現在、静嘉堂文庫美術館で開催されているのは、
“書物に見る海外交流の歴史 ~本が開いた異国の扉~” という展覧会です。
(注:館内の写真撮影は、特別に許可を得ております)
島国、ニッポン。
言うまでもなく、四方を海に囲まれている国ながらも、
意外にも古くから、“海外交流” は絶えず続けられてきました。
そのため、日本は世界から大きく孤立することはなかったのです。
現代の感覚からしてみれば、何とでもなりそうな気もしますが。
確かに、冷静に考えてみると、テレビもインターネットもなかった時代に、
文化の面で、世界から大きく差を付けられなかったのは、奇跡的なことのように思います。
その奇跡の立役者となったのが、書物。
海外の文化や最新知識を記録した書物があったからこそ、
日本は手に取るように海外の情勢やトレンドを知ることが出来たのです。
普段あまり意識することはないですが、
書物はメディアであるということに、改めて気づかされる展覧会です。
さてさて、出展されている書物は、約60点。
その中には、教科書でもお馴染みの 『解体新書』 や、
新井白石によって書かれた西洋の研究書 『西洋紀聞』、
あの吉田兼好が 『徒然草』 の中で好もしい書物と絶賛している 『南華真経注疏』 など、
重要文化財 晋・郭象注 唐・成玄英疏 『南華真経注疏』 南宋時代(13世紀) 静嘉堂文庫蔵 【全期間展示】
日本の文化に大きな影響を与えた貴重な書物が数多く含まれています。
個人的にテンションがあがったのは、展覧会の冒頭に展示されていた 『国志(三国志)』。
もし、この本が日本にもたらされていなかったら、
横山光輝の 『三国志』 もコーエーテクモゲームスの 『三国志』 シリーズも無かったのかも。
漢字ばかりで何が書いてあるのかはよくわかりませんでしたが、食い入るように見てしまいました。
ちなみに、書物の展覧会ではありますが、
作者や時代などに関連して、絵画や陶磁器なども出展されています。
文字ばかりの退屈な展覧会では決してないので、ご安心を。
もちろん書物自体にも、絵は登場。
テキストが理解できずとも、眺めているだけでも十分に楽しめます。
中でも見逃せないのが、司馬江漢によって記された 『日本創製銅版新鐫 天球全図』 。
司馬江漢 『日本創製銅版新鐫 天球全図』のうち「天球図(部分)」 江戸時代・寛政8年(1796)頃 静嘉堂文庫蔵 【全期間展示】
宇宙の世界や顕微鏡で見た世界など、当時の最新科学が紹介されています。
こちらは、「ヲルレレイ」 なるものを描いた図。
司馬江漢 『日本創製銅版新鐫 天球全図』のうち「ヲルレレイ図」 江戸時代・寛政8年(1796)頃 静嘉堂文庫蔵 【全期間展示】
パッと見は、喫茶店に置かれていそうなマシンですが、
ヲルレレイとは、おみくじ用の機器ではなく、天体を表した機器です。
中心の赤い丸は太陽、その周囲に恒星や星座、赤道や黄道などの軌道が表示されています。
なお、当時これは、「西洋暦学の大賢、奈端」 が制作したものと認識されていたとのこと。
奈端と書いて、ネウトン。
ネウトン・・・ネゥトン・・・ニュゥトン・・・そう、あのニュートンです。
江戸時代の日本人も、ニュートンを知っていたのですね。
今回出展されていた中で、最も目を惹かれたのは、
『通小町(光悦謡本第一種)』 と鴨長明の随筆 『方丈記』 です。
こちらの書物はいずれも、京都・嵯峨の豪商であった角倉家が、
本阿弥光悦や俵屋宗達らの協力を得て出版された豪華本で、一般的には嵯峨本と呼ばれています。
表紙や挿絵、装丁など、隅々まで贅が凝らされており、
雲母刷の用紙が使用されたページは、今なおキラキラと輝いていました。
と、紙そのものの美しさに目がいってしまいましたが、
光悦が書いたとされる文字も、流れるような美しさがあります。
しかし、何より驚かされたのは、これらの文字が手書きではないということ。
なんと活字なのだそう。
ちょうどこの頃、海外から活版印刷術が伝わったことに刺激を受けて出版されたという嵯峨本。
しかし、流れるような崩し字を活字にするのは容易ではなく、
崩し字2~4文字のワンセットで活字を作り、それらを組み合わせて製版していたのだとか。
一説には、約2100個の活字が作られていたそうです。
だったら、もう直接書いちゃった方が早いのでは??
気の遠くなるような作業を想像して、思わず当時の出版人の熱意に頭が下がりました。
『方丈記』 は、日本人の無常観 (※) を表した作品と言われていますが、
これらの嵯峨本は、この先も長いこと、ちゃんと残っていって欲しいものです。
(※世の全てのものは、常に移り変わり、いつまでも同じものは無いという考え方)
最後に、個人的に一番印象に残った一冊をご紹介。
江戸時代の蘭学者・大槻玄沢による 『六物新志』 です。
六物とは、サフランやナツメグ、エブリコ(=きのこの一種) など6種類の薬物のこと。
その6種類の中には、なぜか人魚も含まれていたようです。
地域ごとの人魚。
そして、オスとメスの違いも描き分けられています。
さらに、うっすら透けて見えるのは、次のページに描かれた人魚の姿。
人魚だけで、どれだけ引っ張るつもりなのか。
この部分だけ見たら、医学書ではなく、月刊ムー。
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“書物に見る海外交流の歴史 ~本が開いた異国の扉~” という展覧会です。
(注:館内の写真撮影は、特別に許可を得ております)
島国、ニッポン。
言うまでもなく、四方を海に囲まれている国ながらも、
意外にも古くから、“海外交流” は絶えず続けられてきました。
そのため、日本は世界から大きく孤立することはなかったのです。
現代の感覚からしてみれば、何とでもなりそうな気もしますが。
確かに、冷静に考えてみると、テレビもインターネットもなかった時代に、
文化の面で、世界から大きく差を付けられなかったのは、奇跡的なことのように思います。
その奇跡の立役者となったのが、書物。
海外の文化や最新知識を記録した書物があったからこそ、
日本は手に取るように海外の情勢やトレンドを知ることが出来たのです。
普段あまり意識することはないですが、
書物はメディアであるということに、改めて気づかされる展覧会です。
さてさて、出展されている書物は、約60点。
その中には、教科書でもお馴染みの 『解体新書』 や、
新井白石によって書かれた西洋の研究書 『西洋紀聞』、
あの吉田兼好が 『徒然草』 の中で好もしい書物と絶賛している 『南華真経注疏』 など、
重要文化財 晋・郭象注 唐・成玄英疏 『南華真経注疏』 南宋時代(13世紀) 静嘉堂文庫蔵 【全期間展示】
日本の文化に大きな影響を与えた貴重な書物が数多く含まれています。
個人的にテンションがあがったのは、展覧会の冒頭に展示されていた 『国志(三国志)』。
もし、この本が日本にもたらされていなかったら、
横山光輝の 『三国志』 もコーエーテクモゲームスの 『三国志』 シリーズも無かったのかも。
漢字ばかりで何が書いてあるのかはよくわかりませんでしたが、食い入るように見てしまいました。
ちなみに、書物の展覧会ではありますが、
作者や時代などに関連して、絵画や陶磁器なども出展されています。
文字ばかりの退屈な展覧会では決してないので、ご安心を。
もちろん書物自体にも、絵は登場。
テキストが理解できずとも、眺めているだけでも十分に楽しめます。
中でも見逃せないのが、司馬江漢によって記された 『日本創製銅版新鐫 天球全図』 。
司馬江漢 『日本創製銅版新鐫 天球全図』のうち「天球図(部分)」 江戸時代・寛政8年(1796)頃 静嘉堂文庫蔵 【全期間展示】
宇宙の世界や顕微鏡で見た世界など、当時の最新科学が紹介されています。
こちらは、「ヲルレレイ」 なるものを描いた図。
司馬江漢 『日本創製銅版新鐫 天球全図』のうち「ヲルレレイ図」 江戸時代・寛政8年(1796)頃 静嘉堂文庫蔵 【全期間展示】
パッと見は、喫茶店に置かれていそうなマシンですが、
ヲルレレイとは、おみくじ用の機器ではなく、天体を表した機器です。
中心の赤い丸は太陽、その周囲に恒星や星座、赤道や黄道などの軌道が表示されています。
なお、当時これは、「西洋暦学の大賢、奈端」 が制作したものと認識されていたとのこと。
奈端と書いて、ネウトン。
ネウトン・・・ネゥトン・・・ニュゥトン・・・そう、あのニュートンです。
江戸時代の日本人も、ニュートンを知っていたのですね。
今回出展されていた中で、最も目を惹かれたのは、
『通小町(光悦謡本第一種)』 と鴨長明の随筆 『方丈記』 です。
こちらの書物はいずれも、京都・嵯峨の豪商であった角倉家が、
本阿弥光悦や俵屋宗達らの協力を得て出版された豪華本で、一般的には嵯峨本と呼ばれています。
表紙や挿絵、装丁など、隅々まで贅が凝らされており、
雲母刷の用紙が使用されたページは、今なおキラキラと輝いていました。
と、紙そのものの美しさに目がいってしまいましたが、
光悦が書いたとされる文字も、流れるような美しさがあります。
しかし、何より驚かされたのは、これらの文字が手書きではないということ。
なんと活字なのだそう。
ちょうどこの頃、海外から活版印刷術が伝わったことに刺激を受けて出版されたという嵯峨本。
しかし、流れるような崩し字を活字にするのは容易ではなく、
崩し字2~4文字のワンセットで活字を作り、それらを組み合わせて製版していたのだとか。
一説には、約2100個の活字が作られていたそうです。
だったら、もう直接書いちゃった方が早いのでは??
気の遠くなるような作業を想像して、思わず当時の出版人の熱意に頭が下がりました。
『方丈記』 は、日本人の無常観 (※) を表した作品と言われていますが、
これらの嵯峨本は、この先も長いこと、ちゃんと残っていって欲しいものです。
(※世の全てのものは、常に移り変わり、いつまでも同じものは無いという考え方)
最後に、個人的に一番印象に残った一冊をご紹介。
江戸時代の蘭学者・大槻玄沢による 『六物新志』 です。
六物とは、サフランやナツメグ、エブリコ(=きのこの一種) など6種類の薬物のこと。
その6種類の中には、なぜか人魚も含まれていたようです。
地域ごとの人魚。
そして、オスとメスの違いも描き分けられています。
さらに、うっすら透けて見えるのは、次のページに描かれた人魚の姿。
人魚だけで、どれだけ引っ張るつもりなのか。
この部分だけ見たら、医学書ではなく、月刊ムー。
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