4LDKであろうが1Kであろうが、およそどの家にも存在している空間 「台所」。
そんな台所の歴史や文化を掘り下げた展覧会が、
現在、京橋にあるLIXILギャラリーで開催されています。
その名も、“台所見聞録-人と暮らしの万華鏡-”。
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会場でまず展示されていたのは、世界各国の台所の模型です。
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“台所なんて、基本的にどこも同じじゃないの?” と思いきや、
約半世紀にわたって、世界の台所を調査してきた建築家の宮崎玲子氏の見解によると、
北緯40度を境に南北で、大きな違いがみられるのだそう。
例えば、北は水を使うことが少ないため、流しが主役にならないのですが、
逆に、南では洗う頻度が高いため、大量の水を使うことが前提の台所になっているのだそうです。
何より決定的な違いは、家の中での台所の位置。
ロシアのような寒い北の地域では・・・
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部屋を暖める暖房の機能もかねて、家の中心に火を使う台所が配置されています。
反対に、暑い南の地域では、火元はなるべく部屋の中心から離れたところに配置されがち。
例として紹介されていたネパールの家の場合・・・
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台所は、屋上階である4階に配置されていました。
「台所=1階」 と当たり前のように思っていましたが、
気候や風土が違えば、台所に対する考え方も大きく違うのですね。
なお、展示されている1/10縮尺の再現模型はすべて、
台所調査を行った際の記録や資料をもとに、宮崎玲子氏本人が制作した私物です。
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プロの建築家による建築模型なので、建築に関しては申し分ないのですが。
人形に関しては、本業ではない分 (?)、独特の味わいがありました。
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そこはかとなく漂う 『メトロポリタン美術館』 感。
大貫妙子さんの歌声に合わせて、今にも踊り出しそうな雰囲気を醸し出していました。
ちなみに、文化的にも模型的にも、
一番印象に残ったのは、北極圏 (イヌイットの雪の家) の模型です。
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家中を見渡せど、台所らしき空間はありません。
実は、自然そのものが冷蔵庫であるような北極圏では、外で調理をするとのこと。
台所的なスペースは家の中にはないのだそうです。
ということで、模型の裏側に回ってみたところ、
何やら親子が巨大マグロのようなものを捌いています。
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・・・・・と思ったら、アザラシでした。
ちーん。
世界の台所事情に続いて紹介されていたのは、日本における明治以降の台所の変遷。
今でこそ立って調理するのが当たり前ですが、
実は明治の中頃までは、膝を床について調理するのがポピュラーだったそうです。
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まな板は床の上に直置き。
食材が入ったお皿も直置きです。
これでは、不衛生である上に、
膝をつく→調理する→立ちあがって作業する→再び膝をつく・・・と非効率だったそう。
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明治30年代に入ってようやく、
今のような立って調理するスタイルが推奨されるようになったそうです。
ちなみに、それ以降、台所の利便性が追求され、昭和時代には人間工学的アプローチも導入。
日本の平均的な女性の身長を元に台所が作られるようになったのだとか。
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その頃に誕生し、公団のキッチンに採用されたことで、
爆発的に日本の一般家庭に浸透したとされるのが、こちらのステンレス深絞り流し。
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それまでの金属製の流しは、トタンやアルミ、ブリキ製しかなかったそう。
折り曲げや溶接が難しく、槽の深さが5㎝に満たない流しも、ざらだったのだとか。
その頃の人は、食べ終わった皿をどこに置いていたのでしょう??
いかにステンレス “深” 絞り流しが、画期的なキッチンだったのかがよくわかります。
なお、ステンレス製の流しが登場するまでは、
セメントに砂や花崗岩などを加えた人造石を、砥石やグラインダー等で研ぎ表面を仕上げた・・・
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いわゆる 「人研ぎ流し」 が主流だったそうです。
昔は、こんな小学校の足洗い場みたいなところで、調理をしていたのですね。
さてさて、展覧会のラストを飾るのは、
一流建築家が、その名建築において手掛けた台所の事例です。
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前川國男や菊竹清訓といった日本の建築界の巨匠から、
フランク・ロイド・ライトやル・コルビュジエといった世界的建築家まで。
数多くの事例が写真とともに紹介されていました。
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個人的に印象に残ったのは、東京オリンピック開催の年に、
神宮前に誕生した高級マンション 「ビラ・ビアンカ」 の台所です。
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会場全体を通じて、台所の文化や歴史を辿ってきたわけですが。
「あれっ?台所ってなんだっけ?」 と、
それまでインプットしたすべてを吹き飛ばしてしまうようなインパクトがありました。
宇宙食とか出てきそうです。
知ってるようで意外と知らない台所。
掘り下げ方次第、調理次第では、
お国柄や文化が見えてくるのですね。
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そんな台所の歴史や文化を掘り下げた展覧会が、
現在、京橋にあるLIXILギャラリーで開催されています。
その名も、“台所見聞録-人と暮らしの万華鏡-”。

会場でまず展示されていたのは、世界各国の台所の模型です。

“台所なんて、基本的にどこも同じじゃないの?” と思いきや、
約半世紀にわたって、世界の台所を調査してきた建築家の宮崎玲子氏の見解によると、
北緯40度を境に南北で、大きな違いがみられるのだそう。
例えば、北は水を使うことが少ないため、流しが主役にならないのですが、
逆に、南では洗う頻度が高いため、大量の水を使うことが前提の台所になっているのだそうです。
何より決定的な違いは、家の中での台所の位置。
ロシアのような寒い北の地域では・・・

部屋を暖める暖房の機能もかねて、家の中心に火を使う台所が配置されています。
反対に、暑い南の地域では、火元はなるべく部屋の中心から離れたところに配置されがち。
例として紹介されていたネパールの家の場合・・・

台所は、屋上階である4階に配置されていました。
「台所=1階」 と当たり前のように思っていましたが、
気候や風土が違えば、台所に対する考え方も大きく違うのですね。
なお、展示されている1/10縮尺の再現模型はすべて、
台所調査を行った際の記録や資料をもとに、宮崎玲子氏本人が制作した私物です。

プロの建築家による建築模型なので、建築に関しては申し分ないのですが。
人形に関しては、本業ではない分 (?)、独特の味わいがありました。

そこはかとなく漂う 『メトロポリタン美術館』 感。
大貫妙子さんの歌声に合わせて、今にも踊り出しそうな雰囲気を醸し出していました。
ちなみに、文化的にも模型的にも、
一番印象に残ったのは、北極圏 (イヌイットの雪の家) の模型です。

家中を見渡せど、台所らしき空間はありません。
実は、自然そのものが冷蔵庫であるような北極圏では、外で調理をするとのこと。
台所的なスペースは家の中にはないのだそうです。
ということで、模型の裏側に回ってみたところ、
何やら親子が巨大マグロのようなものを捌いています。


・・・・・と思ったら、アザラシでした。
ちーん。
世界の台所事情に続いて紹介されていたのは、日本における明治以降の台所の変遷。
今でこそ立って調理するのが当たり前ですが、
実は明治の中頃までは、膝を床について調理するのがポピュラーだったそうです。

まな板は床の上に直置き。
食材が入ったお皿も直置きです。
これでは、不衛生である上に、
膝をつく→調理する→立ちあがって作業する→再び膝をつく・・・と非効率だったそう。

明治30年代に入ってようやく、
今のような立って調理するスタイルが推奨されるようになったそうです。
ちなみに、それ以降、台所の利便性が追求され、昭和時代には人間工学的アプローチも導入。
日本の平均的な女性の身長を元に台所が作られるようになったのだとか。

その頃に誕生し、公団のキッチンに採用されたことで、
爆発的に日本の一般家庭に浸透したとされるのが、こちらのステンレス深絞り流し。

それまでの金属製の流しは、トタンやアルミ、ブリキ製しかなかったそう。
折り曲げや溶接が難しく、槽の深さが5㎝に満たない流しも、ざらだったのだとか。
その頃の人は、食べ終わった皿をどこに置いていたのでしょう??
いかにステンレス “深” 絞り流しが、画期的なキッチンだったのかがよくわかります。
なお、ステンレス製の流しが登場するまでは、
セメントに砂や花崗岩などを加えた人造石を、砥石やグラインダー等で研ぎ表面を仕上げた・・・

いわゆる 「人研ぎ流し」 が主流だったそうです。
昔は、こんな小学校の足洗い場みたいなところで、調理をしていたのですね。
さてさて、展覧会のラストを飾るのは、
一流建築家が、その名建築において手掛けた台所の事例です。

前川國男や菊竹清訓といった日本の建築界の巨匠から、
フランク・ロイド・ライトやル・コルビュジエといった世界的建築家まで。
数多くの事例が写真とともに紹介されていました。


個人的に印象に残ったのは、東京オリンピック開催の年に、
神宮前に誕生した高級マンション 「ビラ・ビアンカ」 の台所です。

会場全体を通じて、台所の文化や歴史を辿ってきたわけですが。
「あれっ?台所ってなんだっけ?」 と、
それまでインプットしたすべてを吹き飛ばしてしまうようなインパクトがありました。
宇宙食とか出てきそうです。
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掘り下げ方次第、調理次第では、
お国柄や文化が見えてくるのですね。

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