現在、パナソニック汐留美術館で開催されているのは、
『工芸』 をテーマにした “和巧絶佳展 令和時代の超工芸” という展覧会。
1970年以降に生まれた12人の工芸家、
いや、展覧会タイトル的にいえば、超工芸家を紹介する展覧会です。
そのメンバーの中には、以前にブログで紹介した作家さんが数多く含まれています。
例えば、レディ・ガガが愛用するヒールレスシューズで世界から注目を集める舘鼻則孝さん 。
また例えば、金魚をテーマに制作を続けて約20年、自他ともに認める 『金魚絵師』 の深堀隆介さん。
さらには、『美の巨人たち』 でも取り上げられた新進気鋭の鋳金作家・髙橋賢悟さんや、
截金とガラスを融合させた世界で唯一無二の截金ガラス作品を制作する山本茜さんも。
今回紹介されている12人の作家は、
12人が12人、いい意味でイっちゃってます。
一つの作品に対して、100%どころか200%近く心血を注いでいる工芸家ばかり。
登場人物、全員変人 (←誉め言葉です!)
『アウトレイジ』 のような展覧会です。
観るべし。
本当であれば、すべての作家を紹介したいのですが。
キリがないので、泣く泣く数名に絞ってご紹介したいと思います。
まずは、漆芸作家の池田晃将さんから。
“漆芸って古臭くない?” と思っているすべての方に、池田さんの作品を観て頂きたい!
溢れ出るサイバー感。
『マトリックス』 や 『攻殻機動隊』 の世界観を彷彿とさせるものがあります。
容器を装飾する数字の正体は、光沢のある貝。
そう、つまり、伝統的な螺鈿な技法が使われているのです。
見た目はハイテク、制作スタイルはアナログ。
それが、池田作品です。
ちなみに、一般的な螺鈿細工では貝の厚みは0.2㎜ほどだそうですが、
漆の黒を際立たせるために、池田さんは極限まで薄くして0.08mmほどに仕上げているのだとか。
吹いたら確実にどこかに飛んで行ってしまう薄さ。
観ているこちらも思わず息を止めてしまいました。
そんな池田さんの漆芸作品にも驚かされましたが、
同じくらいに驚かされたのが、橋本千毅さんの漆芸作品。
池田さんとはまた違った驚きと感動がありました。
漆芸ってこんなに面白いものでしたっけ?!
オウムや蝶をモチーフにした作品にも目を奪われましたが、
もっとも印象に残っているのは、こちらの 《唐草螺鈿箱》 でしょうか。
オウムや蝶のほうが細かな装飾が施されていて、
パッと見は、《唐草螺鈿箱》 のほうがまだ簡単に作れそうに思えますが。
表面の凸凹を無くすため、まず貝を模様の形に切り抜き、
それらをパズルのように組み合わせ、その隙間を埋めるように金蒔絵を施しているのだそう。
貝を全面に敷き詰め、その上から唐草模様に金蒔絵を施しているわけではないのです。
まさに神業ですね。
最後に紹介したいのは、九谷赤絵作家の見附正康さんです。
九谷の伝統的な技法 「赤絵細密」 を現代的にアレンジする見附さん。
しかも、ただ現代的であるだけでなく。
紋様がとにかく細かいのです!
「細かい線がびっしり描かれているだろ。
ウソみたいだろ。手書きなんだぜ。それで・・・。」
と、たっちゃんのようなセリフが自然と口をついてしまう作品です。
実際にこの線を描いている見附さんがもちろん一番疲れるのでしょうが。
観賞するこっちもだいぶ疲れます。
1つの作品を隅から隅までじっくり観たら、目が乾燥していました。
瞬きしながら鑑賞することをお薦めいたします。
ちなみに。
「そんな見附さんの作品のサインは、どんな感じなんだろう?」 と裏に回ってみると・・・・・
とっても控えめなサインがありました。
もっと自信を持って (←?) 、大きなサインを描けばいいのに!