Quantcast
Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
Viewing all articles
Browse latest Browse all 5005

シュルレアリスムと絵画

$
0
0
今年2019年は、シュルレアリスムが誕生してから、ちょうど100年目。
そんなシュルレアリスムの記念すべき年に、ポーラ美術館で開幕したのが、
“シュルレアリスムと絵画―ダリ、エルンストと日本の「シュール」” という展覧会です。




もともとフランスで誕生した際には、
無意識の世界を表現する試みであったシュルレアリスム。
しかし、現在の日本では、一般的に、『シュール=無意識』 ではなく、
『シュール=不条理』 『シュール=意味不明』 というイメージが定着しています。
一体、何がどうなって、日本ではシュルレアリスムの意味合いが変化してしまったのか??
その100年の伝言ゲーム (?) の変遷をたどる展覧会です。
星星


さてさて、展覧会の会場に入ると、
いきなりエルンストの 『博物誌』 に描かれた目の巨大パネルが現れました。


(注:館内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)


よく見れば、瞳孔の部分に穴が開いています。
それゆえ、顔嵌めパネルのごとく、
反対側から顔を出して楽しんでいるカップルや家族連れのお客さんがチラホラ。
なかなかシュール (←日本的な意味での) な光景でした。

と、それはさておき。
展覧会の冒頭で紹介されていたのは、
シュルレアリスムの創始者アンドレ・ブルトン関連の資料や、
実物の 『博物誌』 をはじめとするコラージュ作品や油彩画といったエルンストの作品群。
続いて、“シュルレアリスムのスーパースター” ダリの作品群が紹介されていまスケジュール。


Photo: Ken Kato


展覧会のポスターやメインビジュアルに、
ポーラ美術館所蔵の 《姿の見えない眠る人、馬、獅子》 が使われているので、
てっきりダリの出展作品は、この1点のみかと思い込んでいたのですが。
諸橋近代美術館や横浜美術館、富山県美術館など、
日本各地の美術館が所蔵するダリ作品が集結していました。
その数、計11点。
ダリ好きの皆様、ダリをまとめて見られるチャンスですよ。

また、会場には、エルンストやダリだけでなく、
マグリットやミロ、デルヴォーら、シュルレアリスムを代表する画家の作品もありました。

それらの西洋のシュルレアリスム作品を前半でたっぷりと堪能した後は、
いよいよ本題となる日本のシュルレアリスム作品を紹介するコーナーに突入します。
まず紹介されていたのは、1930年代の作品の数々でした。
中には、シュルレアリスムを日本に本格的に紹介した福沢一郎や、
晩年にはシュルレアリスムに移行し、31歳という若さで夭逝した三岸好太郎の作品も。


三岸好太郎 《海と射光》  1934年(昭和9) 油彩/カンヴァス 名古屋市美術館蔵


さらには、日本の初期のシュルレアリスムの代表的な画家、古賀春江の作品もありました。


古賀春江 《白い貝殻》 1932年(昭和7) 油彩/カンヴァス ポーラ美術館蔵


ちなみに、この作品のタイトルは、《白い貝殻》
なのに、画面のどこにも白い貝殻は見当たりません。
まさに、シュール。
もしかしたら、この謎のタイトルが、
日本的シュールのきっかけとなったのかもしれませんね。
なお、“春江” という名前ですが、彼はれっきとした男性です。念のため。
小野妹子と同じパターンです (←?)。


さて、展覧会はその後、北脇昇や吉原治良と続き・・・




第2会場では、瑛九や岡上淑子さんの作品が紹介されていました。


Photo: Ken Kato


また、シュールな漫画 『ねじ式』 や、
ダダやブルトンといった怪獣が登場するウルトラマンの原画も展示されています。
漫画や特撮を通して、日本独自の 「シュール」 が広がっていったのですね。


Photo: Ken Kato


ちなみに、展覧会のラストを締めくくるのは・・・




シュールな作風で人気の現代アーティスト束芋さんによるインスタレーションです。
エルンストやダリといった初期のシュルレアリスムに通ずるところもあり、
もちろん、いわゆる日本的な 「シュール」 な世界観も感じられる作品でした。
見れば見るほど、考えれば考えるほど、
“結局のところ、シュールって何なんだろう??” と不安になってきます。

それだけに、シュルレアリスム展の会場を抜けて、
ポーラ美術館の常設展コーナーが始まった時には・・・・・




まるで白昼夢から目覚めたかのようで、心底ホッとしました (笑)
ポーラ美術館にはかれこれ30回以上は訪れているので、
さすがに、ルノワールやモネの作品に新鮮味を感じなくなっていましたが。
束芋ワールドからのルノワール、束芋ワールドからのモネは、まさに 『地獄に仏』!
実に新鮮な印象を覚えました。
(注:いや、決して、束芋さんの作品が地獄のようだというわけではありません。くれぐれも誤解のなきように


さてさて、最後に一つ告知を。
この展覧会の関連イベントとして、来る1月11日に、
「新春!シュルレアリスム ヒットパレード ―シュールの笑いを分析する―」 が開催されます。
こちらは、私アートテラー・とに~と、
担当学芸員の東海林洋さんによる対談形式のトークイベントです。
『シュール』 な笑いとは何か、その定義やメカニズムについて、
芸人として、真面目にかつアカデミックに、考察・分析いたします。
とはいえ、新春らしく、楽しいコーナーも用意していますので、どうぞお楽しみに♪
詳細は、こちらに↓
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000056.000026617.html




1位を目指して、ランキングに挑戦中。
下のボタンをポチッと押して頂けると嬉しいです!

Blogランキングへ にほんブログ村 美術ブログへ

Viewing all articles
Browse latest Browse all 5005

Trending Articles