入館者数40万人を突破し、大盛況のうちに閉幕した “建築の日本展” に引き続き、
この秋、森美術館でスタートしたのは、‟カタストロフと美術のちから展” です。
震災や戦争、テロ、社会問題などのカタストロフ (大惨事) に対し、
アーティストたちはどのように向き合い、どのような作品を発表したのか、
カタストロフから生まれた作品の数々が紹介する展覧会です。
「建築」の展覧会から、「カタストロフ」の展覧会へ。
前回と今回で、展覧会のテイストが180度ガラッと変わっています。
ちなみに、展覧会には、オノ・ヨーコさんをはじめ、
宮島達男さん、池田学さん、Chim↑Pomなぢ、国内外の40組のアーティストが参加。
六本木ヒルズ・森美術館15周年記念に相応しい豪華な顔ぶれとなっています。
展覧会は、二部構成。
セクションⅠで焦点が当てられているのは、
「美術がカタストロフをどのように描いてきたのか?」 。
真正面から克明に記録したものもあれば、シニカルなユーモアを交えて表現されたものも。
一口にカタストロフを取り扱った作品といっても、その手法はアーティストによって様々です。
続く、セクションⅡでは、「美術のちから」 にスポットが当てられていました。
カタストロフを創作の契機としながらも、希望を感じさせる作品が紹介されています。
展覧会の前半部で少し気持ちが沈みましたが、後半部でちゃんと復活。
おちこんだりもしたけれど、私はげんきです。
さてさて、いつになく心に爪痕を残す作品が多い展覧会でしたが。
まずはじめにインパクトを受けたのは、会場の冒頭で展示されていた、
パリを拠点に活動するトーマス・ヒルシュホルンによる新作大型インスタレーション 《崩壊》 です。
よくよく見ると、実は段ボールやビニールテープで出来ているのがわかります。
しかし、この作品 (光景) が目に飛び込んできた瞬間、
あまりの惨状に思考停止になってしまい、しばらくフェイクであることに気づきませんでした。
圧倒的な破壊の光景を目の当たりにすると、人は無力になってしまうようです。
もう一つ、大型作品として印象的だったのが、
横幅12メートルにもおよぶ艾未未 (アイ・ウェイウェイ) の壁画 《オデッセイ》 です。
昨年、ギリシャでも難民問題が深刻化していましたが、
そんな難民問題の情景が、古代ギリシャの陶器を連想させるスタイルで描かれています。
作品としての完成度が高いので、隅から隅までマジマジと鑑賞してしまいました。
テレビのニュースで難民問題が取り上げられているときは、
海の向こうの出来事だと思って、わりと 「ふーん。」 と流してしまうことが多いのに。
映像や写真よりも、時として、美術作品の方が訴えかけてくる場合もあるのですね。
難民問題以外にも、阪神大震災、9.11同時多発テロなど、
世間を揺るがせたさまざまなカタストロフがテーマとなっていましたが。
全体を占める割合として、やはり一番多かったのは、東日本大震災をテーマにした作品でした。
平川恒太さんの 《ブラックカラータイマー》 という作品もそのうちの一つ。
壁一面に設置されているのは、表面が黒く塗られた108個の時計。
近づいて見てみると、何やら肖像画らしきものがそれぞれ描かれています。
実は、彼らは、福島第一原子力発電所事故後に現地で従事した従業員たち。
黒く塗りつぶされた時計は、止まった時を暗示しているようで、まるで墓標のよう。
不穏さしか感じられません。
武田慎平さんの 《痕》 という写真シリーズも、同じく福島原発事故をテーマにしています。
武田慎平 《痕#7二本松城》 2012年 ゼラチン・シルバー・プリント 50.8 x 60 cm アマナコレクション(東京)
一見すると、星空を映した写真に見えますが。
実は、土壌に含まれた放射線物質を可視化したもの。
放射性物質を含む土壌とフィルムを暗箱の中に一緒に入れ、
一定期間放置すると、放射線の影響でフィルムが感光し、光の粒が記録されるのだそうです。
つまり、キレイに見えれば見えるほど、土壌の汚染濃度が高いということ。
美しさの裏側に潜む見えない怖さ。
ジワジワ不穏になる作品でした。
ちなみに、個人的に印象に残っているのは、
ポーランドのミロスワフ・バウカによる 《石鹸の通路》 という作品。
L字の細長い廊下のような空間の両側には、石鹸が薄く塗られていました。
通路が狭いので、通ると、石鹸のいい匂いがします。
石鹸は新生児の身体を洗うものでもあり、
ガス室に送られる前のユダヤ人たちに手渡されたものでもあり。
生と死の両方を象徴しているのだとか。
石鹸の匂いを感じれば感じるほど、なんとも複雑な気持ちになりました。
しばらく、石鹸の匂いを鼻に残したまま進んでいくと、
カカオのプランテーション農園をテーマにしたCATPC&レンゾ・マルテンスの作品が。
こちらは、3Dプリント技術を用いた型にチョコレートを流し込んで作った作品です。
もちろんチョコレートのいい匂いがしていました。
石鹸の匂いをたっぷり嗅いで、チョコレートの匂いをたっぷり嗅いで。
鼻がカタストロフしました。
1位を目指して、ランキングに挑戦中。
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この秋、森美術館でスタートしたのは、‟カタストロフと美術のちから展” です。
震災や戦争、テロ、社会問題などのカタストロフ (大惨事) に対し、
アーティストたちはどのように向き合い、どのような作品を発表したのか、
カタストロフから生まれた作品の数々が紹介する展覧会です。
「建築」の展覧会から、「カタストロフ」の展覧会へ。
前回と今回で、展覧会のテイストが180度ガラッと変わっています。
ちなみに、展覧会には、オノ・ヨーコさんをはじめ、
宮島達男さん、池田学さん、Chim↑Pomなぢ、国内外の40組のアーティストが参加。
六本木ヒルズ・森美術館15周年記念に相応しい豪華な顔ぶれとなっています。
展覧会は、二部構成。
セクションⅠで焦点が当てられているのは、
「美術がカタストロフをどのように描いてきたのか?」 。
真正面から克明に記録したものもあれば、シニカルなユーモアを交えて表現されたものも。
一口にカタストロフを取り扱った作品といっても、その手法はアーティストによって様々です。
続く、セクションⅡでは、「美術のちから」 にスポットが当てられていました。
カタストロフを創作の契機としながらも、希望を感じさせる作品が紹介されています。
展覧会の前半部で少し気持ちが沈みましたが、後半部でちゃんと復活。
おちこんだりもしたけれど、私はげんきです。
さてさて、いつになく心に爪痕を残す作品が多い展覧会でしたが。
まずはじめにインパクトを受けたのは、会場の冒頭で展示されていた、
パリを拠点に活動するトーマス・ヒルシュホルンによる新作大型インスタレーション 《崩壊》 です。
よくよく見ると、実は段ボールやビニールテープで出来ているのがわかります。
しかし、この作品 (光景) が目に飛び込んできた瞬間、
あまりの惨状に思考停止になってしまい、しばらくフェイクであることに気づきませんでした。
圧倒的な破壊の光景を目の当たりにすると、人は無力になってしまうようです。
もう一つ、大型作品として印象的だったのが、
横幅12メートルにもおよぶ艾未未 (アイ・ウェイウェイ) の壁画 《オデッセイ》 です。
昨年、ギリシャでも難民問題が深刻化していましたが、
そんな難民問題の情景が、古代ギリシャの陶器を連想させるスタイルで描かれています。
作品としての完成度が高いので、隅から隅までマジマジと鑑賞してしまいました。
テレビのニュースで難民問題が取り上げられているときは、
海の向こうの出来事だと思って、わりと 「ふーん。」 と流してしまうことが多いのに。
映像や写真よりも、時として、美術作品の方が訴えかけてくる場合もあるのですね。
難民問題以外にも、阪神大震災、9.11同時多発テロなど、
世間を揺るがせたさまざまなカタストロフがテーマとなっていましたが。
全体を占める割合として、やはり一番多かったのは、東日本大震災をテーマにした作品でした。
平川恒太さんの 《ブラックカラータイマー》 という作品もそのうちの一つ。
壁一面に設置されているのは、表面が黒く塗られた108個の時計。
近づいて見てみると、何やら肖像画らしきものがそれぞれ描かれています。
実は、彼らは、福島第一原子力発電所事故後に現地で従事した従業員たち。
黒く塗りつぶされた時計は、止まった時を暗示しているようで、まるで墓標のよう。
不穏さしか感じられません。
武田慎平さんの 《痕》 という写真シリーズも、同じく福島原発事故をテーマにしています。
武田慎平 《痕#7二本松城》 2012年 ゼラチン・シルバー・プリント 50.8 x 60 cm アマナコレクション(東京)
一見すると、星空を映した写真に見えますが。
実は、土壌に含まれた放射線物質を可視化したもの。
放射性物質を含む土壌とフィルムを暗箱の中に一緒に入れ、
一定期間放置すると、放射線の影響でフィルムが感光し、光の粒が記録されるのだそうです。
つまり、キレイに見えれば見えるほど、土壌の汚染濃度が高いということ。
美しさの裏側に潜む見えない怖さ。
ジワジワ不穏になる作品でした。
ちなみに、個人的に印象に残っているのは、
ポーランドのミロスワフ・バウカによる 《石鹸の通路》 という作品。
L字の細長い廊下のような空間の両側には、石鹸が薄く塗られていました。
通路が狭いので、通ると、石鹸のいい匂いがします。
石鹸は新生児の身体を洗うものでもあり、
ガス室に送られる前のユダヤ人たちに手渡されたものでもあり。
生と死の両方を象徴しているのだとか。
石鹸の匂いを感じれば感じるほど、なんとも複雑な気持ちになりました。
しばらく、石鹸の匂いを鼻に残したまま進んでいくと、
カカオのプランテーション農園をテーマにしたCATPC&レンゾ・マルテンスの作品が。
こちらは、3Dプリント技術を用いた型にチョコレートを流し込んで作った作品です。
もちろんチョコレートのいい匂いがしていました。
石鹸の匂いをたっぷり嗅いで、チョコレートの匂いをたっぷり嗅いで。
鼻がカタストロフしました。
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