府中市美術館、春の恒例企画。
「春の江戸絵画まつり」 が今年も開催されています。
今年のテーマは、『リアル』。
今でこそ、リアルに絵を描くというのは、基本中の基本のことのような気がしますが。
実は、日本においては、西洋絵画の概念が輸入されてから、スタンダートになったもの。
江戸時代までの絵画は、リアルさ (写実性) ではない部分に美を求めていたのです。
そんな風潮の中でリアルな表現を追求した、
当時としては異端の江戸の絵師たちにスポットを当てたのが、今回の “リアル 最大の奇抜” という展覧会。
細密な毛描きを得意とした江戸時代の動物画家・森狙仙の 《群獣図巻》 や、
元船頭という異色の経歴を持つ大阪の絵師・墨江武禅の 《月下山水図》 など、
前後期合わせて約120点のリアルな江戸美術が紹介されています (一部、室町時代の作品も)。
見ごたえはありましたが、リアルがテーマということで、作風は基本的に同じ路線。
味があまり変わらないので、江戸美術にそこまで興味がないと、途中でちょっと飽きてしまうかも。
ちなみに、今回の展覧会で特にフィーチャーされていたのは、
日本でいち早く銅版画制作を手掛けことでも知られる司馬江漢と、 《円窓唐美人図》
「写生」 に基づく新たな画風によって日本美術史に革命を起こした円山応挙の2人。 《鯉図》
それぞれ、まとまった数の作品が紹介されています。
その中で特にインパクトを受けたのは、円山応挙の 《大石良雄図》 でした。
一見すると、そこまでリアルな絵画ではありません。
レンブラントやレオナルド・ダ・ヴィンチといった西洋の画家と比べてしまうと・・・。
しかし、実はこの絵は、江戸時代の作品としては珍しく、ほぼ等身大で描かれているのです。
つまり、大きさがリアル。
大きな仏画や花鳥画は、珍しくないですが。
江戸美術で大きな人物画は、初めて目にしたかもしれません。
それと同じくらいインパクトが大きかった応挙作品が、《百兎図》。
1、2羽くらいならカワイイものですが。
百羽もいると、リアルに怖いです。
ウサギの繁殖力に、ただただ圧倒されました。
また、今回の展覧会の大きな特徴は、
知られざるマニアックな江戸時代の絵師たちも数多く紹介されていること。
この中に、若冲や蕭白に続く、次世代のスターがいるかも?!
個人的にイチオシしたいのは、北斎の門人だったという安田雷洲。
展覧会には、《鷹図》 が出展されていました。
これまで多くの絵師が、《鷹図》 を描いてきましたが。
こんなにも世紀末感 (?) の強い 《鷹図》 があったでしょうか。
江戸時代の原哲夫。それが、安田雷洲 (←?)。
最後に、もう1点紹介したいのが、
司馬江漢の弟子だったと言われる亜欧堂田善による 《遠藤猪右衛門像》 です。
きっと亜欧堂田善は、遠藤猪右衛門なる人物をリアルに描きたかったのでしょう。
その結果、遠藤猪右衛門の顔の長さと、しゃくれ具合が際立ってしまいました。
顔の形が、子機みたいになっています。
ちなみに、会場のラストには、早くも来年の 「春の江戸絵画まつり」 の予告が!
来年のテーマは、“へそまがり日本美術” だそうです。
ポスターのメインビジュアルに採用されていたのは、徳川三代将軍・家光の絵画。
蛾でも描いたのかと思いきや・・・《兎図》 とのこと。
殿、ご乱心でござる。
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リアル 最大の奇抜
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