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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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眠らない手:エルメスのアーティスト・レジデンシー展Vol. 2

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エルメス財団によって招聘されたアーティストたちが、
エルメスのさまざまな工房 (クリスタル、革、シルク等) に滞在し、
その工房の卓越した技術を持つ職人とともに、制作活動に取り組むというユニークなプログラム。
それが、アーティスト・レジデンシー。

そんなアーティスト・レジデンシーの成果を発表する展覧会、
“眠らない手:エルメスのアーティスト・レジデンシー展” が、銀座メゾンエルメスで開催中です。
先日は、そのVol. 1の模様を紹介しましたが、
本日は、後期に当たるVol. 2の模様を紹介したいと思います。


まず展示されていたのは、ズラリと並んだたくさんの靴。




こちらは、ギリシャ生まれのアーティスト、
アナスタシア・デュカによる 《タイツ 捨てられないものたち》 という作品です。
彼女が滞在したのは、もちろん靴の工房。
そこで働く職人105名一人一人にヒアリングをし、
それぞれの職人の嗜好に合わせて、“機能しない靴” を制作したのだとか。




せっかくならば、“機能する靴” を制作すればいいのに。
・・・・・と思いましたが、それだとただのエルメスの靴になってしまうので、
やはり “機能しない靴” を制作することが、アートとしては正解なのでしょうね。
履けない革靴は、ただの革袋です。


続いて紹介されていたのは、革製の謎のオブジェたち。





こちらは、フランスのアーティスト、
イオ・ブルガールによる 《波に身をまかせ》 という作品です。
このオブジェは何を表しているのか?
その具体的な説明はありませんでした。
とりあえず、横たわっている茶色いヤツと自立している白いヤツ、
その2つをパカッとあわせれば、中にすべてのオブジェが収納できてしまうのだそうです。
しかも、白いヤツには樹脂が使われているので、水に浮かべることも可能。
ボートのように、まさに “波に身をまかせ” られる作品なのです。
ただ、出来れば、海には流して欲しくないかなぁ。
もし、拾ったとしても、使い道がわからず困惑することは必至です。


革と言えば、ルーシー・ピカンデが、
エルメス・アトリエで制作した 《私の身体のように大切なもの》 も印象的でした。




一見すると、アクリル絵画のようですが、
よく見ればキャンバスではなく、革であることがわかります。




しかも、もっともっとよく見れば、
革の上に絵が描かれているのではなく、色のついた革を組み合わせていることがわかります。
そう、こちらは、なんと革のピースを組み合わせることで制作された作品。
5㎜ほどの小さなパーツから、1m超えの大きなパーツまで、
実に200あまりのパーツが組み合わされているのだそうです。
ちなみに、描かれているのは、クロコダイルと女神。
自分の尾を噛んで、環となったヘビを図案化した 「ウロボロス」 に着想を得ているのだとか。


ホールディング・テキスタイル・エルメスに滞在した、
ベルギーのビアンカ・アルギモンが制作したのは、21世紀版エデンの園。




彼女が描いたこのダークな世界が、
エルメスの職人たちによって、伝統的なシルクモスリンの技術で再現されています。




悪の世界なのに、繊細。
思わず、ふんわりと誘い込まれそうになってしまいました。
危ない危ない。

ちなみに、会場には、アルギモンの他の作品も。




よくある普通のテーブルサッカーかと思いきや・・・




選手が全員怪我しています。
どうやら試合は出来そうにありません。
作品のタイトルは、《マテラッツィ》
2006年のワールドカップで、ジダンに頭突きを喰らったことでお馴染みのサッカー選手です。
ということは、これは演技の可能性も。
思わずニヤリとさせられる作品でした。
星


最後に、今回もっともインパクトの強かった作品をご紹介。
アルギモンと同じくホールディング・テキスタイル・エルメスに滞在した、
パフォーマンスアーティスト、ジェニファー・ヴィネガー・エイヴリーによる作品です。




その名も、《さなぎ、ゴミ箱、野獣》
悪夢のような、ゴミ屋敷のようなこの作品は、
童話 『赤ずきん』 を独自に解釈して制作されたものとのこと。
どの辺が赤ずきんちゃん?どの辺がおばあちゃん?どの辺がオオカミ?
何一つ予想がつきません。。。

もしかしたら、これが赤ずきんなのかも。




もしかしたら、これがオオカミなのかも。




確実に言えるのは、このカオスな空間に長くいればいるほど、精神が溶けてしまうということ。
そういう意味では、オオカミのお腹の中にいる感覚に近いのかもしれません。
ちなみに、会期中、月曜日以外は、エイヴリーとその夫が、
この空間で、『赤ずきん』 をモチーフにしたパフォーマンスを開催するそうです。
正直なところ、怖いもの見たさはあります。

なお、《さなぎ、ゴミ箱、野獣》 もだいぶパンチが効いていましたが。
その外で展示されていた 《人形たち》 も、かなりパンチが効いていました。




100%呪いの人形です。
たぶん会期中、髪が伸びているはず。




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