本日より、国立新美術館で始まりました・・・
“「具体」-ニッポンの前衛 18年の軌跡” に行ってきました。
関西を中心に、1950年から60年にかけて、
一時代を築いた前衛美術グループ・具体美術協会 (通称「具体」) 。
その18年間の活動の全容を、約150点の作品を通じて、振り返る大規模な美術展です。
お膝元である関西で、これまで何度も回顧展が開かれているのは、もちろん。
海外でも高い評価を受けていることから、
ヨーロッパでも何度も回顧展が開かれている 「具体」 (海外では、 「GUTAI」 )
しかし、実は、東京での 「具体」 の回顧展は、今回が初めてのことなのだそうです。
ではでは、 「具体」 とは、具体的に、どんなグループなのでしょうか?
まずは、そこからお話しすることにいたしましょう。
「具体」 のリーダーとして、立ち上げから最後まで、メンバーを引っ張っていったのが、
《黒地に赤い円》 など、“円” をモチーフにした一連のシリーズで知られる…
関西の抽象美術の先駆者・吉原治良。
人は、彼を、 “ミスターグタイ” と呼んでいました。
そんな吉原治良のもとに、関西在住の若きアーティストたちが集い始めます。
「われわれの精神が自由であるという証を具体的に提示したい」
という、吉原の想いから、「具体」 という名前のグループが、こうして結成されました。
まず、吉原は、若手メンバーに対して、
「人の真似をするな!これまでになかったものを作れ!」
と、檄を飛ばしました。
それを受けて、田中敦子は、電気で洋服を作ります。
白髪一雄は、足で絵を描きます。
金山明は、手作りの機械に絵を描かせます。
若手メンバーは、持ち前のチャレンジ精神で、
吉原の無茶ブリに見事に応え、それまでの美術の歴史には無かった作品を、次々に生み出したのです。
さて、そうして生まれた作品をジャッジするのは、リーダー・吉原。
彼は、作品を前に、 「ええ」 か 「あかん」 の2言だけで、ジャッジしてたのだとか (笑)
また、リーダー・吉原は、さらなる無茶ぶりを、若手メンバーに与えます。
やれ、公園を使って、美術展をしよう、だとか。
やれ、舞台を使って、美術展をしよう、だとか。
挙句の果てには、空中を使って、美術展をしよう、だとか。
若手メンバーは、吉原の発想に刺激を受けながら、
さらなる斬新な作品の数々を発表していくのです。
しかし、その斬新性は、当時の日本人には受け入れられず、
代わりに (?) 、海外で高い評価を受けることになります。
「具体」 を高く評価したフランスの美術評論家は、このようなことを言いました。
「GUTAI、イイデスネェ。世界ニ通用シマスネェ。
デモ、世界ニ持チ運ブニハ、絵画作品ノ方ガイイデスネェ。」
「具体」 のメンバーは、その提案を受け入れて、
パフォーマンス作品から離れ、平面作品を中心にした制作に打ち込むようになります。
しかし!
実は、これが、 「具体」 が終息する大きな要因だったのです!
自由な精神で作品を作るのが最大の魅力だった 「具体」 。
ところが、平面作品を中心に制作することで、その自由さが、失われていくハメに・・・。
若手芸人中心で、やりたいことをやっていた深夜番組が、
ゴールデンに進出した途端に、つまらなくなってしまった・・・まさに、そんな感じです (笑)
こうして、その後、作品がマンネリ化したり、メンバーが抜けていったり、
と、低迷期が続き、リーダー・吉原の急死に伴って、 「具体」 は、解散の道を辿ることとなるのです。
そんな 「具体」 の18年の歴史を余すことなく、具体的に辿ることが出来た今回の美術展。
作品のノリが好きか好きでないかに関わらず、
日本に、このような美術のムーブメントがあったことを知るには、とても良い機会でした。
「具体」 のメンバーたちの熱意だけでなく、
「具体」 の熱意を伝えたいという企画者の熱意も、
美術展会場の端々や、無料配布しているリーフレットから伝わってきました。
僕的には、作品は、あんまり 「あかん」 でしたが、美術展は 「ええ」 。
そうそう、企画者の熱意と言えば、こんなところにも↓
入り口からして、いきなり変なことになっています。
何があったのでしょう?!
実は、こちらは、金の紙を全身で破る 《紙破り》 パフォーマンスが代名詞の村上三郎をリスペクトしたもの。
(もちろん、村上三郎は、 「具体」 の代表的なメンバー)
村上三郎自体は、1996年にお亡くなりになっているので、
その息子さんに、美術展のオープンと同時に付き破らせたのだそうです (笑)
また、国立新美術館の、あのうねるようなガラス曲面にも、何やら不思議なものが。。。
近づいてみると、色とりどりのの色水が袋に詰められているではないですか!
こちらも、 「具体」 の代表的メンバーである元永定正の代表的インスタレーション作品の再現。
会場を飛び出してまで、 「具体」 展を行っているのが、
なんとも、 「具体」 展らしいチャレンジ精神で、 「ええ」 です (笑)
ちなみに、数々展示されている作品の中で、
僕が一番 「ええ」 と思ったのは、今中クミ子さんの 《赤と黄》
発泡スチールに埋め込まれた無数の金属板。
その金属板の片面は赤に、もう片面は黄色に塗られています。
たったそれだけの仕掛けなのに、
この作品を見つめていると、動いたり、波打ったりしているように錯覚してしまうから不思議です。
続いて、ヨシダミノルさんの 《Bisexual Flower》
照明が落とされた暗い一角に、妖しげに光る謎のマシーン。
不気味な溶液がコポコポしてたり、
イミフなものが上下したり、ヘンテコさは会場一です。
しかも、結構うるさい (笑)
でも、何か惹きつけられるように、一連の動きを観てしまいました。
ラストは、森内敬子さんの 《作品》 という作品。
ネタバレになるので、具体的には説明しませんが (笑)
「何じゃそりゃ!」
と、思わずツッコみたくなるイミフな作品です。
(ヒント:ただ、あれを一列に並べてるだけですからねぇ)
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「具体」―ニッポンの前衛 18年の軌跡
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