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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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生誕135年 石井林響展−千葉に出づる風雲児−

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現在、千葉市美術館で開催されているのは、
“生誕135年 石井林響展−千葉に出づる風雲児−”
千葉を愛し、千葉に愛された日本画家・石井林響 (1884~1930) の大々的な回顧展です。


(注:館内の写真撮影は、特別に許可を頂いております)


今ではすっかり知る人ぞ知る存在となっている石井林響ですが。
「どこの展覧会でも光っていた」 という証言も残っているほどの実力者で、
当時は、「西に (橋本) 関雪あり、東に林響あり」 と称されていた人気画家だったようです。
もしも、45歳という若さでこの世を去っていなかったら・・・。
もしも、晩年近くに東京から千葉 (大網白里市) へと拠点を移していなかったら・・・。
きっと今よりもメジャーな存在だったことでしょう。

さてさて、実に28年ぶりとなる今回の回顧展には、
石井林響が日本画家を目指す前の学生時代の貴重な油彩画から、




事実上の絶筆というべき作品まで、




代表作を含む約140点 (途中、展示替えあり) が大集結しています。
巡回の予定はなく、千葉市美術館単独での開催。
もしこの機会を逃すと、二度と石井林響展はないかもしれません。
ぶっちゃけ、千葉県出身の僕ですが、この展覧会を通じて初めて、石井林響の存在を知りました。
千葉にこんなスゴい日本画家がいただなんて!
キムタクやマツコ・デラックス、YOSHIKIやTOSHIが、
実は千葉県出身と知って誇らしい気持ちになったのと同じくらいの感動を覚えました。
千葉県民必見の展覧会です。
(良かったら、東京都民、神奈川県民、埼玉県民の皆さまもお越しくださいませ)
星星


ではでは、石井林響の何がそんなにスゴいのか。
具体的にご紹介してまいりましょう。
何と言っても、そのスゴさが伝わるのが、こちらの 《童女の姿となりて》 という一枚です。




描かれているのは、ヤマトタケルがクマソタケル兄弟を討とうする場面。
彼らを油断させるために、ヤマトタケルは童女の姿に扮装しています。
この絵を描いた時、石井林響はまだわずか21歳。
恐ろしい新人が現れたものだと、美術界に激震が走ったのも納得です。

そんな 《童女の姿となりて》 を筆頭に、
若き日の林響 (当時の画号は、「天風」) は、歴史画や伝統的な画題を多く描いています。




ただし、作風は古典的なのに、顔立ちは個性的。
若くしてオリジナリティを発揮しているのが、なんとも印象的でした。




大正時代に突入し、名を 「林響」 に改めると、画風は一変。
どことなくセザンヌ風味もある色鮮やかな風景画や田園風俗画を描くようになります。


《総南の旅から》三部作 大正10年 山種美術館蔵 (注:展示期間は11/23~12/20)


そして、晩年になると、もはや抽象画のようなモノクロームの世界の南画を描くように。




一人の人間とは思えないくらいに画風がコロコロと変遷します。
そのローリングストーンな画家人生に感銘を受けずにはいられませんでした。

ちなみに、正統派 (?) な日本画だけでなく、
ゆるくのほほんとしたスタイルの日本画も得意としていた林響。




個人的には、月からウサギがピョ~ンと飛び出した 《兎月図》 がお気に入りです。




また、目利きとしても、画家仲間から一目を置かれていた林響。
今回の展覧会では、そんな林響自慢のコレクションの数々も紹介されていました。




その中で特に注目すべきは、清時代の画家・石濤の 《黄山八勝画冊》


(注:会期中展示場面のページ替えがあります)


こちらは、林響が大変な苦労して手に入れたという名品中の名品で、
のちに彼の手元を離れ、住友家へと移り (現・泉屋博古館蔵) 、現在では重要文化財に指定されています。
林響はプレイヤーとしても、コレクターとしても一流だったようです。


最後に、個人的にオススメの作品をご紹介いたしましょう。
まずは、《王者の瑞》




左隻に描かれているのは、麒麟ですが、
キリンビールのロゴ登場する麒麟とは、だいぶ異なった姿をしています。
林響は、この作品のために、実際のアフリカにいるほうのキリンの剥製を写生したとのこと。
見慣れぬ姿に右隻の男性は、きっと困惑しているのでしょう。
だいぶ距離を取っています。

続いては、《浦島太郎図》




浦島太郎というと、たいてい若者の姿で描かれますが。
この絵に描かれている浦島太郎は、もうこの時点で、だいぶオッサンです。
手元の玉手箱から、少しずつ煙が漏れ出ているのかもしれません。
徐々に老けていくパターン!


最後に紹介したいのは、《やまびこ(小下図)》




その表情は、完全にムンクのあれ。
和製 “ムンクの 《叫び》” です。
それにしても、ガリガリ。




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