昨日に引き続き、本日も佐川美術館の話題を。
(注:まとめて1本の記事にする予定でしたが、内容があまりにも濃かったので、2本に分けました)
昨日お伝えたとおり、佐川美術館の本館には、佐藤忠良館と平山郁夫館があります。
お二方とも佐川美術館開館当時はご存命、
つまり、当時の彫刻界のトップと日本画界のトップと、
美術界のツートップのコレクションが観られる美術館というわけです。
そんな佐川美術館が開館から数年後、
佐川急便50周年記念事業の一環として、新たに別館が開設されることが決まりました。
白羽の矢が立てられたのは、現代工芸界のトップで陶芸家の十五代 樂吉左衞門氏。
樂茶碗の創始者・長次郎から約450年にわたって、
一子相伝で継承され続けてきた樂家、その現代の当主です。
佐川美術館の別館で、自分の作品が常に展示される。
その申し出に対し、樂吉左衞門氏が出した条件が一つありました。
それは、別館の建物や付属する茶室を、自らが設計創案・監修すること。
構想3年。施工2年。
満を持して2007年にオープンしたのが、こちらの樂吉左衞門館です。
まるで、水盤に茶室がぽっかりと浮いているよう。
入り口は反対側でしょうか?
あっ、どうやらこちらからは、中に入れないようですね。
樂吉左衞門館に行くには、本館を通って行かねばならないようです。
・・・・・・・と言って、本館に来てはみたものの。
あれっ?ちょっと待ってください。。。
明らかに本館と別館が繋がっていません (汗)
「まさか、あの水盤の下を潜り抜けていくってわけじゃないよね。アハハ・・・」
その "まさか" でした。
地下へと続く階段を降りていくと、
そこには巨大な展示空間が広がっていたのです。
あの水盤の地下に、こんな秘密基地のような建物が埋まっていただなんて。
完全に、サンダーバードの世界です。
(注:館内の写真撮影は、特別に許可を得ております)
ちなみに、この空間の天井の一部には、ガラスが嵌められており、
水面を通して日光が差し込み、壁一面を照らす仕掛けになっているのだそう。
僕が訪れた日は、あいにくの雨でしたが、
もし晴れていれば、水面の揺らめきが、まるでスクリーンのように壁一面に投影されるのだとか。
さぞかし幻想的な光景なのでしょうねぇ (次は絶対晴れてるときに来よう!)。
ではでは、地上から見えていた茶室へと向かいましょう。
もちろん地下、水中の下を通って移動します。
まず通されたのは、待合い場所である寄付です。
水面下にある上に、外壁はコンクリート打ちっぱなし。
普通に考えたら、圧迫感がありそうなものですが。
まったく、そんな印象はなし。
むしろ温もりを感じる空間でした。
おそらく、その居心地の良さの一端を担っているのが、床の木材。
不思議な温かみのある木材です。
その正体は、実際に使用されていたオーストラリアの鉄道の枕木。
長年、風雪と列車の重みに耐えたことで、独特の風格や味わいが産まれているのでしょう。
続いて案内頂いたのは、腰掛待合。
茶席の前に、亭主の迎え付けを待つ場所です。
そこに腰掛けると、目の前にとんでもない光景が飛び込んできました!
巨大な円筒状のスペース。
まるで水盤の一部が、すぽっと円筒状に抜き取られてしまったようです。
「まさか、本当に円筒状に抜き取ったわけじゃないよね。アハハ・・・」
その "まさか" でした (本日2回目)。
先ほどの写真でチラッと見えていた、
あの部分がごそっと空洞となっているのです。
そして、いよいよメインである茶室の小間 「盤陀庵(ばんだあん)」 と、
薄茶がいただける大広間 「俯仰軒(ふぎょうけん)」 を案内してもらいました。
どちらの空間も、茶室としての伝統的な佇まいと、
現代のマテリアル (アクリルやガラスなど) とが、見事に融合しています。
ただ、それらの樂吉左衞門氏の創意工夫やこだわりすべてを、
ひとつひとつご紹介していたら、紙面がいくらあっても足りません。
ということで、しぶしぶ割愛。
これはもう実際に訪れて、体感して頂くということで。
茶室見学は別料金がかかりますが、絶対に訪れるべし。
行かねば後悔するレベルです。
茶室とは渋くて地味な空間、と思っていましたが、
主人が創意工夫を凝らして、客人へのサプライズを提供する空間だったのですね!
最大限に ‟樂” しませて頂きました。
ちなみに、樂吉左衞門館の展示室では、
現在、”吉左衞門X WOLS” という展覧会が開催中です。
"吉左衞門X" とは、樂氏が関わる何らかの事象Xと、
樂吉左衞門作品との関係式を解き明かす展覧会シリーズとのこと。
その第9弾となる今回は、ドイツ生まれで、
主にフランスで活動した孤高の画家ヴォルス (1913~1951) とのコラボ展です。
会場では、ヴォルスの油彩画や水彩画、銅版画と、
新作を含む樂吉左衞門による茶碗21点とが併せて展示されていました。
樂吉左衞門作品とヴォルス。
まったく想像だにしない組み合わせでしたが・・・
意外なほどにマッチしていました。
それもそのはず。
ヴォルスの作品、人生観に深く共鳴しているという吉左衞門氏。
会場内のヴォルスの版画作品は、なんと吉左衞門氏ご本人が所蔵しているものなのだそうです。
また、今回出展されている新作の 《白土焼貫茶碗》 や、
《焼貫黒樂茶碗》 には、
ヴォルスのイメージが投影されているのだとか。
確かに、そう言われてみれば、ヴォルスの作品と通じるところがあります。
ヴォルスの作品と向き合った時に生じる細胞がザワザワゾワゾワしてくるような感覚。
初めて出会うはずなのにデジャブを感じ、心の奥底が引っ掛かられるような感覚。
それらの感覚に近いものを、樂吉左衞門作品でも覚えました。
あと、個人的に、ヴォルスの作品からは、どこか "破れかぶれ" な印象を受けるのですが。
こちらの 《白土焼貫茶碗》 にいたっては、
一部に穴が開いていました。茶碗なのに。
まさに、"破れかぶれ"。
実にヴォルス的な作品でした。
樂吉左衞門館の建物自体がチャレンジングなものでしたが。
ヴォルスに着想を得た樂吉左衞門氏の新作も、チャレンジング。
そして、何より出会うはずの無かった2人 (?) を競演させた展覧会も、チャレンジングでした。
これほど刺激的な体験が出来るとは。
滋賀県まで足を運んだ甲斐がありました。
(注:本館と別館それぞれの展覧会を2ツ星としましたが、佐川美術館全体とすれば3ツ星です!)
結局、最後まで空は晴れなかったですが、心は晴れ渡りました。
1位を目指して、ランキングに挑戦中。
下のボタンをポチッと押して頂けると嬉しいです!
(注:まとめて1本の記事にする予定でしたが、内容があまりにも濃かったので、2本に分けました)
昨日お伝えたとおり、佐川美術館の本館には、佐藤忠良館と平山郁夫館があります。
お二方とも佐川美術館開館当時はご存命、
つまり、当時の彫刻界のトップと日本画界のトップと、
美術界のツートップのコレクションが観られる美術館というわけです。
そんな佐川美術館が開館から数年後、
佐川急便50周年記念事業の一環として、新たに別館が開設されることが決まりました。
白羽の矢が立てられたのは、現代工芸界のトップで陶芸家の十五代 樂吉左衞門氏。
樂茶碗の創始者・長次郎から約450年にわたって、
一子相伝で継承され続けてきた樂家、その現代の当主です。
佐川美術館の別館で、自分の作品が常に展示される。
その申し出に対し、樂吉左衞門氏が出した条件が一つありました。
それは、別館の建物や付属する茶室を、自らが設計創案・監修すること。
構想3年。施工2年。
満を持して2007年にオープンしたのが、こちらの樂吉左衞門館です。
まるで、水盤に茶室がぽっかりと浮いているよう。
入り口は反対側でしょうか?
あっ、どうやらこちらからは、中に入れないようですね。
樂吉左衞門館に行くには、本館を通って行かねばならないようです。
・・・・・・・と言って、本館に来てはみたものの。
あれっ?ちょっと待ってください。。。
明らかに本館と別館が繋がっていません (汗)
「まさか、あの水盤の下を潜り抜けていくってわけじゃないよね。アハハ・・・」
その "まさか" でした。
地下へと続く階段を降りていくと、
そこには巨大な展示空間が広がっていたのです。
あの水盤の地下に、こんな秘密基地のような建物が埋まっていただなんて。
完全に、サンダーバードの世界です。
(注:館内の写真撮影は、特別に許可を得ております)
ちなみに、この空間の天井の一部には、ガラスが嵌められており、
水面を通して日光が差し込み、壁一面を照らす仕掛けになっているのだそう。
僕が訪れた日は、あいにくの雨でしたが、
もし晴れていれば、水面の揺らめきが、まるでスクリーンのように壁一面に投影されるのだとか。
さぞかし幻想的な光景なのでしょうねぇ (次は絶対晴れてるときに来よう!)。
ではでは、地上から見えていた茶室へと向かいましょう。
もちろん地下、水中の下を通って移動します。
まず通されたのは、待合い場所である寄付です。
水面下にある上に、外壁はコンクリート打ちっぱなし。
普通に考えたら、圧迫感がありそうなものですが。
まったく、そんな印象はなし。
むしろ温もりを感じる空間でした。
おそらく、その居心地の良さの一端を担っているのが、床の木材。
不思議な温かみのある木材です。
その正体は、実際に使用されていたオーストラリアの鉄道の枕木。
長年、風雪と列車の重みに耐えたことで、独特の風格や味わいが産まれているのでしょう。
続いて案内頂いたのは、腰掛待合。
茶席の前に、亭主の迎え付けを待つ場所です。
そこに腰掛けると、目の前にとんでもない光景が飛び込んできました!
巨大な円筒状のスペース。
まるで水盤の一部が、すぽっと円筒状に抜き取られてしまったようです。
「まさか、本当に円筒状に抜き取ったわけじゃないよね。アハハ・・・」
その "まさか" でした (本日2回目)。
先ほどの写真でチラッと見えていた、
あの部分がごそっと空洞となっているのです。
そして、いよいよメインである茶室の小間 「盤陀庵(ばんだあん)」 と、
薄茶がいただける大広間 「俯仰軒(ふぎょうけん)」 を案内してもらいました。
どちらの空間も、茶室としての伝統的な佇まいと、
現代のマテリアル (アクリルやガラスなど) とが、見事に融合しています。
ただ、それらの樂吉左衞門氏の創意工夫やこだわりすべてを、
ひとつひとつご紹介していたら、紙面がいくらあっても足りません。
ということで、しぶしぶ割愛。
これはもう実際に訪れて、体感して頂くということで。
茶室見学は別料金がかかりますが、絶対に訪れるべし。
行かねば後悔するレベルです。
茶室とは渋くて地味な空間、と思っていましたが、
主人が創意工夫を凝らして、客人へのサプライズを提供する空間だったのですね!
最大限に ‟樂” しませて頂きました。
ちなみに、樂吉左衞門館の展示室では、
現在、”吉左衞門X WOLS” という展覧会が開催中です。
"吉左衞門X" とは、樂氏が関わる何らかの事象Xと、
樂吉左衞門作品との関係式を解き明かす展覧会シリーズとのこと。
その第9弾となる今回は、ドイツ生まれで、
主にフランスで活動した孤高の画家ヴォルス (1913~1951) とのコラボ展です。
会場では、ヴォルスの油彩画や水彩画、銅版画と、
新作を含む樂吉左衞門による茶碗21点とが併せて展示されていました。
樂吉左衞門作品とヴォルス。
まったく想像だにしない組み合わせでしたが・・・
意外なほどにマッチしていました。
それもそのはず。
ヴォルスの作品、人生観に深く共鳴しているという吉左衞門氏。
会場内のヴォルスの版画作品は、なんと吉左衞門氏ご本人が所蔵しているものなのだそうです。
また、今回出展されている新作の 《白土焼貫茶碗》 や、
《焼貫黒樂茶碗》 には、
ヴォルスのイメージが投影されているのだとか。
確かに、そう言われてみれば、ヴォルスの作品と通じるところがあります。
ヴォルスの作品と向き合った時に生じる細胞がザワザワゾワゾワしてくるような感覚。
初めて出会うはずなのにデジャブを感じ、心の奥底が引っ掛かられるような感覚。
それらの感覚に近いものを、樂吉左衞門作品でも覚えました。
あと、個人的に、ヴォルスの作品からは、どこか "破れかぶれ" な印象を受けるのですが。
こちらの 《白土焼貫茶碗》 にいたっては、
一部に穴が開いていました。茶碗なのに。
まさに、"破れかぶれ"。
実にヴォルス的な作品でした。
樂吉左衞門館の建物自体がチャレンジングなものでしたが。
ヴォルスに着想を得た樂吉左衞門氏の新作も、チャレンジング。
そして、何より出会うはずの無かった2人 (?) を競演させた展覧会も、チャレンジングでした。
これほど刺激的な体験が出来るとは。
滋賀県まで足を運んだ甲斐がありました。
(注:本館と別館それぞれの展覧会を2ツ星としましたが、佐川美術館全体とすれば3ツ星です!)
結局、最後まで空は晴れなかったですが、心は晴れ渡りました。
1位を目指して、ランキングに挑戦中。
下のボタンをポチッと押して頂けると嬉しいです!