目の前には、東京湾が広がり、三方を山に囲まれた横須賀美術館。
とあるアート情報サイトが選ぶ 『絶景美術館トップ5!』 にもランクインしている美術館です。
そんな壮大なスケールの眺めが楽しめる横須賀美術館では、
現在、“縮小/拡大する美術 センス・オブ・スケール展” という展覧会が開催されています。
美術館に入っていきなり飛び込んでくるのは、白い大きなオブジェ。
横からパッと見ただけでは、何だかよくわからなかったので、
とりあえず中2階のスペースから、見下ろしてみることにしました。
あ、なるほど!
その正体は、日本列島でした。
もちろん、こちらはアート作品。
鈴木康広さんによる 《日本列島のベンチ》 です。
ベンチだけに、もちろん座ってもOK!
とは言え、半島など細いところは、壊してしまう恐れがあるので座れません。
どうやら僕のふるさと千葉県は、座るのには不向きなようです。
あと、伊豆半島や能登半島も、座るのに不向き。
これまでの人生で一度も、日本列島に座ろうと考えたことはないですが。
「やっぱり新潟のあたりの座り心地はいいなァ」 とか、「四国は一人用サイズだなァ」 とか、
座るという観点から日本列島を眺め、さらに実体験してみるのは、想像以上に楽しかったです。
ちなみに、画像ではわかりづらいですが、
《日本列島のベンチ》 の座面は、ちょっと湾曲しています。
これは、日本列島自身が曲面であることを、実際の縮尺で可視化したものなのだとか。
平面の地図でしか見たことがない日本列島ですが、実はこんなにカーブしていたとは!
新鮮な驚きがありました。
・・・・・と、今回の展覧会では、このようにモノの縮尺、
つまりスケールを縮小したり拡大したり、変化させた現代アートにスポットが当てられています。
(一部、現代アート以外の作品もあり)
ありそうでなかったテーマの現代アート展です。
作品のスケールが変化するということは、
逆に言えば、観ている僕らのスケールが変化するということ。
巨人になったり小人になったり、さまざまな視点で楽しめる展覧会です。
今回の展覧会には、11人 (組) の作家が参加していますが、
その中でも特に注目なのは、ミニチュア写真家の田中達也さん。
朝ドラ 『ひよっこ』 のタイトルバックでも話題となった今大注目のアーティストです。
例えば、こちらは 《これぞ “エンター” テイメント》という写真作品。
ダジャレのセンスこそ、アレですが (笑)
身近な品を別のものに見立てるセンスは天下一品!
今展では、普段Instagramで公開されている写真作品と、
そんなセンスが光るミニチュア作品とが併せて展示されていました。
なお、今回の展覧会は、基本気に写真撮影がOKとなっています。
是非、自分のお気に入りのアングルで、
素敵なミニチュア写真を撮ってお楽しみくださいませ。
とりわけ田中さんのミニチュア作品で興味深かったのが、
同じ日用品でも、スケールを変化させることで、まったく違うものに見立てられるということ。
ミニチュアの視点に立たないと、これらの発想は生まれないのでしょうね。
どの作品もクスッと笑えて、思わずハッとさせられるものばかり。
無限に観ていられる気がしました。
続いて紹介したいのは、和風ドールハウス作家の高橋勝美さん。
公立の美術館で作品が紹介されるのは、今回が初めてとなる作家です。
ちなみに、あの俳優の高橋克実さんと同じ読み方ですが、こちらの高橋勝美さんは女性。
もともとは和菓子屋で働いていたという高橋さん。
余った餡や生地で菓子を作っているうちに、
粘土を使ったらどうなるか考えるようになったとのこと。
そして、まずは自身が働いていた和菓子屋のミニチュアを作ったのだそうです。
それをきっかけに彼女の何かに火が付き、独学でミニチュア作りに邁進するように。
70歳を超えた今でも現役で、ミニチュアを制作し続けているそうです。
そんな高橋さんが制作するミニチュアの最大の特徴は、とにかく細部まで緻密に作られていること。
作りたい和風建築に出逢うと、まずは徹底的に取材するのだそう。
測れるところは測り、汚れや欠けている部分もチェック、
さらには、内部に置く小物の時代考証も慎重に検討するのだとか。
そうしてノート何冊分にもなる取材を終えたところで、いよいよ制作。
一つの作品を完成させるまでに、数年はかかるのだそうです。
もはや、1本の映画を製作するくらいの労力。
そんな黒澤明ばりのこだわりで制作されているからでしょう。
彼女が制作するミニチュアには、一人も人がいないにも関わらず、
さっきまでそこで誰かが生活していたかのような、人の温もりや痕跡が感じられるのです。
細部の細部まで鑑賞していたら、時間がいくらあっても足りないくらいでした。
さてさて、会場には他にも、三浦半島を題材にした平町公さんによる超巨大絵画や、
実は横須賀美術館のある観音崎と 『ガリヴァー旅行記』 が、
関係が深かったという事実から、展示を構成した高田安規子・政子さんの作品群、
“めがねと旅する美術展” でも紹介した 《コンステレーション》 を含む岩崎貴宏さんの最新作などが、
(写真上の 《フェノタイピック・リモデリング》 はチラシや紙袋から看板を作成した作品。
《コンステレーション》 の最新作は、横須賀ということで、占領下に米軍が子供たちにあげていたガムと同じものの包み紙を使用)
展示されています。
どの作品も、もれなく面白かったです。
作家のセンスもさることながら、
このメンバーをチョイスした横須賀美術館のセンスも素晴らしかったです。
早くも続編希望。
いつか “センス・オブ・スケール展2” を開催して欲しいものです。
もちろん拡大版で。
1位を目指して、ランキングに挑戦中。
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とあるアート情報サイトが選ぶ 『絶景美術館トップ5!』 にもランクインしている美術館です。
そんな壮大なスケールの眺めが楽しめる横須賀美術館では、
現在、“縮小/拡大する美術 センス・オブ・スケール展” という展覧会が開催されています。
美術館に入っていきなり飛び込んでくるのは、白い大きなオブジェ。
横からパッと見ただけでは、何だかよくわからなかったので、
とりあえず中2階のスペースから、見下ろしてみることにしました。
あ、なるほど!
その正体は、日本列島でした。
もちろん、こちらはアート作品。
鈴木康広さんによる 《日本列島のベンチ》 です。
ベンチだけに、もちろん座ってもOK!
とは言え、半島など細いところは、壊してしまう恐れがあるので座れません。
どうやら僕のふるさと千葉県は、座るのには不向きなようです。
あと、伊豆半島や能登半島も、座るのに不向き。
これまでの人生で一度も、日本列島に座ろうと考えたことはないですが。
「やっぱり新潟のあたりの座り心地はいいなァ」 とか、「四国は一人用サイズだなァ」 とか、
座るという観点から日本列島を眺め、さらに実体験してみるのは、想像以上に楽しかったです。
ちなみに、画像ではわかりづらいですが、
《日本列島のベンチ》 の座面は、ちょっと湾曲しています。
これは、日本列島自身が曲面であることを、実際の縮尺で可視化したものなのだとか。
平面の地図でしか見たことがない日本列島ですが、実はこんなにカーブしていたとは!
新鮮な驚きがありました。
・・・・・と、今回の展覧会では、このようにモノの縮尺、
つまりスケールを縮小したり拡大したり、変化させた現代アートにスポットが当てられています。
(一部、現代アート以外の作品もあり)
ありそうでなかったテーマの現代アート展です。
作品のスケールが変化するということは、
逆に言えば、観ている僕らのスケールが変化するということ。
巨人になったり小人になったり、さまざまな視点で楽しめる展覧会です。
今回の展覧会には、11人 (組) の作家が参加していますが、
その中でも特に注目なのは、ミニチュア写真家の田中達也さん。
朝ドラ 『ひよっこ』 のタイトルバックでも話題となった今大注目のアーティストです。
例えば、こちらは 《これぞ “エンター” テイメント》という写真作品。
ダジャレのセンスこそ、アレですが (笑)
身近な品を別のものに見立てるセンスは天下一品!
今展では、普段Instagramで公開されている写真作品と、
そんなセンスが光るミニチュア作品とが併せて展示されていました。
なお、今回の展覧会は、基本気に写真撮影がOKとなっています。
是非、自分のお気に入りのアングルで、
素敵なミニチュア写真を撮ってお楽しみくださいませ。
とりわけ田中さんのミニチュア作品で興味深かったのが、
同じ日用品でも、スケールを変化させることで、まったく違うものに見立てられるということ。
ミニチュアの視点に立たないと、これらの発想は生まれないのでしょうね。
どの作品もクスッと笑えて、思わずハッとさせられるものばかり。
無限に観ていられる気がしました。
続いて紹介したいのは、和風ドールハウス作家の高橋勝美さん。
公立の美術館で作品が紹介されるのは、今回が初めてとなる作家です。
ちなみに、あの俳優の高橋克実さんと同じ読み方ですが、こちらの高橋勝美さんは女性。
もともとは和菓子屋で働いていたという高橋さん。
余った餡や生地で菓子を作っているうちに、
粘土を使ったらどうなるか考えるようになったとのこと。
そして、まずは自身が働いていた和菓子屋のミニチュアを作ったのだそうです。
それをきっかけに彼女の何かに火が付き、独学でミニチュア作りに邁進するように。
70歳を超えた今でも現役で、ミニチュアを制作し続けているそうです。
そんな高橋さんが制作するミニチュアの最大の特徴は、とにかく細部まで緻密に作られていること。
作りたい和風建築に出逢うと、まずは徹底的に取材するのだそう。
測れるところは測り、汚れや欠けている部分もチェック、
さらには、内部に置く小物の時代考証も慎重に検討するのだとか。
そうしてノート何冊分にもなる取材を終えたところで、いよいよ制作。
一つの作品を完成させるまでに、数年はかかるのだそうです。
もはや、1本の映画を製作するくらいの労力。
そんな黒澤明ばりのこだわりで制作されているからでしょう。
彼女が制作するミニチュアには、一人も人がいないにも関わらず、
さっきまでそこで誰かが生活していたかのような、人の温もりや痕跡が感じられるのです。
細部の細部まで鑑賞していたら、時間がいくらあっても足りないくらいでした。
さてさて、会場には他にも、三浦半島を題材にした平町公さんによる超巨大絵画や、
実は横須賀美術館のある観音崎と 『ガリヴァー旅行記』 が、
関係が深かったという事実から、展示を構成した高田安規子・政子さんの作品群、
“めがねと旅する美術展” でも紹介した 《コンステレーション》 を含む岩崎貴宏さんの最新作などが、
(写真上の 《フェノタイピック・リモデリング》 はチラシや紙袋から看板を作成した作品。
《コンステレーション》 の最新作は、横須賀ということで、占領下に米軍が子供たちにあげていたガムと同じものの包み紙を使用)
展示されています。
どの作品も、もれなく面白かったです。
作家のセンスもさることながら、
このメンバーをチョイスした横須賀美術館のセンスも素晴らしかったです。
早くも続編希望。
いつか “センス・オブ・スケール展2” を開催して欲しいものです。
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