるよろこび” が絶賛開催中なわけですが。
その開催に合わせて、『横道世之介』『南極料理人』 の沖田修一監督が、
守一の晩年のある1日を描いた話題の最新作 『モリのいる場所』 の先行試写会が開催されることに。
来年5月の公開よりも一足早く、いや二足も三足も早く鑑賞させて頂きました。
ありがたや。
■モリのいる場所
監督・脚本:沖田修一
出演:山崎努、樹木希林
2018年/日本/99分/
昭和49年の東京・池袋。
守一が暮らす家の庭には草木が生い茂り、たくさんの虫や猫が住み着いていた。
それら生き物たちは守一の描く絵のモデルであり、
じっと庭の生命たちを眺めることが、30年以上にわたる守一の日課であった。
そして、妻の秀子との2人で暮らす家には、毎日のように来客が訪れる。
守一を撮影することに情熱を傾ける若い写真家、
守一に看板を描いてもらいたい温泉旅館の主人、隣に暮らす佐伯さん夫婦、近所の人々、
さらには、得体の知れない男まで。
老若男女が集う熊谷家の茶の間はその日も、いつものようににぎやかだった。
(「映画.com」より)
「まず何と言っても、山崎努さんの演技が秀逸でした!
終始、熊谷守一にしか見えません。
いや、守一本人を見たこともないですし、ましてや会ったこともないのに、
「似てる!そっくり!」
と、納得させられるものがありました。
実は、試写会の後に、サプライズでご本人が監督とともに登場したのですが。
守一役とのあまりのギャップに、
一瞬、「こんな人出てたっけ?」 と思ってしまったほど (笑)
主役で、出ずっぱだったのに。
それから、キャストも超豪華でした。
守一の妻・秀子役には、実は今作が山崎努さんと初共演となる樹木希林さん。
守一の写真を撮ることに情熱を燃やすカメラマン藤田役には、加瀬亮さん。
守一の家の隣でマンションを建設する現場監督役に、青木崇高にさん。
他にも、光石研さん、きたろうさん、吹越満さん、三上博史さんなどが脇を固めています。
彼らと山崎努さんの演技合戦は、実に見ごたえがありました。
ストーリーは、基本的にフィクションだそうですが、
“《伸餅》 の絵を見た昭和天皇が、「何歳の子供が描いたのか?」 と尋ねた” とか、
“長いこと蟻を観察し続けた結果、「蟻は左の二番目の足から歩き出す」 ことを発見” とか、
守一の有名なエピソードは、ちょこちょこ挟まれていました。
守一ファンなら、ニヤリとすること請け合いです。
全体的には丁寧に作り込まれていて、美術映画としての出来は申し分がないのですが。
どうしても言いたいことが、1つだけ!
さて、ここからはネタバレを含みます↓
劇中で2回ほど、ドスベリしていました。
あのギャグ (?) いります??
1つ目は、守一が文化勲章の内示を辞退するシーン。
その少し前から、唐突に劇中の人物が、とある芸人さんたちの話をし始めるので、
「ん??」
と、なんとなく違和感を覚えていたのですが。
まさか、それが伏線となって、あんな展開に繋がろうとは!
ちょっとしたシーンでもクスクス笑いが起きるほどに、試写会の会場は温まりきっていました。
しかし、問題のシーンでは、誰一人笑わず。
体感温度が5度くらい、下がりました。
今までテレビで多くの人を笑わしてきた、
お笑い界の鉄板のフォーマットで、あそこまでスベることがあるだなんて。
今、改めて考えると、逆に面白いものを見たような気になってきました (笑)
そして、もう一つはギャグというか、設定なのですが。
物語の終盤、あまりに唐突な展開に、再び会場中がポカンとなります。
皆の頭の上に、「?」 マークが浮かんでいたのがハッキリと見えました。
それは、三上博史さんの正体が明かされるシーンでのこと。
前半にちょろっと登場したときには、ただの情緒不安定な人物でしたが。
実は、何を隠そう、その正体は〇▼※◇って、いやいやいや!
それは、さすがにシュールすぎるでしょ!!
“僕は、今、何を見させられてるんだろう?”
真剣に観ていて、ちょっと損をした気分。
それなら、蟻の行列をじっと見ていたほうがマシです。
とは言え、公開まで、あと約半年。
もしかしたら、試写会の反応を受けて、
この2つのシーンは無くなっているかもしれません (笑)
(星3.5つ)」
~映画に登場する名作~
《宵月》
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Film:40 『モリのいる場所』
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