美術界の春の風物詩。
今年も、“VOCA展” が、上野の森美術館で開催されています。
VOCA展 (ヴォーカ展) とは・・・
全国の美術館学芸員、ジャーナリスト、研究者などに40才以下の若手作家の推薦を依頼し、
その作家が平面作品の新作を出品するという方式で、全国各地の未知の優れた才能を紹介する美術展
のこと。
250cm×400cm以内の壁面に展示できるサイズの平面作品であれば、OK。
絵画作品や版画作品に限らず、写真作品もOKです。
VOCA展が始まった頃は、まだモニターがブラウン管でしたが、今やモニターは薄型の時代。
“厚さ20㎝以内であれば平面とみなす” というルールなので、映像作品も余裕でOKです。
なお、厚さ20㎝に満たない薄型の立体作品も、ルール上はOK。
もはや、ほとんど何でもあり状態です (笑)
過去には、村上隆さん、奈良美智さん、蜷川実花さん、
そして、今何かと話題になっているら会田誠さんもVOCA展に出展。
いうなれば、若手アーティストの登竜門的な展覧会なのです。
さてさて、平成最後となる記念すべき今回のVOCA賞に輝いたのは・・・
東城信之介さんの 《アテネ・長野・東京ノ壁ニアルデアロウ摸写》 という作品。
こちらは、キャンバスではなく、金属板の上に、
落書きのようなものが描かれたり、転写されたりしています。
さらに、金属を磨いたり、傷つけたり、
錆びさせたりすることで、複雑な表情を生み出しています。
モチーフとなっているのは、オリンピック。
東城さんがアテネを訪れた際に、荒廃した会場を目にして、
自身の故郷である長野県に同様の荒廃があることを思い出したのだそうな。
そして、いよいよ来年2020年、東京でオリンピックが開催されます。
その会場跡地に近い未来、こんな落書きが ‟アルデアロウ” ことに警鐘を鳴らす作品です。
VOCA奨励賞は在日コリアンのチョン・ユギョンさんの作品、
《Let’s all go to the celebration square of victory!》 が受賞。
パッと見は、サイケでポップ。
どこかのファッションブランドのDMのデザインのようですが。
実は、こちらは北朝鮮のプロパガンダポスターをモチーフとしたもの。
そのイメージが、それと分からなくなるくらいまでに解体された作品です。
もう一人のVOCA奨励賞の受賞者は、石場文子さん。
亡くなった祖母をテーマにしたという 《2と3、もしくはそれ以外(祖母の家)》 が受賞しています。
一番左の作品で、輪郭線で表されているのが、おそらく作者の祖母なのでしょう。
亡霊のようで、ちょっと背筋がゾワっとしました。
(しかも、よりによって、なぜこのようなポーズ?)
残り3点は、祖母の家を映した写真とのこと。
一見すると、特に何の変哲もない写真ですが、近づいてみると・・・・・
あるはずのない輪郭線がくっきりと描き込まれているのに気が付きます。
輪郭線があるだけで、3次元の世界が2次元に感じられる不思議さ。
人間の脳や視覚は、どのように2次元と3次元の違いを捉えているのか。
改めて考えさせられる作品でした。
さてさて、ここ近年、その傾向が高まっているような気がしていましたが。
やはり、今年も社会問題をモチーフにした作品、
複雑な構造の作品が高い評価を受けているような印象を受けました。
当初は、純粋に平面作品の魅力を競う展覧会だったはずなのに、
今や、VOCA展にとっての 『平面』 は、あくまでフォーマットにしか過ぎず。
美術業界内でウケる玄人受けの複雑な作品が選ばれている感は否めません。
正統派の漫才では優勝できない。最近のM-1グランプリのようです。
もっと単純に一般の人が観ても、
「スゴい!」 「面白い!」 「なんだこれは!」 と思える作品が選ばれてもいいような。
新たな元号に代わるこのタイミングで、一旦その辺りのをフラットにしてみてはいかがでしょう。
平面だけに。
ちなみに、以前から注目しているアートユニット・目も、今回のVOCA展に参戦。
インスタレーション作品を手掛ける彼女らが、
一体どんな平面作品を作るのか、興味津々でした。
こちらが、その平面の新作 《アクリルガス》 です。
ガスで生成される惑星に着想を得た作品。
アクリル絵の具や樹脂が溶けあい、まさに惑星のような姿を見せています。
映像作品ではないのですが、まるで常に動いているかのよう。
実体があるようでない、なんとも不思議な作品でした。
惜しむらくは・・・
250cm×400cm以内、厚さ20㎝以内という規定があったこと。
もっとサイズが大きいか、形状が半球形なら、
惑星のイメージに、より近かったことでしょう。
とは言え、この作品で、目は佳作賞を受賞。
ファンとしては嬉しい限りですが、
特に平面作品の作家ではないのに、いきなり平面作品を作って、即入賞。
漫才師がピンでR-1ぐらんぷりに出場して、
いきなり決勝に進出してしまったくらいの違和感はあります。
個人的に賞を獲って欲しいと思ったのは、
田中武さんの 《花のたとえ、嵐のたとえ》 という作品です。
下敷きになっているのは、日本画の伝統的な画題である 《武蔵野図屏風》 。
画面の下には、東日本大震災を連想させる汚染袋が敷き詰められています。
そこから咲き乱れるのは、カーネーション。
美しさと不穏さが同居する妙に惹きつけられる作品でした。
最後に、今回要注意 (?) の笹山直規さんの作品をご紹介。
笹山さんは、生と死をテーマに、
死刑囚や事故、死体などをモチーフとした作品を一貫して制作しているアーティストです。
今回の新作も、それに漏れず交通事故がモチーフとなっていました。
作品の刺激が強すぎるので、画像は掲載しません。
閲覧注意。
覚悟のできた方だけ、壁の向こうに足を踏み入れてください。
・・・・・というような案内をどこかに記載しておいて欲しかったです。
何も知らずに、
”あの一角だけ、なんか隔離されてるぞ。
ということは、ちょっとムフフな感じの作品なのかな”
と思って、スキップ混じりで足を踏み入れたら、エラいものを見せられてしまいました。。。
完全なるもらい事故。
1位を目指して、ランキングに挑戦中。
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今年も、“VOCA展” が、上野の森美術館で開催されています。
VOCA展 (ヴォーカ展) とは・・・
全国の美術館学芸員、ジャーナリスト、研究者などに40才以下の若手作家の推薦を依頼し、
その作家が平面作品の新作を出品するという方式で、全国各地の未知の優れた才能を紹介する美術展
のこと。
250cm×400cm以内の壁面に展示できるサイズの平面作品であれば、OK。
絵画作品や版画作品に限らず、写真作品もOKです。
VOCA展が始まった頃は、まだモニターがブラウン管でしたが、今やモニターは薄型の時代。
“厚さ20㎝以内であれば平面とみなす” というルールなので、映像作品も余裕でOKです。
なお、厚さ20㎝に満たない薄型の立体作品も、ルール上はOK。
もはや、ほとんど何でもあり状態です (笑)
過去には、村上隆さん、奈良美智さん、蜷川実花さん、
そして、今何かと話題になっているら会田誠さんもVOCA展に出展。
いうなれば、若手アーティストの登竜門的な展覧会なのです。
さてさて、平成最後となる記念すべき今回のVOCA賞に輝いたのは・・・
東城信之介さんの 《アテネ・長野・東京ノ壁ニアルデアロウ摸写》 という作品。
こちらは、キャンバスではなく、金属板の上に、
落書きのようなものが描かれたり、転写されたりしています。
さらに、金属を磨いたり、傷つけたり、
錆びさせたりすることで、複雑な表情を生み出しています。
モチーフとなっているのは、オリンピック。
東城さんがアテネを訪れた際に、荒廃した会場を目にして、
自身の故郷である長野県に同様の荒廃があることを思い出したのだそうな。
そして、いよいよ来年2020年、東京でオリンピックが開催されます。
その会場跡地に近い未来、こんな落書きが ‟アルデアロウ” ことに警鐘を鳴らす作品です。
VOCA奨励賞は在日コリアンのチョン・ユギョンさんの作品、
《Let’s all go to the celebration square of victory!》 が受賞。
パッと見は、サイケでポップ。
どこかのファッションブランドのDMのデザインのようですが。
実は、こちらは北朝鮮のプロパガンダポスターをモチーフとしたもの。
そのイメージが、それと分からなくなるくらいまでに解体された作品です。
もう一人のVOCA奨励賞の受賞者は、石場文子さん。
亡くなった祖母をテーマにしたという 《2と3、もしくはそれ以外(祖母の家)》 が受賞しています。
一番左の作品で、輪郭線で表されているのが、おそらく作者の祖母なのでしょう。
亡霊のようで、ちょっと背筋がゾワっとしました。
(しかも、よりによって、なぜこのようなポーズ?)
残り3点は、祖母の家を映した写真とのこと。
一見すると、特に何の変哲もない写真ですが、近づいてみると・・・・・
あるはずのない輪郭線がくっきりと描き込まれているのに気が付きます。
輪郭線があるだけで、3次元の世界が2次元に感じられる不思議さ。
人間の脳や視覚は、どのように2次元と3次元の違いを捉えているのか。
改めて考えさせられる作品でした。
さてさて、ここ近年、その傾向が高まっているような気がしていましたが。
やはり、今年も社会問題をモチーフにした作品、
複雑な構造の作品が高い評価を受けているような印象を受けました。
当初は、純粋に平面作品の魅力を競う展覧会だったはずなのに、
今や、VOCA展にとっての 『平面』 は、あくまでフォーマットにしか過ぎず。
美術業界内でウケる玄人受けの複雑な作品が選ばれている感は否めません。
正統派の漫才では優勝できない。最近のM-1グランプリのようです。
もっと単純に一般の人が観ても、
「スゴい!」 「面白い!」 「なんだこれは!」 と思える作品が選ばれてもいいような。
新たな元号に代わるこのタイミングで、一旦その辺りのをフラットにしてみてはいかがでしょう。
平面だけに。
ちなみに、以前から注目しているアートユニット・目も、今回のVOCA展に参戦。
インスタレーション作品を手掛ける彼女らが、
一体どんな平面作品を作るのか、興味津々でした。
こちらが、その平面の新作 《アクリルガス》 です。
ガスで生成される惑星に着想を得た作品。
アクリル絵の具や樹脂が溶けあい、まさに惑星のような姿を見せています。
映像作品ではないのですが、まるで常に動いているかのよう。
実体があるようでない、なんとも不思議な作品でした。
惜しむらくは・・・
250cm×400cm以内、厚さ20㎝以内という規定があったこと。
もっとサイズが大きいか、形状が半球形なら、
惑星のイメージに、より近かったことでしょう。
とは言え、この作品で、目は佳作賞を受賞。
ファンとしては嬉しい限りですが、
特に平面作品の作家ではないのに、いきなり平面作品を作って、即入賞。
漫才師がピンでR-1ぐらんぷりに出場して、
いきなり決勝に進出してしまったくらいの違和感はあります。
個人的に賞を獲って欲しいと思ったのは、
田中武さんの 《花のたとえ、嵐のたとえ》 という作品です。
下敷きになっているのは、日本画の伝統的な画題である 《武蔵野図屏風》 。
画面の下には、東日本大震災を連想させる汚染袋が敷き詰められています。
そこから咲き乱れるのは、カーネーション。
美しさと不穏さが同居する妙に惹きつけられる作品でした。
最後に、今回要注意 (?) の笹山直規さんの作品をご紹介。
笹山さんは、生と死をテーマに、
死刑囚や事故、死体などをモチーフとした作品を一貫して制作しているアーティストです。
今回の新作も、それに漏れず交通事故がモチーフとなっていました。
作品の刺激が強すぎるので、画像は掲載しません。
閲覧注意。
覚悟のできた方だけ、壁の向こうに足を踏み入れてください。
・・・・・というような案内をどこかに記載しておいて欲しかったです。
何も知らずに、
”あの一角だけ、なんか隔離されてるぞ。
ということは、ちょっとムフフな感じの作品なのかな”
と思って、スキップ混じりで足を踏み入れたら、エラいものを見せられてしまいました。。。
完全なるもらい事故。
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