(注:館内の写真撮影は、特別に許可を得ております)
日本が世界に誇る “写実の殿堂” ホキ美術館。
今日も、素敵な写実絵画の数々が展示されています。
その静謐で美しい世界に、きっと心が洗われることでしょう。
・・・・・・・・・・ギャラリー3を除いては。
現在、ホキ美術館のギャラリー3では、
“ハンガリーの写実画家 サンドルフィ展-魂と肉体のリアリズム” が開催中。
ギャラリー3に足を踏み入れた瞬間、
まるでホキ美術館から別の美術館にワープしてしまったかのような感覚がありました。
それくらいに、他のギャラリーとは明らかに雰囲気が違います。
その異様な空気に、立ちすくむ人や足早に去る人が続出。
良くも悪くも、ホキ美術館の展覧会史上に大きな爪痕を残す展覧会です。
こちらは、スペインにある写実絵画専門美術館、
ヨーロッパ近代美術館 (通称MEAM)とのコラボ企画として開催されたもので、
MEAMコレクションから厳選されたイシュトヴァーン・サンドルフィ作品が展示されています。
サンドルフィの展覧会が日本で開催されるのは、今回が初。
もちろん出展されている20点すべてが初来日作品です。
まずは、彼の簡単なプロフィールの紹介から。
イシュトヴァーン・サンドルフィ (1948~2007) は、ハンガリーに生まれ、パリで活動した写実画家です。
幼い頃に、ハンガリー動乱に遭遇。
サンドルフィ一家は祖国を離れ、パリへと移住します。
そうした経験から強い孤独を感じ、学校では1人でペンをとり、絵を描いてたのだそうです。
それが長じて、画才がめきめきと開花。
20代半ばには、パリ市立近代美術館で大規模な展覧会を開催。
以降、ニューヨーク、ローマ、ミュンヘンなど世界各国で作品が紹介されるように。
2006年には祖国ハンガリーで展覧会を開催するも、
惜しくも、その翌年の末に、急性の病気によってパリで亡くなります。享年59歳でした。
後半生はモデルを雇って描くようになったそうですが。
サンドルフィの画業で特に評価されているのは、
自分自身をモチーフにした70年代80年代の作品群とのこと。
今回出展されているのは、まさにその時期のサンドルフィ作品です。
サンドルフィが作品のテーマにしているのは、孤独。
うつろな表情を浮かべるサンドルフィ本人×2が、
画面のこちらに向かって、孤独を訴えかけているかのようです。
もしくは、孤独にしておいてくれと、こちらを拒絶しているのかもしれません。
どちらにせよ、画面から強いメッセージが発せられているのが、ひしひしと伝わってきます。
こちらの 《偵察兵》 という作品にいたっては、5人すべてがサンドルフィとのこと。
目には、なぜか大量の綿棒が張り付いています。
あまりにもシュールな状況。
もはや何かしらの悪夢を見ているかのような感覚に陥ります。
シチュエーションが独特すぎて、
そちらばかりに気を取られてしまいますが。
よくよく落ち着いて観てみると、色遣いやライティングも独特です。
iPhoneで撮って編集した写真みたいな色遣いやライティング。
40~50年も前に、こんな色調を生み出していただなんて。
実に恐ろしい才能です。
ちなみに、リアルすぎる描写であるため、
エアブラシで描いていると思われがちですが、エアブラシは一切使われていないとのこと。
その証拠に、近づいて観てみると・・・・・・・
絵筆の細かい毛が画面に残っているのがわかります。
絵筆の跡が一切わからないくらいに、
細かい絵筆でチマチマチマと仕上げるのが、サンドルフィのスタイル。
これまた恐ろしい才能です。
なお、矛盾しているようですが、
彼の作品にはたびたび、絵筆の跡が登場します。
が、これはあくまで “絵筆の跡” を描いたもの。
影に見えるのも、影ではなく、影を描いたものです。
当然、実際の画面はフラットになっています。
スゴい技術力であることは重々承知していますが。
・・・・・いや、でも、何がしたいの??
正直なところ、はじめはなかなか受け入れられなかったのですが。
我慢して (?) 見ているうちに、だんだんと馴染んできました。
というか、よくよく考えたら、この画風、誰かに通じるような・・・。
孤独。自画像。唯一無二の世界観。
あっ、鴨居玲だ!!
ハンガリーの鴨居玲。
そう考えたら、個人的にはストンと落ちるものがありました。
ハマる人には大ハマり、ハマらない人にはとことんハマらない。
ホームランか三振タイプの画家です。
しかし、この日本初のサンドルフィ展が、
もしかしたら、日本最後のサンドルフィ展という可能性も。
観ておくに越したことはありません!
ちなみに。
サンドルフィは、妻や子供など家族をモチーフにした作品も多く制作しています。
その中でも特にインパクトが強かったのが、
《絵画を点検するドニーズとグラツィエラ》 という一枚。
『Choo Choo TRAIN』 状態で、こっちみんな!
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