~前回までのあらすじ~
「国宝はともだち。こわくないよ」 が口癖の国宝ハンター・とに~は、
1115件ある国宝すべてを目にするべく、日本全国を駆け巡っている。
ダッシュ ダッシュ ダッシュ ハンティング・エンド・ダッシュ。
これまでに目にした国宝の数は、966件。
国宝ひとつにキリキリ舞いさ。
今回は兵庫県にやってきました。
旅の目的地は、兵庫県加東市にある朝光寺です。
事前リサーチによると、朝光寺への公共交通機関によるアクセスは困難とのこと。
JRの最寄り駅からは、徒歩2時間15分。
最寄りのバス停からでも、徒歩1時間はかかるようです。
・・・・・・・・・・。
さすがに、そんな 『帰れマンデー見っけ隊!!』 みたいなロケは嫌です (キッパリ!)。
ということで、素直に今回の旅のスタート地点である神戸で、レンタカーを借りることにしました。
Googleマップの案内では、1時間ほどで到着する見込みでしたが。
慣れない道、延々と続く曲がりくねった山道、高速バス移動による体力の消耗…etc
いろんな要因が重なり、朝光寺に着くまでに、結局、1時間半以上かかってしまいました。
遠かった・・・。
ちなみに、到着した時には、誰もおらず。
駐車場には、僕の車が1台あるだけです。
奥地にあるため、ほとんど人が訪れることがないのでしょうか。
駐車場の白線は、ほとんど見えないくらいに、薄くなっていました。
さて、案内看板に従って、まずは参道へ。
思わず二度見してしまいましたが、この山道みたいなのが、どうやら参道のようです。
この参道をまっすぐ進んでいくと、つくばねの滝という滝があります。
名前はかわいらしいですが、水量は意外と多め。
滝の音量とマイナスイオンも意外と多めです。
CMやPVの撮影で使われそうな雰囲気の滝。
この近くに、宇多田ヒカルがいても、何の違和感もありません。
そんなつくばねの滝のすぐ近くに朝光寺はあります。
境内には、絶えず滝の音が鳴り響いていました。
これまで数多くの国宝建造物を訪ねてきましたが、
滝の音を聞きながらの国宝の鑑賞は初めてかもしれません。
で、こちらが国宝の 《朝光寺本堂》(ジャンル:建造物) です。
実に、立派!
外観だけでなく、内部も立派でした。
特徴的だったのは、床下の高さ。
ちょっと頭をかがめるだけで、床下に入れました。
平均的な身長の女性なら、すんなり入れてしまうほどの高さです。
しかし、とにもかくにも立派。
なぜ、こんな奥地に、このような立派な建造物があるのでしょうか。
実は、イマイチよくわかっていないそうです。
神戸から車で1時間以上も離れた地に、これほどの建造物を作った人の頑張りにも頭が下がりますが。
この本堂を国宝にしようと決めた選定委員のメンバーたちにも頭が下がります。
かつて、選定委員の中には特にバイタリティ溢れる田中 (仮) というメンバーがいました。
委員会には、日々、日本全国から “アレって国宝じゃないの?” という情報が寄せられます。
田中はどんな些細な情報でも大事にし、実際に足を運びました。
東に国宝らしき建造物があれば、行って検証し、
西に国宝らしき仏像があれば、行って拝観し、
南に国宝らしき刀があれば、行って鑑定し。
北に国宝らしき絵があれば、行って鑑賞し。
山の奥であろうが、深い森の中であろうが、
島であろうが、谷底であろうが、洞窟であろうが、海底であろうが。
そこに国宝が存在する可能性がある限り、現地へと足を運んだのでした。
しかし、どれだけ苦労してたどり着いたとして、
それに国宝としての価値が無ければ、ただの無駄足に終わるのです。
また、田中が国宝と認めたところで、他のメンバーが認めなければ国宝には指定されません。
他のメンバーは田中と違って、普段は京都や奈良などの街の近くで国宝を探しているのですが。
田中から国宝の候補を見つけたという連絡が入ると、
そして、田中が挙げた候補を、他のメンバーたちが隅々までチェックして、こう言うのです。
「田中さー。いつも言ってるけど、これ全然国宝じゃないから!」
「えっ?だって、古そうだよ」
「古けりゃ、全部国宝になるわけじゃないって、何度言ったらわかるんだよ!
てか、毎度毎度、街から離れたとこで見つけてきやがって!付き合わされる俺らの身にもなれよ!」
「・・・・・・ごめん。」
しかし、田中はへこたれません。
翌日には、また日本各地へと旅立っていくのです。
そんなある日、また田中から他のメンバーへ呼び出しがかかりました。
「あのさー。今回、兵庫県の山奥で見つけた朝光寺の本堂はスゴいよ!あれは国宝!」
「神戸からどんだけ離れてるんだよ!もういい加減にしろよ!」
「今回は、本当に本当なんだって!!」
「そこまで言うなら、今回も国宝じゃなかったら、お前もう選定委員やめろよ!」
「・・・・・よし、わかった!」
田中に連れられて、メンバーは朝光寺へと渋々やってきました。
「全く、こんな奥地に国宝の建造物なんてあるわけが・・・えっ!?」
「でしょ!」
「おー、これはスゴい!確かに、国宝だ!」
「だよね!」
「田中、疑って悪かった。そのぉ・・・これまでのことは水に流してくれ」
「えっ?何、滝の音でよく聞こえないや。とりあえず、これで国宝が1件増えたね」
「田中。お前ってヤツは」
・・・・・・・・なんて、やり取りがあったのかもしれません。
1時間半も一人で車を運転していると、こんな妄想をしたりもします。