東京ステーションギャラリーで開催中の展覧会、
“吉村芳生 超絶技巧を超えて” に行ってきました。
こちらは、山口県生まれの画家・吉村芳生 (1950~2013) の、
中国・四国地方以外の美術館では、初となる大々的な回顧展です。
フェルメール展に、ムンク展に、東山魁夷展に。
今年も沢山の素晴らしい展覧会を観てきましたが、
衝撃度という意味では、この展覧会が今年No.1だったかもしれません!
実をいうと、今も余韻 (衝撃?) を引きずっています。
久しぶりにガツンと胸を打たれた展覧会でした。
さてさて、一般的には、吉村芳生の名前はまだそこまで浸透していませんが。
アート界隈では、その名が知られた人物です。
彼の名が一躍広まったのは、2007年のこと。
森美術館で開催された“六本木クロッシング2007” に出展された作品群が大きな話題となります。
それをきっかけに、一気に注目を集め、アート界においてスターダムにのし上がります。
その時、なんと57歳。
遅咲きの画家として大ブレイクを果たすも、2013年に突然逝去してしまいました。
今回の展覧会では、そんな吉村芳生の全貌を明らかにすべく、
初期から絶筆まで、62件600点以上の作品を3章仕立てで紹介しています。
まずは、「ありふれた風景」 と題された章からスタート。
その名の通り、ありふれた風景を描いた作品が集められています。
ただ、モチーフは、ありふれた風景なのですが、そのスタイルは全くありふれていません。
例えば、こちらの 《河原 No.7》 という作品。
(注:館内の写真撮影は、特別に許可を頂いております)
一見すると、何の変哲もないモノクロの風景画ですが、
近づいて見てみると、無数のマス目で構成されているのがわかります。
元の写真を小さなマス目に分割し、10段階の階調を付け、それをひたすら紙に描き写していく。
実に途方もない作業で制作された作品です。
その数年後に描かれたのが、《ジーンズ》 という作品。
まずは、ジーンズを接写した写真を大きく引き伸ばし、鉄筆で2.5㎜四方のマス目を引きます。
そして、そのマス目1つ1つを紙に鉛筆で映していきます。
2.5㎜四方なので、もはや近づいてもマス目がわからないレベル。
ファミコンの画素から、スーファミの画素に進化したような感じでした。
作品とともに、製作途中のプロセスも展示されていましたが。
その気が遠くなるような作業を想像するだに、頭と目がクラクラしてしまいました。
それらの作品群も十分に衝撃的でしたが。
さらに衝撃だったのが、こちらの 《ドローイング 金網》 という作品。
モチーフは、ごくごく普通のありふれた金網。
それを、ただひたすら忠実にドローイングした作品です。
網目の数は、なんと約18000個!
完成までに70日費やされた超大作です。
ちなみに、長さはなんと約17m!
銀座の画廊での初個展のために制作された作品とのこと。
17mというのは、その画廊の壁の長さだったのだとか。
金網を描き続けたことも狂気ですが、
そもそも画廊の壁面を金網で埋め尽くしたいと発想したこと自体が狂気です (笑)
天才タイプの画家は、少なくない数存在していますが。
吉村芳生は、完全に努力タイプ。
それも超絶努力タイプです。
正直なところ、「ありふれた風景」 の章だけで、
お腹いっぱいになりましたが、展覧会はまだまだ続きます。
続いては、「百花繚乱」。
モノクロの世界から一転、一気にカラフルな世界が広がります。
油彩画なのかと思いきや、その正体は色鉛筆。
ファーバーカステルの120色の色鉛筆です。
作品はカラフルになりましたが、作風は相変わらず。
写真を撮り、マス目を1コマずつ塗り潰していく、やはり尋常でないスタイルで制作されています。
そのことがよくわかるのが、絶筆である 《コスモス》。
描かれていない部分には、下絵などは一切無し。
あるのはマス目だけでした。
未完成であることではじめて、マス目を1コマずつ塗り潰していたことが実感できる。
ある意味で、完成作のような気もしました。
展覧会のラストを飾るのは、「自画像の森」。
こちらでは代表作である 〈新聞と自画像〉 シリーズが紹介されています。
〈新聞と自画像〉 は、新聞の上に鉛筆で自画像を描いた作品シリーズです。
吉村芳生曰く、新聞は社会の肖像とのこと。
つまり自画像on自画像です。
ここまで数多くの超絶的な作品を観過ぎたせいで、
もはや驚けないことが、冷静に考えると驚きなのですが、新聞もすべて模写。
写真から文字まで、すべて描き写されています。
極めつけは、40mにわたって展示された 《新聞と自画像 2009年》 。
こちらは、先ほどの 〈新聞と自画像〉 とは違い、
実際の新聞紙の上に、自画像を描いたシリーズです。
“じゃあ、ちょっとは楽じゃん♪” と安心してはいけません (←?)。
2009年の1月1日から12月31日まで、新聞休刊日である1月2日を除き、
毎日休まず新聞を購入し、毎日休まずその日の新聞に自分の顔を載せたのだそうです。
毎日休まずブログを書いている自分が言うのもなんですが (笑)、
毎日休まず作品を制作し続けるなんて、頭がおかしいとしか思えません。
ちなみに。
新聞は一社に限らず、さまざまな新聞が使用されていました。
吉村芳生の展覧会は、どの新聞社も主催になる可能性があるのですね。
意外とこういうところは気を使っている吉村芳生です。
この展覧会を機に、一般的にも吉村芳生の知名度がアップするのではないでしょうか。
一人でも多くの方に観て頂きたい展覧会です。
ただ、数ある新聞の中に、のりピーの記事がありました。
あのニュースがようやく忘れられてきた頃なのに。
のりピーにとっては、あまり嬉しくない展覧会でしょう。
1位を目指して、ランキングに挑戦中。
下のボタンをポチッと押して頂けると嬉しいです!
“吉村芳生 超絶技巧を超えて” に行ってきました。
こちらは、山口県生まれの画家・吉村芳生 (1950~2013) の、
中国・四国地方以外の美術館では、初となる大々的な回顧展です。
フェルメール展に、ムンク展に、東山魁夷展に。
今年も沢山の素晴らしい展覧会を観てきましたが、
衝撃度という意味では、この展覧会が今年No.1だったかもしれません!
実をいうと、今も余韻 (衝撃?) を引きずっています。
久しぶりにガツンと胸を打たれた展覧会でした。
さてさて、一般的には、吉村芳生の名前はまだそこまで浸透していませんが。
アート界隈では、その名が知られた人物です。
彼の名が一躍広まったのは、2007年のこと。
森美術館で開催された“六本木クロッシング2007” に出展された作品群が大きな話題となります。
それをきっかけに、一気に注目を集め、アート界においてスターダムにのし上がります。
その時、なんと57歳。
遅咲きの画家として大ブレイクを果たすも、2013年に突然逝去してしまいました。
今回の展覧会では、そんな吉村芳生の全貌を明らかにすべく、
初期から絶筆まで、62件600点以上の作品を3章仕立てで紹介しています。
まずは、「ありふれた風景」 と題された章からスタート。
その名の通り、ありふれた風景を描いた作品が集められています。
ただ、モチーフは、ありふれた風景なのですが、そのスタイルは全くありふれていません。
例えば、こちらの 《河原 No.7》 という作品。
(注:館内の写真撮影は、特別に許可を頂いております)
一見すると、何の変哲もないモノクロの風景画ですが、
近づいて見てみると、無数のマス目で構成されているのがわかります。
元の写真を小さなマス目に分割し、10段階の階調を付け、それをひたすら紙に描き写していく。
実に途方もない作業で制作された作品です。
その数年後に描かれたのが、《ジーンズ》 という作品。
まずは、ジーンズを接写した写真を大きく引き伸ばし、鉄筆で2.5㎜四方のマス目を引きます。
そして、そのマス目1つ1つを紙に鉛筆で映していきます。
2.5㎜四方なので、もはや近づいてもマス目がわからないレベル。
ファミコンの画素から、スーファミの画素に進化したような感じでした。
作品とともに、製作途中のプロセスも展示されていましたが。
その気が遠くなるような作業を想像するだに、頭と目がクラクラしてしまいました。
それらの作品群も十分に衝撃的でしたが。
さらに衝撃だったのが、こちらの 《ドローイング 金網》 という作品。
モチーフは、ごくごく普通のありふれた金網。
それを、ただひたすら忠実にドローイングした作品です。
網目の数は、なんと約18000個!
完成までに70日費やされた超大作です。
ちなみに、長さはなんと約17m!
銀座の画廊での初個展のために制作された作品とのこと。
17mというのは、その画廊の壁の長さだったのだとか。
金網を描き続けたことも狂気ですが、
そもそも画廊の壁面を金網で埋め尽くしたいと発想したこと自体が狂気です (笑)
天才タイプの画家は、少なくない数存在していますが。
吉村芳生は、完全に努力タイプ。
それも超絶努力タイプです。
正直なところ、「ありふれた風景」 の章だけで、
お腹いっぱいになりましたが、展覧会はまだまだ続きます。
続いては、「百花繚乱」。
モノクロの世界から一転、一気にカラフルな世界が広がります。
油彩画なのかと思いきや、その正体は色鉛筆。
ファーバーカステルの120色の色鉛筆です。
作品はカラフルになりましたが、作風は相変わらず。
写真を撮り、マス目を1コマずつ塗り潰していく、やはり尋常でないスタイルで制作されています。
そのことがよくわかるのが、絶筆である 《コスモス》。
描かれていない部分には、下絵などは一切無し。
あるのはマス目だけでした。
未完成であることではじめて、マス目を1コマずつ塗り潰していたことが実感できる。
ある意味で、完成作のような気もしました。
展覧会のラストを飾るのは、「自画像の森」。
こちらでは代表作である 〈新聞と自画像〉 シリーズが紹介されています。
〈新聞と自画像〉 は、新聞の上に鉛筆で自画像を描いた作品シリーズです。
吉村芳生曰く、新聞は社会の肖像とのこと。
つまり自画像on自画像です。
ここまで数多くの超絶的な作品を観過ぎたせいで、
もはや驚けないことが、冷静に考えると驚きなのですが、新聞もすべて模写。
写真から文字まで、すべて描き写されています。
極めつけは、40mにわたって展示された 《新聞と自画像 2009年》 。
こちらは、先ほどの 〈新聞と自画像〉 とは違い、
実際の新聞紙の上に、自画像を描いたシリーズです。
“じゃあ、ちょっとは楽じゃん♪” と安心してはいけません (←?)。
2009年の1月1日から12月31日まで、新聞休刊日である1月2日を除き、
毎日休まず新聞を購入し、毎日休まずその日の新聞に自分の顔を載せたのだそうです。
毎日休まずブログを書いている自分が言うのもなんですが (笑)、
毎日休まず作品を制作し続けるなんて、頭がおかしいとしか思えません。
ちなみに。
新聞は一社に限らず、さまざまな新聞が使用されていました。
吉村芳生の展覧会は、どの新聞社も主催になる可能性があるのですね。
意外とこういうところは気を使っている吉村芳生です。
この展覧会を機に、一般的にも吉村芳生の知名度がアップするのではないでしょうか。
一人でも多くの方に観て頂きたい展覧会です。
ただ、数ある新聞の中に、のりピーの記事がありました。
あのニュースがようやく忘れられてきた頃なのに。
のりピーにとっては、あまり嬉しくない展覧会でしょう。
1位を目指して、ランキングに挑戦中。
下のボタンをポチッと押して頂けると嬉しいです!