Quantcast
Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
Viewing all articles
Browse latest Browse all 5005

見る、知る、感じる──現代の書

$
0
0
現在、東京都美術館の企画展示室では、“ムンク展-共鳴する魂の叫び” が絶賛発売中ですが。
すぐその近くにあるギャラリーA・Cでは、
“見る、知る、感じる──現代の書” という展覧会が開催されています。




年間に多くの公募展が開催されることから、
「公募展のふるさと」 と称されている東京都美術館。
そんな東京都美術館が満を持して昨年からスタートさせたのが、
公募団体で活躍している作家を紹介する展覧会シリーズ “上野アーティストプロジェクト” です。
今回の展覧会は、その第2弾として開催されるもので、『書の鑑賞』 をテーマとしています。

ちなみに、観覧料は、一般でもワンコインの500円。
“ムンク展” のチケット (半券可) があれば、なんと入場無料。
「太っ腹ー!!」 と叫びたくなる展覧会です。


さてさて、書の展覧会というと、

“小難しそう・・・” “堅苦しそう・・・” “面白くなさそう・・・”

と、ネガティブな印象を抱きがちですが。
今展に関しては、そんな心配はご無用です。
単純に目で見て、「おっ!」 とか 「わー!」 とか感じられる作品が多く紹介されています。
書に対して食わず嫌いをしてた人にこそ、オススメの展覧会です。
星


会場に入って、まず確実に度肝を抜かれるであろう作品は、こちら↓




書家・金敷駸房さんによる 《槐多の瀧》 です。
こちらは、22歳でこの世を去った夭折の天才画家・村山槐多の著書、




『槐多の歌へる』 の全文を、約1年かけて揮毫したという超大作です。
驚くべきは、その総長。




なんと約5000mもあるそうです!
東京都美術館から東京駅までが、約4.7㎞。
その距離よりも、作品のほうが長いわけです。
まず間違いなく、日本美術史上、最長の作品といえるのではないでしょうか。




段々となった展示スタイルは、
『オールスター感謝祭』 のセットを、なんとなく彷彿とさせるものがあります。
《槐多の瀧》 と向き合ったとき、島崎和歌子の気分をなんとなく味わえました。


続いて紹介されていたのは、秋山和也さん。
古典の臨書を日課としていらっしゃるそうで、
その文字からは、ひしひしと緊張感が伝わってきました。




ちょっとした風でも、フッと飛んでしまいそうなほどの繊細さ。
思わず息を止めて、見入ってしまいます。




また、文字の散らし方が独特ゆえ、
余白部分も楽しめる書という印象を受けました。
抽象画を見るような感覚に近かったです。


そんな繊細な秋山さんに対して、
古代文字の造形感覚に定評のある大橋洋之さんの作品は、エネルギーに満ち満ちていました。




一文字一文字から受けるインパクトが絶大。
骨太でロック、そして、どこかユーモアも感じられるその文字は、




どことなく、『今日から俺は!!』 のロゴを連想させるものがありました。




個人的に一番印象に残ったのは、菊山武士さんの書の世界観です。




↑こちらは、《どしゃぶりのあめ》 という作品。
近づいて見ると、「どしゃぶりのあめ」 という文字が、
まさに、どしゃぶりの雨のごとく、バシャバシャと書かれていました。




菊山さんは 「雨」 をよく書いているそうで、
壁一面に貼られた作品でも、「あめ」 をリフレイン。
こんなにも 「あめ」 を繰り返しているのは、菊山さんか八代亜紀くらいなものでしょう。




もちろん、「あめ」 以外の作品も。
《冬》《隣》 のように一字を書いた作品が紹介されています。





字そのもののオリジナリティもさることながら、
掛け軸の表装がモダンでスタイリッシュで、オリジナリティに溢れていました。
トータルで見て楽しむ作品です。


スタイリッシュでオリジナリティ溢れるといえば、鈴木響泉さんの書も。




漢字というよりも、もはやシナプスのよう。




しばらく見ていたら、新たな回路が形成されるのではなかろうか、
さらなるフェーズに進化していくのではなかろうか、そんな流動的な動きが感じられました。
平面の作品なのに、立体的にも感じられる。
新感覚の書でした。


最後に紹介したいのは、石巻市出身・在住の千葉蒼玄さんの 《3.11 鎮魂と復活》 という作品。




東日本大震災をテーマにした大作で、3.11後の新聞記事がみっちりと書き写されています。




「書=古典的なジャンル」 という印象がどうにも強く、
これまで、「書家=古風な芸術家」 と捉えがちだったのですが。
千葉さんの 《3.11 鎮魂と復活》 を見て、改めて、書家も現代アーティストであることを実感しました。

ちなみに、こちらの 《鎮魂と復活 オーロラ(昇魂)》 も千葉さんの作品です。




あくまで僕個人の印象ですが、
どことなく山本寛斎感、どことなくBOØWY感。
アバンギャルドです。




1位を目指して、ランキングに挑戦中。
下のボタンをポチッと押して頂けると嬉しいです!

Blogランキングへ  にほんブログ村 美術ブログへ

Viewing all articles
Browse latest Browse all 5005

Trending Articles