将来の日本の芸術界を支える人材の育成のため、
若手芸術家が海外の関係機関等で行う研修を支援する文化庁の制度。
それが、新進芸術家海外研修制度です。
その制度により過去に海外派遣された芸術家たちが、
研修生活で得た成果を発表する展覧会 “DOMANI・明日展” 。
国立新美術館の年明けの風物詩として、すっかり定着した展覧会です。
例年は、若手や中堅の芸術家を紹介する場も兼ねていますが、
オリンピックイヤーである今年2020年の “DOMANI・明日展” は、これまでとはちょっと違う内容に。
“傷ついた風景の向こうに” をサブタイトルに、
自然災害や戦争などにより生じた 「傷痕」 を独自に表現する芸術家をピックアップ。
現在、ちひろ美術館・東京で新作展が開催中の写真家の石内都さんや、
ロンドンを拠点に活動している米田知子など、
国内外のアートシーンの第一線で活躍中のベテラン芸術家が出展作家に名を連ねています。
また、日本を代表する彫刻家の一人である若林奮や、
昨年惜しまれつつ、45歳という若さで逝去した佐藤雅晴といった、
鬼籍に入られた芸術家の作品も紹介されていました。
いうなれば、“DOMANI・明日展” の特別版といったところ。
例年のようなフレッシュ感はありませんが、
現代アートのグループ展としては見応えがありました。
唯一フレッシュだったのが、栗林隆さんのコーナー。
現代美術家として国際的に活躍するお馴染みの栗林隆さんですが、
今回は、実の父で、世界的な昆虫写真家として知られる栗林慧さんとコラボ。
父の写真を映像化したり、和紙にプリントしたり、
一つのインスタレーション作品として仕上げています。
こういう親子競演はあまり目にしたことがないので新鮮でした。
内覧会には、お父様の慧さんもいらっしゃったのですが、
終始どこか照れくさいような、誇らしいような表情を浮かべていました。
こういう親孝行の形もあるのですね。
ちなみに、出展作品の中で、特に強く印象に残ったのは、
宮永愛子さんの 《景色のはじまり》 という作品です。
全長30メートルにも及ぶ、この布のようなモノの正体は、キンモクセイの葉っぱ。
使われているキンモクセイの葉っぱは、なんと12万枚!
日本中から集めたキンモクセイの葉の葉肉を、
すべて取って脱色し、繋げ合わせたものなのだとか。
小さなモノが繋がり合うことで、一つの世界ができている。
そんなことを連想させる作品です。
また、1980年代より一貫して、日本画の画材を用い、
空を見上げる視点で樹々を描き続けてきた日高理恵子さんの作品群も印象的でした。
初めて目にする絵画のはずなのに、どこかで見たことがあるような。
それも、ここ最近ではなく、遠い昔、子どもの頃に見たことがあるような。
不思議なデジャヴ感を覚えました。
さらに不思議だったのは、モノクロなのに、どの絵も色が感じられたこと。
なんなら、空気感や匂い、温度、
木の枝がそよ風に揺られる音や鳥の鳴き声も感じられました。
見れば見るほど、五感が研ぎ澄まされる作品です。
そうそう、木と言えば、畠山直哉さんの新シリーズ、
《untitled(tsunami trees)》 も非常に印象的でした。
2011年の東日本大震災で実家や家族を失った畠山さん。
そんな畠山さんが、2018年から約1年半かけて、
宮城県や岩手県、福島県を巡り、大地に根を張る樹木の姿を捉えたシリーズです。
震災の悲惨さ、復興の大変さも伝わってきましたが、
それ以上に、自然の力強さがダイレクトに伝わってきます。
ゴッホの 《糸杉》 を観て美しいと感じるように、
この写真に映し出された木の造形に、純粋に美を感じました。
とはいえ、令和最初の “DOMANI・明日展” 。
個人的には、こんな重いテーマではなく、
もっと明るいテーマにして欲しかったです。
日本に明日はないのでしょうか。
1位を目指して、ランキングに挑戦中。
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若手芸術家が海外の関係機関等で行う研修を支援する文化庁の制度。
それが、新進芸術家海外研修制度です。
その制度により過去に海外派遣された芸術家たちが、
研修生活で得た成果を発表する展覧会 “DOMANI・明日展” 。
国立新美術館の年明けの風物詩として、すっかり定着した展覧会です。
例年は、若手や中堅の芸術家を紹介する場も兼ねていますが、
オリンピックイヤーである今年2020年の “DOMANI・明日展” は、これまでとはちょっと違う内容に。
“傷ついた風景の向こうに” をサブタイトルに、
自然災害や戦争などにより生じた 「傷痕」 を独自に表現する芸術家をピックアップ。
現在、ちひろ美術館・東京で新作展が開催中の写真家の石内都さんや、
ロンドンを拠点に活動している米田知子など、
国内外のアートシーンの第一線で活躍中のベテラン芸術家が出展作家に名を連ねています。
また、日本を代表する彫刻家の一人である若林奮や、
昨年惜しまれつつ、45歳という若さで逝去した佐藤雅晴といった、
鬼籍に入られた芸術家の作品も紹介されていました。
いうなれば、“DOMANI・明日展” の特別版といったところ。
例年のようなフレッシュ感はありませんが、
現代アートのグループ展としては見応えがありました。
唯一フレッシュだったのが、栗林隆さんのコーナー。
現代美術家として国際的に活躍するお馴染みの栗林隆さんですが、
今回は、実の父で、世界的な昆虫写真家として知られる栗林慧さんとコラボ。
父の写真を映像化したり、和紙にプリントしたり、
一つのインスタレーション作品として仕上げています。
こういう親子競演はあまり目にしたことがないので新鮮でした。
内覧会には、お父様の慧さんもいらっしゃったのですが、
終始どこか照れくさいような、誇らしいような表情を浮かべていました。
こういう親孝行の形もあるのですね。
ちなみに、出展作品の中で、特に強く印象に残ったのは、
宮永愛子さんの 《景色のはじまり》 という作品です。
全長30メートルにも及ぶ、この布のようなモノの正体は、キンモクセイの葉っぱ。
使われているキンモクセイの葉っぱは、なんと12万枚!
日本中から集めたキンモクセイの葉の葉肉を、
すべて取って脱色し、繋げ合わせたものなのだとか。
小さなモノが繋がり合うことで、一つの世界ができている。
そんなことを連想させる作品です。
また、1980年代より一貫して、日本画の画材を用い、
空を見上げる視点で樹々を描き続けてきた日高理恵子さんの作品群も印象的でした。
初めて目にする絵画のはずなのに、どこかで見たことがあるような。
それも、ここ最近ではなく、遠い昔、子どもの頃に見たことがあるような。
不思議なデジャヴ感を覚えました。
さらに不思議だったのは、モノクロなのに、どの絵も色が感じられたこと。
なんなら、空気感や匂い、温度、
木の枝がそよ風に揺られる音や鳥の鳴き声も感じられました。
見れば見るほど、五感が研ぎ澄まされる作品です。
そうそう、木と言えば、畠山直哉さんの新シリーズ、
《untitled(tsunami trees)》 も非常に印象的でした。
2011年の東日本大震災で実家や家族を失った畠山さん。
そんな畠山さんが、2018年から約1年半かけて、
宮城県や岩手県、福島県を巡り、大地に根を張る樹木の姿を捉えたシリーズです。
震災の悲惨さ、復興の大変さも伝わってきましたが、
それ以上に、自然の力強さがダイレクトに伝わってきます。
ゴッホの 《糸杉》 を観て美しいと感じるように、
この写真に映し出された木の造形に、純粋に美を感じました。
とはいえ、令和最初の “DOMANI・明日展” 。
個人的には、こんな重いテーマではなく、
もっと明るいテーマにして欲しかったです。
日本に明日はないのでしょうか。
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