■フィセント・ファン・ゴッホ:新たなる視点
監督:ドロタ・コビエラ、ヒュー・ウェルチマン
出演: ダグラス・ブース、ジェローム・フリン、ロベルト・グラチーク 他
2017年/イギリス、ポーランド/96分
ある日、郵便配達員ジョゼフ・ルーランの息子アルマンに、パリへ送付する1通の手紙が委ねられる。
その手紙は父の友人であり、自ら死を選んだ画家ゴッホが弟のテオに宛てたものだった。
ところがテオの居所を探しているうちに、彼がすでにこの世にいないことが判明する。
(「シネマトゥデイ」より)
「37歳という若さでこの世を去ったゴッホ。
果たして、本当に自殺だったのか?
ゴッホの絵のモデルでお馴染みの郵便配達員ルーラン夫妻の息子で、
この肖像画のモデルとなっているアルマンが、
関係者たちの証言を聞きながら、その意外な真相に辿り着くというお話。
基本的にアルマンは酒とタバコをやってるし、
腕っぷしに自信があるため、時にバイオレンスな場面もあり、
全体的には、ハードボイルドな探偵モノといった印象を受けました。
怪しげな家政婦が登場するシーンだけは、2時間サスペンス感がありましたが (笑)
真相に関しては、以前に紹介した 『殺されたゴッホ』 のものと、
ほとんど変わらなかったので、そこまで大きな驚きはなかったですが。
真相に辿り着くまでのプロセスが絶妙で、
映画の冒頭からずっとハラハラさせられっぱなしでした。
また、ゴッホの絵で描かれた場所の数々が、舞台として登場するので、
ゴッホファン、西洋美術ファンならば、思わず何度もニヤリとさせられることでしょう。
これまでこのシリーズで紹介してきた映画の中で、間違いなく、一番集中して観た映画です。
と、ストーリーもさることながら、
やはり何と言っても、その独特の映像表現に魅了されました。
ただのアニメ映画かと思いきや、さにあらず。
まずこの映画は、絵の登場人物たちになりきった俳優たちが、
ゴッホの絵画世界をイメージしたセットなどで役を演じ、実写映画として撮影されました。
そして、その映像が特別なシステムでキャンバスへ投影され、
ゴッホのタッチを完璧に習得した125人の画家によって油絵にされます。
その数、なんと62450枚!
最終的に、62450枚の油絵を高解像度写真で撮影し、
それを並べることで、この独特なアニメーションが完成したのだそうです。
なんという途方もない作業・・・。
この映画の製作陣に、ゴッホ以上に狂気を感じました。
なので、1シーン1シーンが芸術作品。
アートをモチーフにした映画であると同時に、
この映画自体が、1つのアートと言っても過言ではありません。
個人的に一番印象に残っているのは、水面に映った自分の顔を見つめるゴッホのシーンです。
実写であれば、どうってことないシーンなのですが、
あの1枚1枚が油絵で表現されているのかと思うと・・・ただただ衝撃です。
そうそう、もう一つ衝撃だったことがありました。
主人公のアルマンを山田孝之が、
父のジョゼフ・ルーランをイッセー尾形が、日本語版の吹き替えを担当していたのですが。
ゴーギャンの声を担当していたのは、なんと落合福嗣でした。
あのフクシくんが、いつの間にやら、立派な声優に。
それもミステリー。
(星5つ)
ちなみに、ゴッホの映画といえば、
いよいよ10月6日より、『フィセント・ファン・ゴッホ:新たなる視点』 の上映が始まります。
そのオープニング回 (10時10分~) の上映前トークショーに、
スペシャルゲストとして、太田記念美術館の渡邉晃学芸員が登壇してくれることとなりました!
渡邉さんがいてくれれば、トークショーは間違いなく面白いものになるでしょう。
まだチケットは販売されているそうですので、
気になる方は、どうぞ東劇窓口・インターネットにて!」
~映画に登場する名作~
《ピアノを弾くマルグリット・ガシェ》