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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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フィンランド陶芸 ―芸術家たちのユートピア

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今年2018年は、日本とフィンランドの外交関係が樹立して、ちょうど100年目。
それを記念して、現在、目黒区美術館では、
”フィンランド陶芸 ―芸術家たちのユートピア” が開催されています。




これまでにフィンランドのデザインを紹介する展覧会は何度か開催されていますが、
こちらは、その中でも特にフィンランドの陶芸にテーマを絞った日本初となる展覧会です。
また、これまでの展覧会では、作家がフィーチャーされることはほとんどありませんでしたが。
今回の展覧会では、作家にもバッチリ焦点が当てられています。
紹介されている作家は、もちろん初めて名を耳にする人物ばかり。
人の名前を覚えるのが苦手な方には、ちょっと辛い展覧会かもしれません (笑)


アルフレッド・ウィリアム・フィンチの 《花瓶》 をはじめ、




”あー、なんかフィンランドっぽい!”

と思える陶芸作品も、あるにはありましたが。
それらは、基本的にフィンランド陶芸の初期の頃の作品に限られます。
独自の発展を遂げ、最盛期を迎えた頃のフィンランド陶芸は・・・


トイニ・ムオナ 《筒花瓶》 1940年代


キュッリッキ・サルメンハーラ 《壺》 1957年


造形で勝負した作品が多く、特にフィンランドっぽさは感じられません。
むしろ、日本の陶芸家の作品と言われたら、信じてしまうかも。
それくらいにシンプルで潔いデザインです。

また、その一方で、ビルゲル・カイピアイネンや、
ルート・ブリュックというスターデザイナーの登場により、
それまでの陶芸の概念を覆すような、絵画的表現の陶板やお皿も制作されていきます。


ルート・ブリュック 陶板 《聖体祭》 1952-1953年


ビルゲル・カイピアイネン 《飾皿(テーブルのある部屋)》 1980年代


全体的にキッチュな印象で、なんとなく昭和レトロっぽい感じ。
どことなく、一昔前の 『みんなのうた』 のアニメーションを彷彿とさせるものがありました。

フィンランドの陶芸が、こんなに奥深いものだったとは。
いい意味で、予想を裏切られた展覧会でした。
あなたの知らないフィンランド陶芸の世界に出逢える展覧会です。
星


さてさて、今回紹介されていた作品の中で、特に印象に残ったのは、
動物をモチーフとした作品を得意とするミハエル・シルキンの作品群。
猫にキツネにウサギと、どれもキュートだったのですが、イチオシは 《彫像(梟)》




耳なのか?ツノなのか?
何の上に乗っているのか?
そもそもフクロウなのか?フグなのか?
観れば観るほど、疑問が湧いてくるのですが。
本人があまりに能天気にのほほんとしているので、
最終的には、そんな疑問を持つこと自体が、馬鹿らしくなってしまいました (笑)


また、鳥繋がりで、こんな作品も。
ビルゲル・カイピアイネンによる彫像 《ビーズバード(シャクシギ)》 です。




無数のビーズを組み合わせて作られた鳥。
胴体の部分は、陶製の時計が組み合わされていました。
これは、鳥に体内時計があることにインスピレーションを受けたものなのだとか。
ちなみに、ほとんどの時計が差していたのは、3時。
何か重要な意味があるのでしょうか?犯行時刻?


最後に、純粋に一番欲しいと思った作品を。
フリードル・ホルツァー=シャルバリの 《ボウル(ライス・ポーセリン)》 です。




中国の陶芸に影響を受けているそうで、「蛍手」 という技法が使われています。
「蛍手」 とは、素地を透かし彫りにした後、
透明な釉薬でその穴の開いた部分を充填して焼成する技法です。
光が透過する様は、まさに蛍のよう。
なんとも涼しげで美しい作品でした。
こんな素敵なボウルが、春のパン祭りで当たらないかしら。




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