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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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特別展「顔真卿 王羲之を超えた名筆」

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王羲之の名品が大集結し、書道関係者及び書道ファンを震わせた展覧会 “書聖 王羲之” から6年―。
再び、書道クラスタが激震する展覧会が、東京国立博物館が開催されています。
その名も、“特別展「顔真卿 王羲之を超えた名筆」”


(注:館内の写真撮影は、特別に許可を頂いております)


唐時代の官僚にして書家。
その書が後世に大きな影響を与えた書道界のスーパースター、顔真卿の大規模な展覧会です。
その名品が国内外より大集結しています。
書に興味がない人にとっては、
「顔真卿?誰それ?そもそも何て読むの?」 という感じでしょうが。
(ちなみに、“がんしんけい” と読みます)
もし、その名は知らずとも、
彼の書がもとになったと言われるあるものは、ほぼ毎日のように目にしているはずです。
それは、明朝体。


千福寺多宝塔碑 顔真卿筆 唐時代・天宝11年(752) 東京国立博物館蔵


確かに、そう言われてみると、明朝体に見えてきませんか?
黒地に白の拓本をじーっと見つめていると、
思わずエヴァンゲリオンを連想してしまうことでしょう。


さてさて、会場では、そんな顔真卿の名筆の数々が、
若き日の書から晩年の書まで、基本的に時系列に沿って紹介されています。




そのどれもが貴重で見逃せない作品なのですが、
今回、特に見逃せないのが、奇跡の初来日を果たした 《祭姪文稿》 です。




《祭姪文稿》 は、顔真卿の代表作中の代表作で、
台北の國立故宮博物院のコレクションの中でも、とりわけ人気の高い名品です。
ただし、保存などの観点から、5年に1度くらいしか展示されることはなく、
國立故宮博物院を訪れたからといって、必ずしも目にできるわけではありません。
それだけに、《祭姪文稿》 が公開されていることを知り、
それを観るためだけに中国から、わざわざ日本にやってきた人も少なくないとのこと。
実は、フェルメールやクリムト、
カラヴァッジョの作品が来日するよりも、スゴいことが今上野で起きているのです。
星星


それほどまでに激レアな 《祭姪文稿》
さぞかし、美しい書なのかと思いきや・・・


祭姪文稿 顔真卿筆 唐時代・乾元元年(758) 台北 國立故宮博物院蔵


えっ?あれ??
う~ん。お世辞にも、美しい文字には見えません。
しかも、書き間違えたのか、グリグリ塗りつぶしている部分も多くあります。
一体この書の何がそこまで多くの人を惹きつけるのでしょうか?

《祭姪文稿》 (さいてつぶんこう) とは、
安史の乱で亡くなった甥の末子である顔季明を追悼するために顔真卿が書いた弔文の原稿です。
(中国では、甥のことを 『姪』 と表記するのだとか)
原稿なので、塗りつぶしや訂正した跡が多く残っているのですね。
書き出しは、字の乱れが少なく、気持ちを押えて筆を走らせていたのでしょうが、
書き進めるにつれ、次第に字形は崩れ、行はゆがみ、書き間違えや塗りつぶしが増えていきます。
特に中盤辺りの顔季明が殺害された内容を書き記す部分で、もっとも感情が爆発。
顔真卿の怒りと哀しみが最大限に伝わってきます。
同じ感情を爆発させるでも、どこぞの元市議の記者会見とは大違い。
《祭姪文稿》 から発せられる顔真卿の感情の爆発は、大きく心を打つものがありました。

書と構えてしまうと、ハードルが高いかもしれませんが。
感情をぶつけて描いた抽象画と捉えると、書に興味がなかった人でも楽しめるかもしれません。


ちなみに。
展覧会では、顔真卿の作品以外にも、書家のレジェンド・王羲之の作品の模本や、




顔真卿の前に活躍した初唐の三大家 (虞世南、欧陽詢、褚遂良) の作品をはじめ、
顔真卿に影響を受けた中国の書家、さらには、影響を受けた日本の書家の作品も紹介されています。


国宝 金剛般若経開題残巻(部分) 空海筆 平安時代・9 世紀 京都国立博物館蔵


それらの中には、こちらも日本初公開となる名品 《自叙帖》 も。


自叙帖(部分) 懐素筆 唐時代・大暦12年(777) 台北 國立故宮博物院蔵


こちらは、唐時代の書家・懐素の最高傑作で、
自分自身の経歴が画面いっぱいに書かれています。
いわば、自己PR文です。
これでもかといわんばかりの、のびやかな筆運び。
眺めていると、なんか気持ちよくなってきました。


さすがに、《祭姪文稿》《自叙帖》 では参考にならないでしょうが。
展覧会には、美しい文字、いわゆる美文字の書の数々も出展されています。




見るだけで、美文字になれる・・・・・かもしれません。
ミになる展覧会です。




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