今回は、最寄りのあいの風とやま鉄道線入善駅から、
徒歩で1時間ほどの距離にある美術館へ。
(町営バスは1日4本ありますが、タクシーを利用するのがベターです)
しかも、美術館の周りは・・・・・
見渡す限り、一面の田んぼが広がっていました。
なぜ、こんなところに美術館が??
まさに、ポツンと一軒家な美術館。
それが、下山芸術の森 発電所美術館です。
(「下山」 と書いて 「にざやま」 と読みます)
その名の通り、もともとは発電所だった建物を利用した美術館。
大正15年に建設されたレンガ造りの水力発電所をリノベーションした現代アート専門の美術館です。
発電所をリノベーションした美術館といえば、
世界的には廃墟となった旧火力発電所を改修したロンドンのテート・モダンが有名ですが。
あちらの開館は2000年、対して、こちらの下山芸術の森 発電所美術館の開館は1995年。
なんと5年も早く誕生していたのです。
ちなみに。
美術館の入り口の入口に聳えるゲート棟は・・・
スペインを代表する建築家エリアス・トーレスによるものなのだそう。
なお、ゲート棟の内部は展示スペースではなく、管理室とトイレとなっていました。
さてさて、そんな下山芸術の森 発電所美術館で、
現在開催されているのが、“藤原隆洋 Somewhere” という展覧会。
国内外の展覧会に多数参加し、活躍されている現代美術家、
藤原隆洋さんの新作インスタレーション2点をメインにした展覧会です。
藤原さん滝や霧など、自然や自然現象をモチーフに作品を制作するアーティスト。
といっても、自然から受けたインスピレーションを、
ただ、そっくりそのまま作品に反映させるのでは無く。
自然が織り成す美しさは、一体どのようなメカニズムで造り出されるのか?
そして、人は何に心動かされるのか?
それらを徹底的に考察し、要素を究極なまでに削ぎ落とした作品を制作しています。
こちらは、新作の 《In the Darkness》 というインスタレーション作品。
巨大なタービンや鉄骨のトラスなど発電所の面影が残るダイナミックな空間に、
まるで霧やオーロラ、はたまたダイヤモンドダストが発生しているかのようです。
もちろん、実際にそうした自然現象が発生しているわけではありません。
浮かび上がっているものの正体は、無数の糸。
白い糸と透明の糸が結び合わされているため、
照明が当たると、白い糸の部分だけがフワッと浮かんでいるような印象を受けるのです。
“それだけ”、と言ってしまえば、“それだけ” の作品なのですが。
自然現象を眺めていて飽きることがないように、
《In the Darkness》 は、まったく飽きることがなく、いつまでもボーッと眺めていられる作品でした。
その最大のポイントは、糸の細さにあり。
もし、この糸が太かったら、そうめん工場のような印象を受けたことでしょうし、
さらに、もっと太かったら、スターにしきのの衣装のような印象を受けたでしょう。
あの絶妙な細さだからこそ、繊細な自然現象のような印象が生まれていた気がします。
個人的には、無数の糸を通じた光が壁や床でゆらめく様子がお気に入り。
5分ほど鑑賞していたつもりだったのですが、気づけば30分以上経過。
たぶん気づかなかったら、まだまだボーッと眺めていたことでしょう。
正直なところ、この記事を書いている今も、《In the Darkness》 を観たいくらいです。
リアルタイムの様子をライブカメラで配信してくれたらいいのに。
ちなみに。
天井から吊された糸の数は、なんと1万本!
約1年間をかけて、この作品を制作したのだそうです。
その途方もない制作期間に、「・・・・・・・気が狂わないんですか??」 と尋ねてみたところ、
「狂いますよ (笑)」
と、藤原さんは即答。
「でも、気が狂うくらいのものを制作しないと、
人が感動するようなものは生まれませんから」
と仰っていたのが、実に感慨深かったです。
なお、もう一つのインスタレーション作品、
《Under the Surface》 もまた、いつまでも見上げていたくなる作品でした。
今回の新作は2点だけなので、こちらに関しては、観てのお楽しみということで。
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