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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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終わりのむこうへ:廃墟の美術史

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現在、渋谷区立松濤美術館で開催されているのは、
“終わりのむこうへ:廃墟の美術史” という展覧会です。


(注:館内の写真撮影は、特別に許可を頂いております)


廃墟が描かれた絵画に、廃墟をモチーフとした絵画など、
日本国内の美術館から廃墟をテーマにした作品約72点が大集結!
まさに、壊れそうなものが描かれた作品ばかり集めてしまった展覧会です。


展覧会の冒頭を飾るのは、廃墟を好んで描いていたという、
17世紀オランダの画家シャルル・コルネリス・ド・ホーホ。




廃墟もガッツリ描かれていますし、
廃墟に集う人々もガッツリ描かれています。
少なくとも、約400年前には、すでに廃墟マニアが存在していたようです。


廃墟を描く画家と聞いて、パッと思い浮かぶのが、
「廃墟のロベール」 の異名を持つ18世紀フランスの画家ユベール・ロベール。
廃墟を愛し、廃墟マニアに愛された彼の作品は、
ただ廃墟を映し描くのではなく、空想を交えて描かれているのが特徴です。
今展に出展されていた 《ローマのパンテオンのある建築的奇想画》 も、やはりそんな作品でした。


ユベール・ロベール 《ローマのパンテオンのある建築的奇想画》 1763 年 ペン・水彩、紙 ヤマザキマザック美術館


まるで開閉式スタジアムかのように、天井に巨大な穴が開いてしまっています。
こんなにも致命的に朽ちてしまっているのに、
どうしてまだ自立していられるのであろうか、と思わずドキドキハラハラ。
そんな想いで眺めているうちに、徐々にこの絵に惹かれている自分がいました。
きっと吊り橋効果。

ユベール・ロベール以上に、ファンタジーを織り交ぜていたのが、
18世紀イタリアで活躍した版画家ジョヴァンニ・バッティスタ・ピラネージです。


ジョヴァンニ・バッティスタ・ピラネージ 《『ローマの古代遺跡』(第2巻II)より:古代アッピア街道とアルデアティーナ街道の交差点》
1756年刊 町田市立国際版画美術館



こちらは、ローマの古代遺跡を描いた作品だそうですが、
実際の遺跡にはない遺物まで、これでもかというくらいに盛りに盛って描いています。
もはやドン・キホーテやヴィレッジヴァンガードの店内のような有様。
他の廃墟画と違って、寂寥感は全くありませんでした (笑)


・・・と、このように。
一口に廃墟をテーマにした作品と言っても、バリエーションはさまざまです。
他にも、廃墟を重要なモチーフとして捉えていたシュルレアリストたちの作品や、




西洋に倣って、廃墟という画題に挑んだ浮世絵師や日本画家の作品、
(昨年東京ステーションギャラリーで大々的な個展が開催され話題となった不染鉄の作品もありますよ!)




意外なところでは、アンリ・ルソーが廃墟を描いた絵も紹介されていました。




個人的にテンションがあがったのは、
実在しない建造物を描く画家・野又穫さんの最新作が展示されていたこと。
この展覧会にあわせて、「終わりのむこうへ」 というテーマで制作されたものです。
野又さんが思い描いた “「終わりのむこうへ」 の光景” とは?!
ぜひ、会場でご覧くださいませ。
ちなみに、野又さんの近作 《交差点で待つ間に》 も出展されていました。


野又穫 《交差点で待つ間に》  2013年 アクリル、カンヴァス  撮影:木奥恵三 (c)Minoru Nomata 


こちらは、渋谷駅近くの交差点をモチーフにした作品で、
なおかつ、先ほど紹介したピラネージの版画作品をオマージュした作品とのこと。
この展覧会で紹介されるべくして紹介された作品です。


渋谷がモチーフと言えば、世界各国のランドマークを廃墟化させる作風で、
近年大きな注目を集めている版画家・元田久治さんの作品も出展されていました。




容赦ないほどに、渋谷が廃墟と化しています。
一体、渋谷に何があったのでしょうか。
大地震が発生したのか、大規模なテロが起こったのか、
はたまた、ハロウィーンが盛り上がり過ぎてしまったのか。
あまりにリアルな光景なので、本当に不安になってしまいました。
さてさて、展覧会の鑑賞後、渋谷区立松濤美術館から渋谷駅へ。
渋谷駅近辺には平和な光景が広がっており、思わず胸を撫でおろしました。
何でもないようなことが幸せだと思える展覧会です。
星星




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