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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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悪人か、ヒーローか

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太田記念美術館で好評開催中の “江戸の悪 PART II” を筆頭に、
現在、都内の6つの施設にて、「悪」をテーマにした展覧会が同時多発的に開催されています。
そのうちの1つ東洋文庫ミュージアムでは、“悪人か、ヒーローか” という展覧会を開催。


(注:館内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。)


秦の始皇帝に、平清盛に、織田信長に。
ある時代までは、悪人とされていたものの、
時代が経ってヒーロー視されるようになった人物もいれば。
その逆で、時代が経ち、価値観が変わったことで、
ヒーローから一転、悪人とされてしまった人物もいます。
また、同時代でも、ある一方の立場から見れば悪人、
反対の立場から見ればヒーローと、評価の分かれる人物もいます。
そんな歴史上の人物たちの評価にスポットを当てた展覧会です。





彼らの評価を記した記録が、必ずしも中立公正な立場で書かれたものとは限りません。
意図的に貶めたものもあれば、
思い込みから本人とは関係のない悪行まで記してしまったものも (そして、その逆もあります)。
悪人なのか。ヒーローなのか。
それを決定づけるのは、最終的には、本人とは関係なく、記された記録であるようです。
悪人どうこうよりも、その事実が恐ろしかったです。
・・・と過去形で記してしまいましたが。
これは何も過去に限らず、現代のワイドショーやネットでの評価にも同じことが言えるのでしょう。
報じられたこと、記されたこと、すべてを鵜のみにしてしまうのは危険ですね。
無知は悪。
そんなことを学んだ展覧会でした。
星


個人的に一番印象に残ったのは、則天武后について記載された・・・




中国の歴史書 『資治通鑑』 の一節です。
こんなことが書かれていました。




ライバルだった妃たちを百叩きにし、
その後、手足をちょん切った上で、酒壺に漬けたのだとか。
その時のセリフが、「骨の髄まで酔いなさい」 とのこと。
うへぇ。
本当にあったかどうかはわかりませんが、
描写があまりにリアルで独創的すぎるので、少なくとも何か元ネタはあったのでしょう。
何はともあれ、人から恨みは買わないようにしようと思います。


また、今回の展覧会では、悪と関連して、刑罰に関する資料も紹介されていました。
こちらは、江戸時代の刑罰の資料。




罪を白状させるための方法が記載されています。
いわば、マニュアル本。
ちなみに、このページでも、だいぶパンチが効いていますが、
学芸員さん曰く、これでも、まだマイルドなページを選んでいるとのこと。
もっとハードな拷問が記載されているようです。
江戸時代にもジャック・バウアー的なのがいたのでしょうね。


それから、こちらは中国の刑罰の資料。




このページで紹介されているのは、「首枷の刑」 です。
強盗の罪を犯した者は、自分の名前と罪状を書いた紙が貼られた、
巨大な木製の首枷 (重さは約25㎏!) をはめて、3か月生活しなければならないとのこと。
この状態で用を足さなくてはいけないし、この状態で睡眠をしなくてはなりません。
もちろん、食事もこの状態で。
どうやって口元に食べ物を運びましょう?
これは、本当に地獄のような3か月間。
罪人が感情ゼロの表情をしているのも納得です。


また、悪と関連して、こんな浮世絵も紹介されていました。




こちらは、《流行病諷刺絵》 です。
江戸時代、約20年スパンで流行し、猛威を振るったという麻疹。
それに対して、江戸の庶民は、麻疹に対する風刺絵でユーモアをもって対抗しました。
絵の中でボコボコにやられている巨人は、麻疹を擬人化したもの。
パッと見は、『進撃の巨人』 のようです。
そんな巨人をボコボコにしているのは、
麻疹が流行することでダメージを受ける職業、例えば、銭湯や遊郭で働く人々です。
さてさて、画面の下のほうに目をやると、巨人を案じる人々もちらほら。
実は、彼らは薬屋さんやお医者さん。
彼らの場合、むしろ麻疹が流行すれば、儲かるわけです。
なるほど。麻疹の流行も、立場によっては、悪とは限らないですね。


ちなみに。
そろそろ夏休みが近いということで、展示室1階では、
子どもが大好きな (?) 妖怪にまつわる日本と中国の本が展示されています。




それらの本のすぐ隣に設置されていたのは、登場する妖怪を紹介する特製パネル。





子ども向けコーナーということで、
ポケモンずかん風の解説になっていました (笑)
素晴らしいアイディア!




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