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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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Film:41 『ミケランジェロ:愛と死』

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芸術の本場ヨーロッパを含む世界60か国で高い評価を収め、
なおかつ、興行的にも大成功を収めている映画館上映企画シリーズ 『アート・オン・スクリーン』
誰もが知るあの世界的な芸術家は、どのようにして傑作を生み出したのか?
その人生に迫る物語が映画館の大スクリーンで堪能できるという映像エンターテインメントです。
そんな 『アート・オン・スクリーン』 が、ついに日本にも上陸!
6月23日を皮切りに、東劇をはじめとする全国の映画館にて公開されるそう。
しかも、2018年中に、3作品が公開されるそうです。
その第1弾となるのが、『ミケランジェロ:愛と死』 。




今回、公開に先立って、『ミケランジェロ:愛と死』 を鑑賞させて頂ける運びに。
特別なご配慮を頂いたことは誠に感謝しておりますが。
このコーナーは、あくまで本音100%がモットーなので、
あえて、特別な配慮なく、率直な感想を紹介したいと思います (笑)


■ミケランジェロ:愛と死

  監督:デビッド・ビッカースタッフ
  2017年/イギリス/90分

ルネサンスの巨匠ミケランジェロを題材に描いたドキュメンタリー。
ヨーロッパ各地の製図室から、バチカン、ローマ、
フィレンツェの美しい教会や美術館を巡り、ミケランジェロの波乱万丈な生涯を描き出す。
ミケランジェロ本人の言葉や専門家の解説を通し、
「神のごとき」と称された天才芸術家の謎めいた人生に迫る。
(「映画.com」より)


「一人の芸術家の人生を掘り下げ、その美術品の数々を紹介する映像エンターテインメント。
 
 “それって、『美の巨人たち』 みたいなもの??”

 と思って観始めましたが、全然違いました。
 『美の巨人たち』 と違って、小寒い寸劇 (※たまに当たりもありますが) がなかったです。
 そして、小林薫のナレーションもなかったです。
 いや、そもそも、ナレーションがありませんでした。
 ミケランジェロの友人であるジョルジョ・ヴァザーリの評伝や、
 ミケランジェロの存命中に発刊されたという 『ミケランジェロ伝』 の一節の紹介と、
 ミケランジェロに詳しい評論家や専門家たちへのインタビューで、物語は進行していきます。
 ナビゲーター役が不在のため、話が急に飛んだり、
 “これ、今何の時間?” と戸惑ってしまうときは、たまにありましたが。
 それに対し、不親切に感じることはなく、
 映像を追っていくと、ちゃんと1本のストーリーが通っていたことに気づかされます。
 なるほど。だから、副題が 「愛と死」 だったのですね。


 本編では、5年前に初来日した 《階段の聖母》 にまつわるエピソードを筆頭に、

 


 建築家としてのミケランジェロの非凡さを紹介するエピソードや、
 ミケランジェロの素描の素晴らしさを丹念に紹介したエピソードなど、
 ここ近年、日本で開催されたミケランジェロ展と関連するエピソードが続々登場。
 非常に興味深かったですが、興味深かっただけに、
 「もっと早く教えてほしかったぜ!」 とも思わされました。
 ちなみに、今月19日から国立西洋美術館で始まる・・・




  “ミケランジェロと理想の身体” で来日する 《ダヴィデ=アポロ》 も、本編に登場しています。
 皆さまは、「もっと早く教えてほしかったぜ!」 とならないよう、
 展覧会の前に、この映画を先に鑑賞されることをオススメしておきます。


 個人的に特に印象に残っているのは、ミケランジェロが作詞した歌の歌詞。
 いかつい外観からは想像もつかないほどに、“女々しくて” な内容でした。
 あぁ見えて、心は乙女だったのですね。


 それともう一つ印象的だったのが、
 ミケランジェロについて語る専門家の皆さまが、個性的だったこと。
 役者かと思うくらいに、撮られ慣れていました。
 特に、フランチェスカ・ニコリという女性の語りがピカイチ。
 まるで制作中のミケランジェロ本人を直で目にしたかのように、
 身振り手振りを交えて、ミケランジェロの制作方法について熱く語っていました。
 臨場感たっぷり。
 あれは、会ったことがあるレベルの語り口。


 90分のドキュメンタリーと聞いて、長く退屈かもと覚悟していましたが。
 意外と、あっと言う間。
 いや、あっという間は、さすがに言いすぎですね。
 体感時間は、1時間くらいでした。
 笑えるシーンこそ少ないですが (←当たり前!)、
 タメになるエピソードがテンポよく紹介されるので、飽きさせません。
 知的好奇心を刺激するエンターテインメント。
 確かに、世界中でヒットするのも納得。
 素直に、他の芸術家の回も観たくなりました。
 
 美術鑑賞は、美術館だけでなく、映画館でも。
 そんな時代が来るかもしれません。
 スター スター スター スター
ほし (星4つ)」


~映画に登場する名作~

《ダヴィデ像》


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