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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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フィリップ・パレーノ展 オブジェが語りはじめると

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現在、ワタリウム美術館で開催されているのは、
“フィリップ・パレーノ展 オブジェが語りはじめると” という展覧会。
フランスを代表する現代アーティスト、フィリップ・パレーノの大々的な個展です。




ヴェネチア・ビエンナーレや岡山芸術交流など、
世界各地の芸術祭からオファーが多いというフィリップ・パレーノ。
近年は、パリやロンドン、ニューヨークをはじめ、個展が立て続けに開催されています。
しかし、意外にも、日本の美術館での本格的な個展は、今回が初めてなのだそうです。

そんな日本初のフィリップ・パレーノ展の会場で展示されているのは、
1994年から2006年にかけて彼が生み出したオブジェを再制作したもの。

例えば、こちらの一見、何の変哲もない石もアート作品です。




この石に人が近寄ると、その動きを感知。
内部に仕込まれたワイヤレススピーカーから女性の声が聞こえてくるという作品です。
その名も、ズバリ 《しゃべる石》

そんな 《しゃべる石》 の声に反応して、
明滅を繰り返していたのは、《ハッピー・エンディング》 という作品です。




こちらも、一見すると、ただのランプなのですが・・・・・




実は、注意深く見てみると、ランプから繋がる黒いコードは、そのまま台座の下へ。
特に白いコードとは繋がっていないようです。
・・・・・えっ?ということは、何で光ってるんだ??


では、この白いコードは一体どこに繋がっているのでしょうか?




明らかに数が多すぎるコードの行方を目で辿っていくと・・・・・




どうやら、上のフロアの展示室へと繋がっているようです。
というわけで、エレベーターで一つ上のフロアに移動。
そこには、白熱電球やネオン管といったレトロな照明が、
最新のコンピュータープログラミング技術により激しく点滅を繰り返すという、
フィリップ・パレーノの代名詞ともいうべき作品 《マーキー》 がありました。



(注:館内は写真撮影可能ですが、動画の撮影は禁止です。こちらの動画の撮影は、特別に許可を得ております。)




と、このように、今回の出展作品は、すべて繋がっています。
さらに言えば、人間の動きや太陽光、風向、気圧といった外部環境とも繋がっているとのこと。
それらの影響により、作品が発する音や光が変化するのだそうです。
つまり、展覧会場の光景は、絶えず変化を続けているのです。
一つとして同じ瞬間がない。
まさに、一期一会な展覧会でした。
星


そうそう、一期一会と言えば。
展覧会のメインビジュアルにも使われている 《リアリティー・パークの雪だるま》 という作品。
会場をパッと見た限りでは、それらしき作品は見つけられませんでした。
ということは、たぶんこれが・・・・・




《リアリティー・パークの雪だるま》 なのでしょう (笑)
氷が溶けた水滴が、ポタポタと下に落ち、
まるで水琴窟のような音を響かせていました。
正直なところ、最初目に飛び込んできたときは、
「完璧な姿の 《リアリティー・パークの雪だるま》 が見たかった!」 と思いましたが。
しばらく、その ‘なれの果て’ の姿を眺めていると、
むしろ一部しか無いからこそ、不思議と雪だるまを感じられるような心境になってきました。
千利休の朝顔のエピソードと、どことなく通ずるところがあるようです。
そんな風に思い至った瞬間、展覧会場が茶の湯の世界のように思えてきました。




《リアリティー・パークの雪だるま》 は、つくばい。
《しゃべる石》 は庭石、《ハッピー・エンディング》 は石灯籠、
《マーキー》 は、わびさび感こそないですが (笑)、明り障子でしょうか。
そんなことを考えていたら、
ワタリウム美術館のエレベーターが、にじり口のように見えてきました。




ちなみに、4階の展示室が茶室。




薄暗い空間だったのが、茶室っぽさをより強めていました。
まぁ、フィリップは茶の湯を意識しているわけではなく、すべては僕の妄想に過ぎないのですが。




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