2009年に開催された “国立トレチャコフ美術館展 忘れえぬロシア” に引き続きまして。
現在、Bunkamuraザ・ミュージアムでは、国立トレチャコフ美術館展vol.2となる…
“国立トレチャコフ美術館所蔵 レーピン展” が開催されています。
10月8日まで。
ロシア絵画の巨匠中の巨匠イリヤ・レーピン (1844~1930)
そんなレーピンの日本における過去最大にして、
過去最高の回顧展が、このBunkamuraザ・ミュージアムで開催中のレーピン展なのです!
・・・・・・・が。
世の大半の方には、 「レーピン?誰??」 なのでしょうか。
現在、上野で開催中のフェルメール展やツタンカーメン展に人気が集中し、
Bunkamuraザ・ミュージアムにしては珍しく、レーピン展には、あまりお客さんが入っていない模様。
おそらく本国ロシアで開催されていたら、激混み必至の美術展なのに、
ゆったりたっぷりのんびり、ストレスフリーな状態で観賞出来てしまいました。
一観客としては嬉しいような、一アートテラーとしては悲しいような。。。
というわけで。
アートテラーとして、なんとかレーピン展を盛り上げてみたいと思います。
「レーピン?誰??」 という皆様、どうぞ最後までお付き合いくださいませ。
イリヤ・レーピンの魅力は、何と言っても、
ロシア・リアリズムの頂点を極めたとされる、その筆の巧みさ。
《思いがけなく》
《トルコのスルタンに手紙を書くザポロージャのコサック(習作)》
まるでドラマや映画のワンシーンと錯覚してしまうほどに。
登場人物たちの感情や性格、関係性、現在の状況などが、
この一枚の絵だけで、バチッと伝わってきます。
こんなにも複数の登場人物をドラマチックに描ける画家は、
美術史上で探しても、そうそう他にいないのではないでしょうか。
個人的に一番印象に残ったドラマチックな一枚は、 《手術室の外科医エヴゲーニー・パーヴロフ》
ロシア版 『救命病棟24時』 です。
・・・若干、医療スタッフの数が多すぎる気はしましたが (笑)
ちなみに、描かれている外科医エヴゲーニー・パーヴロフとは、
条件反射の実験 “パブロフの犬” でお馴染みのパブロフさんです。
さてさて、人物をドラマチックに描くことに長けているレーピン。
その才能は、一人の人物を描く肖像画においても、遺憾なく発揮しています。
『戦争と平和』 でお馴染みの文豪を描いた 《文豪レフ・トルストイの肖像》 に、
トレチャコフ美術館にその名を残す 《パーヴェル・トレチャコフの肖像》 に。
本人にお会いしたことはないですが (←当たり前!)
描かれている人物像から、なんとなく人柄がわかってしまう気がします。
肖像画の作品も数多く展示されていましたが、
その中でも、一番印象に残っているのが・・・
『展覧会の絵』 でお馴染みの 《作曲家モデスト・ムソルグスキーの肖像》
・・・・・あれ?
あの荘厳な 『展覧会の絵』 を作曲した方とは到底思えない、なんとも草臥れたオッサンです。。。
髪はボサボサだし、目はトロンとしてるし、鼻は赤いし。
キャプションを読んでみると、ムソルグスキーはアル中で、
しかも、この絵が描かれた10日後に、お亡くなりになっているとのこと。
まさに迫真のリアリティの肖像画です。
リアリティ重視 (?) のレーピンは、
『外套』 や 『狂人日記』 でお馴染みのロシアの作家・ゴーゴリも描いているのですが。
そちらは、ムソルグスキーの肖像画以上に容赦なく描いていました。
『死せる魂』 の第二部の執筆中に原稿を火中に投じたというエピソードに着想を得て描かれたのだとか。
完全に、ゴーゴリの目がイっちゃっています(>_<)
極めつけは、 《皇女ソフィア》 を描いた一枚。
皇女ソフィアは、異母弟であるピョートル (後のピョートル1世) の摂政を務めるも、
のちに修道院に幽閉されてしまった人物。
確かに、ティム・バートンの映画に登場する悪役のようなビジュアル (←僕の勝手なイメージ) の女性は、
どこかに幽閉したくなる気持ちは分からなくもないです (笑)
このソフィアのビジュアルも相当怖いですが、もっと怖いものが、この絵には描かれています。
おわかりになりましたか??
画面右側の窓にご注目くださいませ。
そこに描かれているのは、何と吊るされている死体なのです。・゚゚・(≧д≦)・゚゚・。
これは、ソフィアを擁立し反乱を起こすものの、鎮圧され処刑されてしまった兵士の死体。
その死体を、よりによって、ソフィアが幽閉されている修道院の窓に吊るすって。。。
しかも、死体が吊るされているにも関わらず、普通にプリプリ怒っているソフィアって。。。
暑い夏にピッタリ (?) の背筋が凍る一枚です。
・・・と、レーピン展の魅力を伝えるはずが、
気づけば、怖い絵を中心に紹介してしまっていました (汗)
そこで、レーピンが自分の家族を描いた心温まるような絵もご紹介いたしましょう。
まずは、3年前の “国立トレチャコフ美術館展 忘れえぬロシア” でも出展されていた・・・
《あぜ道にて―畝を歩くヴェーラ・レーピナと子どもたち》 という一枚。
これでもかというくらいに、家族の幸福感に満ちている作品です。
そして、ポスターにも使われている 《休息-妻・ヴェーラ・レーピナの肖像》
妻がモデルを務めているので、ついつい油断して眠ってしまったのでしょうね。
プロのモデルならば、失格です。
しかも、椅子と衣装の色が、どん被りしてしまっています (笑)
重ね重ね、プロのモデルならば、失格です。
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国立トレチャコフ美術館所蔵 レーピン展
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