構想10年。建設10年。
現代美術家の杉本博司さんが、長い年月を費やして、
ついに2017年秋にオープンさせた話題の複合文化施設・江之浦測候所に行ってきました。
場所は、小田原市江之浦。
JR東海道線の中で最も乗降客数が少ないといわれる無人駅、根府川駅の山の上。
かつて蜜柑畑だったという1万坪を超える広大な敷地の中に、江之浦測候所はあります。
ちなみに。
入館料は、3300円と、なかなか強気の設定。
(インターネットから事前に購入した場合。当日券は、3850円)。
日時指定の予約・入れ替え制となっています。
ところで。
江之浦測候所とは、一体どんな施設なのでしょう。
美術館でもなく、ギャラリーでもなく、測候所。
来場者全員に配られるパンフレットには、杉本さんの言葉が記載されています。
「悠久の昔、古代人が意識を持ってまずした事は、
天空のうちにある自身の場を確認する作業であった。
そしてそれがアートの起源でもあった。
新たなる命が再生される冬至、重要な折り返し点の夏至、通過点である春分と秋分。
天空を測候する事にもう一度立ち戻ってみる、
そこにこそかすかな未来へと通ずる糸口が開いているように私は思う。」
・・・・・・・ちょっと何言ってるか分からないでしょうから、
具体的に、敷地内にある建物や施設などを紹介してまいりましょう。
まず、江之浦測候所のシンボルともいうべき建物が、こちらのギャラリー棟です。
海抜100メートルの位置に建つ全長100メートルのギャラリー。
その名も、夏至光遥拝100メートルギャラリーです。
入って左手に見えるのは、長~いガラス面。
よく見ると、1本も柱がありません。
なんとすべてのガラス板が自立しているのです。
一方、右手に見えるのは、長~い大谷石の壁。
この壁には杉本さんの 《海景》 シリーズが飾られています。
そして、この長~い通路を抜けると、その先には展望スペースがありました。
こちらからは、相模湾のリアル海景を臨むことができます。
なお、この建築は、夏至の日に太陽が登る方向に合わせて建てられているとのこと。
つまり、夏至の日、日の出の時刻に訪れたなら、
ちょうどこの建物をご来光が一直線に差し込む様子を測候できるというわけです。
さて、夏至があれば、冬至を測候する施設もあります。
それが、こちらの冬至光遥拝隧道。
全長7070メートルに及ぶ鋼鉄製の隧道 (トンネル) です。
冬至の朝、水平線から太陽が顔を覗かせると、
陽の光がトンネルの奥まで差し込んでくるのだとか。
ちなみに。
冬至光遥拝隧道の上にあるのが、
先ほど紹介した夏至光遥拝100メートルギャラリー。
夏と冬で、こんなにも太陽の昇る位置が変わるのですね。
改めて、天空の動きのダイナミックさを実感させられました。
さてさて、江之浦測候所の敷地内には他にも、
冬至光遥拝隧道と平行に作られた光学硝子舞台や、
千利休の作とされる国宝の茶室 「待庵」 を本歌取りした茶室 「雨聴天」、
頂点が春分秋分の正午の太陽の方向を指している三角塚などなど、
見どころ (アトラクション?) がいっぱいあります。
ある意味、テーマパークのよう。
ディ○ニーランドのパーク全体に隠れミッキーがいるように、
杉本さんの理念が詰まった ”博司ーランド” (←?)の敷地にも隠れアートが多数存在しています。
例えば、あまり目立たないところに、さらっと置かれているこちらの古信楽の井戸枠。
何を隠そう、あの北大路魯山人の旧蔵品です。
その後、日本を代表する批評家・小林秀雄が、
この井戸枠を手に入れ、自宅の庭に据えて楽しんでいたのだそう。
また、例えば、待合室のテーブルの片側を支えている謎の物体。
こちらは、高野山の末寺、大観寺にあった石製の水鉢なのだとか。
なお、天板に使われているのは、樹齢千年を超える屋久杉だそうです。
この他、敷地内には白鳳時代の瓦や鎌倉時代の鉄宝塔など、貴重な古美術品が数多く点在。
すべて観て巡るためには、時間と体力に余裕を持って訪れてくださいませ。
ちなみに。
昨年秋より、江之浦測候所の観賞エリアが拡大。
夏至光遥拝100メートルギャラリーのある明月門エリアに次いで、竹林エリアがオープンしました。
こちらは文字通り、竹林とみかん畑に囲まれた緑豊かなエリア。
竹林と数理模型をモチーフにした杉本作品、
竹林と古美術品の取り合わせを楽しむことが出来ます。
竹林エリアの目玉となるのは、みかん畑の道具小屋を整備して作られた化石窟 (かせっくつ)。
建物の中では、みかん栽培のための道具とともに、
杉本さんご自慢の化石コレクションが展示されています。
もちろん、化石はすべて本物です。
美術館のようで美術館でない。
ギャラリーのようでギャラリーでない。
それは何かと尋ねたら、”測候所” としか言いようのない施設でした。
一つ確実にいえるのは、世界広しといえど、
このような施設は、きっとここにしかないということ。
そして、もう一つ確実にいえるのは、杉本さんにしか生み出せない施設であるということ。
今から遠い未来、何千年後の人が、もし、偶然にこの場所を見つけたとしたなら。
そして、もし、夏至や冬至、春分秋分の太陽の方向にあわせて、
さまざまな施設が配置されているという事実に気づいたとしたなら。
きっと、「江之浦に、スゴい高度な文明があったに違いない!」 と騒ぎ出すことでしょう。
敷地的にも時空的にも壮大なスケールの江之浦測候所。
思わず、そんな想像 (妄想?) が頭をよぎりました。
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現代美術家の杉本博司さんが、長い年月を費やして、
ついに2017年秋にオープンさせた話題の複合文化施設・江之浦測候所に行ってきました。
場所は、小田原市江之浦。
JR東海道線の中で最も乗降客数が少ないといわれる無人駅、根府川駅の山の上。
かつて蜜柑畑だったという1万坪を超える広大な敷地の中に、江之浦測候所はあります。
ちなみに。
入館料は、3300円と、なかなか強気の設定。
(インターネットから事前に購入した場合。当日券は、3850円)。
日時指定の予約・入れ替え制となっています。
ところで。
江之浦測候所とは、一体どんな施設なのでしょう。
美術館でもなく、ギャラリーでもなく、測候所。
来場者全員に配られるパンフレットには、杉本さんの言葉が記載されています。
「悠久の昔、古代人が意識を持ってまずした事は、
天空のうちにある自身の場を確認する作業であった。
そしてそれがアートの起源でもあった。
新たなる命が再生される冬至、重要な折り返し点の夏至、通過点である春分と秋分。
天空を測候する事にもう一度立ち戻ってみる、
そこにこそかすかな未来へと通ずる糸口が開いているように私は思う。」
・・・・・・・ちょっと何言ってるか分からないでしょうから、
具体的に、敷地内にある建物や施設などを紹介してまいりましょう。
まず、江之浦測候所のシンボルともいうべき建物が、こちらのギャラリー棟です。
海抜100メートルの位置に建つ全長100メートルのギャラリー。
その名も、夏至光遥拝100メートルギャラリーです。
入って左手に見えるのは、長~いガラス面。
よく見ると、1本も柱がありません。
なんとすべてのガラス板が自立しているのです。
一方、右手に見えるのは、長~い大谷石の壁。
この壁には杉本さんの 《海景》 シリーズが飾られています。
そして、この長~い通路を抜けると、その先には展望スペースがありました。
こちらからは、相模湾のリアル海景を臨むことができます。
なお、この建築は、夏至の日に太陽が登る方向に合わせて建てられているとのこと。
つまり、夏至の日、日の出の時刻に訪れたなら、
ちょうどこの建物をご来光が一直線に差し込む様子を測候できるというわけです。
さて、夏至があれば、冬至を測候する施設もあります。
それが、こちらの冬至光遥拝隧道。
全長7070メートルに及ぶ鋼鉄製の隧道 (トンネル) です。
冬至の朝、水平線から太陽が顔を覗かせると、
陽の光がトンネルの奥まで差し込んでくるのだとか。
ちなみに。
冬至光遥拝隧道の上にあるのが、
先ほど紹介した夏至光遥拝100メートルギャラリー。
夏と冬で、こんなにも太陽の昇る位置が変わるのですね。
改めて、天空の動きのダイナミックさを実感させられました。
さてさて、江之浦測候所の敷地内には他にも、
冬至光遥拝隧道と平行に作られた光学硝子舞台や、
千利休の作とされる国宝の茶室 「待庵」 を本歌取りした茶室 「雨聴天」、
頂点が春分秋分の正午の太陽の方向を指している三角塚などなど、
見どころ (アトラクション?) がいっぱいあります。
ある意味、テーマパークのよう。
ディ○ニーランドのパーク全体に隠れミッキーがいるように、
杉本さんの理念が詰まった ”博司ーランド” (←?)の敷地にも隠れアートが多数存在しています。
例えば、あまり目立たないところに、さらっと置かれているこちらの古信楽の井戸枠。
何を隠そう、あの北大路魯山人の旧蔵品です。
その後、日本を代表する批評家・小林秀雄が、
この井戸枠を手に入れ、自宅の庭に据えて楽しんでいたのだそう。
また、例えば、待合室のテーブルの片側を支えている謎の物体。
こちらは、高野山の末寺、大観寺にあった石製の水鉢なのだとか。
なお、天板に使われているのは、樹齢千年を超える屋久杉だそうです。
この他、敷地内には白鳳時代の瓦や鎌倉時代の鉄宝塔など、貴重な古美術品が数多く点在。
すべて観て巡るためには、時間と体力に余裕を持って訪れてくださいませ。
ちなみに。
昨年秋より、江之浦測候所の観賞エリアが拡大。
夏至光遥拝100メートルギャラリーのある明月門エリアに次いで、竹林エリアがオープンしました。
こちらは文字通り、竹林とみかん畑に囲まれた緑豊かなエリア。
竹林と数理模型をモチーフにした杉本作品、
竹林と古美術品の取り合わせを楽しむことが出来ます。
竹林エリアの目玉となるのは、みかん畑の道具小屋を整備して作られた化石窟 (かせっくつ)。
建物の中では、みかん栽培のための道具とともに、
杉本さんご自慢の化石コレクションが展示されています。
もちろん、化石はすべて本物です。
美術館のようで美術館でない。
ギャラリーのようでギャラリーでない。
それは何かと尋ねたら、”測候所” としか言いようのない施設でした。
一つ確実にいえるのは、世界広しといえど、
このような施設は、きっとここにしかないということ。
そして、もう一つ確実にいえるのは、杉本さんにしか生み出せない施設であるということ。
今から遠い未来、何千年後の人が、もし、偶然にこの場所を見つけたとしたなら。
そして、もし、夏至や冬至、春分秋分の太陽の方向にあわせて、
さまざまな施設が配置されているという事実に気づいたとしたなら。
きっと、「江之浦に、スゴい高度な文明があったに違いない!」 と騒ぎ出すことでしょう。
敷地的にも時空的にも壮大なスケールの江之浦測候所。
思わず、そんな想像 (妄想?) が頭をよぎりました。
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