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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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見える自然/見えない自然 ロイス・ワインバーガー展

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ヨーロッパ中部に位置し、あの国民的チョコの語源にもなっている、
オーストリアとイタリアにまたがるアルプス山脈東部の地域・チロル地方。
そんなチロル地方の山間にある村の農家に生まれ、今なお農業をしながら、
現代美術家としても活躍する 「21世紀のミレー」(?) ロイス・ワインバーガー、
その日本初となる個展が、現在、ワタリウム美術館にて開催されています。
タイトルは、 “見える自然/見えない自然 ロイス・ワインバーガー展”
会期は、10月20日までです。

ロイス・ワインバーガーの名を一躍有名にしたのは、
ドイツの都市カッセルで5年に1度開催される現代美術展ドクメンタで発表したこちらの作品。
《植物を越えるものは植物と一体である》 です。




こちらは、カッセル中央駅の線路に、
本来散布されるべき除草剤をあえて散布せず、
別の地域に生育する植物の種を撒き、庭を造ってしまったという作品とのこと。
実は、植物は移民のメタファー。移民ならぬ移植物です。
とはいえ、移民問題という政治的なテーマが根底にありながらも、
ユーモラスで大らかな雰囲気が作品全体を覆っており、思わずクスッとさせられるものがあります。
やはりアートが政治をテーマにするのであれば、
このワインバーガーのように、人を不快にさせないものでないと!
どこぞのトリエンナーレのディレクターさんに教えてあげたくなりました。

他にも、都市の中の土地の一角を檻で囲い、放置することで、
荒地植物の庭が作られていくというプロジェクトを展開してみたり、




ワタリウム美術館の向かいにある土地の土をそのまま運び入れ、
展覧会の会期終了まで水を遣りながら、展示室内で小さな庭園を育ててみたり、




ワインバーガーはこれまで 「自然とアート」 をテーマに、
見た人が自然と頬が緩むような作品を数多く制作してきました。
ちなみに、こちらが、ワインバーガーその人。




「シュレックじゃねーかよ!」 と条件発射的にツッコんでしまいそうになりました。
緑をよく作品のモチーフにしているため、
ついには自分が緑になってしまったようです (笑)
星


さてさて、今展では、そんなグリーンマンな彼の初期作から最新作まで、
絵画やドローイング、映像やオブジェなど、120点ほどが紹介されています。
サボテンに目玉を付けた作品や、




石から羽が生えている作品をはじめ、




シンプルながら、インパクトある作品が多々ありましたが、
個人的にもっとも印象に残っているのは、展示室の隅っこで見かけたこちらの作品です。




ボルダリングのホールドかと思いきや、
その正体は緑色にペイントしたキノコとのこと。
タイトルは、《侵食》
キノコの色が変わるだけで、こんなにも “侵食” 感、エイリアン感がアップするのですね。
キノコの生命力、恐るべしです。

また、キノコといえば、こんな作品も。




煙のように胞子を撒き散らすキノコの様子を捉えた一枚です。
そして、その隣に展示されていた写真には・・・・・・




胞子をモロに喰らうワインバーガーの様子が映し出されていました。
むせび、悶えるワインバーガー。
やはり、キノコの生命力、恐るべしです。


ちなみに、自然をテーマにした作品を多く制作している彼ですが、
アーティスト活動を始めた頃には、こんなテイストの作品も制作していた模様。




宗教をテーマにした神聖な作品なのでしょうか。
ところが、作品に近づいてみると、十字架は描かれたものではなく、
何やらシールのようなものがたくさん貼られて構成されていることに気がつきます。
実は、その正体は・・・・・




スーパーマーケットの割引スタンプなのだとか。
作品のタイトルは、《おお主よ、割引してください》 なのだそう。
主に頼む前に、店員に頼めよ。




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