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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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マルセル・デュシャンと日本美術

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現在、東京国立博物館にて、“大報恩寺展” が絶賛開催中ですが。
同じく平成館では、“マルセル・デュシャンと日本美術” という特別展も同時開催されています。
こちらは、今年没後50年となる 『現代美術の父』 マルセル・デュシャンに焦点を当てた展覧会です。

展覧会は、二部構成となっています。
第1部は、「デュシャン 人と作品」





フィラデルフィア美術館が誇る世界屈指のデュシャンコレクションが、なんと初来日!
立体作品、写真、関連資料など約150点が、時系列に沿って展示されています。
その中には、「20世紀美術で最も影響を与えた作品」 と称される 《泉》 や、


マルセル・デュシャン 《泉》 1917/1950 
Philadelphia Museum of Art. 125th Anniversary Acquisition. Gift (by exchange) of Mrs. Herbert Cameron Morris, 1998 
©Association Marcel Duchamp / ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2018 G1311



発表当時、一大センセーションを巻き起こした 《階段を降りる裸体 No. 2》 といった、


マルセル・デュシャン 《階段を降りる裸体 No. 2》 1912
Philadelphia Museum of Art. The Louise and Walter Arensberg Collection, 1950
© Association Marcel Duchamp / ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2018 G1350



デュシャンの代表作の数々も!
さらには、東京大学駒場博物館が所蔵する、通称 『大ガラス』 、
《彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁、さえも》 の複製も特別出展されています。




日本美術の殿堂トーハクでの開催なので、
ちょろっとしたデュシャン展を想像していたのですが、
いやいや、がっつり本格的なデュシャン展でした。
なんだか今年の秋の上野は、スゴいことになっていますね。
西洋美術界のレジェンドが勢ぞろいしています。
ルーベンスもフェルメールもムンクも、そしてデュシャン、さえも。


さてさて、《泉》《階段を降りる裸体 No. 2》 も、もちろん興味深かったですが。
個人的にもっとも興味を惹かれたのは、デュシャンの初期の絵画作品です。




初期から、らしさ全開の作品を制作していたのかと思いきや、
やはりデュシャンも人の子、オーソドックスな絵画を描いていました。
若き日のデュシャンが特に影響を受けたのは、セザンヌとのこと。
『現代美術の父』 は、「『近代絵画の父』の子」 だったのですね。


さてさて、皆さま、薄々感じているでしょうが。
デュシャンの作品は、難易度がかなり高めです。
ただ眺めているだけでは、ほぼ何の感動もありません。
「何でこれがアートなの?」「で、結局、何がしたかったの?」 と、
デュシャンの作品を目の前にして、いちいち考える必要性があります。
これぞという正解はないので、自分なりに納得する解答が出ればオッケーです。
その作業を続けていたら、きっと美術を鑑賞する筋肉が鍛えられるはず。
展覧会を観終えた頃には、美術鑑賞筋 (?) がバッキバキになっているはず。
そういう意味では、今後の美術鑑賞に大いに役に立つ展覧会といえそうです。
星星


ちなみに、「デュシャンの向こうに日本がみえる。」 と題された第2部では、
世界初の試みとして、デュシャン作品とリンクする日本美術の作品が紹介されています。




例えば、こちらの千利休の作と伝えられる竹製の花入。


伝 千利休作 《竹一重切花入 銘園城寺》 安土桃山時代・天正18


一見、デュシャンと何も関係がないような気がしますが。
この花入は、千利休が天正18年の小田原攻めに同道した際に、
伊豆韮山の竹を用いて作ったといわれる花入をもとにしたもの。
それまでの職人が精巧に作った器や花器とは違い、何の変哲もない竹をちょっと加工させただけ。
しかし、結果として、新しい芸術観と絶大な価値を生みました。
これは、市販の男性小便器を横に置き、
‟R.Mutt" という署名と年号をサインしただけのデュシャンの 《泉》 に通ずるところがあります。
まさに、戦国時代のレディメイドです。

他にも、東洲斎写楽の大首絵や本阿弥光悦作の国宝 《舟橋蒔絵硯箱》 などが紹介されています。
「デュシャンとかけまして、日本美術と解く。その心は?」
答えは展覧会場で。




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