現在、森美術館で開催されているのは、
“STARS展:現代美術のスターたち―日本から世界へ” という展覧会。
草間彌生さん、李禹煥さん、宮島達男さん、
村上隆さん、奈良美智さん、杉本博司さん。
世界的に活躍する日本人アーティスト、まさに現代美術のスター6人を紹介する展覧会です。
それぞれのアーティストの個展は、これまで国内外で何度も開催されていますが。
この6人を集めた展覧会は、今回が初めて。
人気と実力を兼ね備えたスター芸術家ばかりを集めたら、素晴らしい展覧会になるのでは?
誰もが思い付きそうな企画ですが、
誰もが思い付きそうなだけに、むしろ誰もやらなかった企画。
まずは何より、この企画を実現させた森美術館に拍手を送りたいと思います。
さてさて、気になるのは、誰がトップバッターで、誰がトリを飾るのか、ということ。
僕としては、奈良さんから初めて、草間さんで締めるだろうと予想していましたが。
個人的には意外や意外、トップバッターは村上隆さんでした。
村上隆 展示風景
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスの下で許諾されています。
いきなり村上ワールド全開!
好き嫌いは分かれるかもしれませんが、
実に、華のある展示会場となっていました。
桜や富士山をモチーフにした新作 《チェリーブロッサム フジヤマ JAPAN》 や、
村上隆 《チェリーブロッサム フジヤマ JAPAN》
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスの下で許諾されています。
歌舞伎をモチーフにした 《2020 十三代目市川團十郎白猿 襲名十八番》 など、
村上隆 《2020 十三代目市川團十郎白猿 襲名十八番》
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明らかに、2020年オリンピックイヤーを見越して制作された作品が多かっただけに。
この展覧会が海外からの観光客に見てもらえないのが、残念でなりませんでした。。。
村上隆さんの次に紹介されていたのは、
ものや素材そのものを提示する “もの派” を代表する李禹煥 (リ・ウファン) さんです。
李禹煥 展示風景
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスの下で許諾されています。
どこか禅を思わせるシンプルで静謐な作品群。
いい意味で、先ほどの村上隆さんの展示で浴びたこってりとした印象を、スッと流してくれました。
胃薬のような、漢方薬のような展示です。
ちなみに、床には砂利的なものが敷き詰められています。
建物の中にいるのに、まるで外 (庭) にいるような不思議な感覚が味わえる展示でした。
その後、アーカイブコーナーを一度挟みまして、
3人目に紹介されていたのが、草間彌生さんです (←トリではなかった!)。
《No.A》 をはじめ、貴重な初期の作品が数点出展されていたのは興味深かったですが。
草間彌生 《No.A》
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスの下で許諾されています。
冒頭の村上隆さんで受けたインパクトと比べてしまうと、
全体的にこじんまりしており、そこまで草間彌生ワールド全開という感じではありませんでした。
草間彌生 展示風景
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスの下で許諾されています。
草間彌生さんの個展を何度も経験しているだけに。
物足りなさは否めません。。。
ちなみに、会場の一角に謎の物体がありました。
ソフトスカルプチャー??
4人目に登場するのは、デジタルカウンターでお馴染みの宮島達男さん。
メインとなるのは、東日本大震災の記憶と犠牲者への鎮魂、
そして、未来への希望を表現する 《「時の海ー東北」プロジェクト(2020 東京)》 でしたが。
宮島達男 《「時の海ー東北」プロジェクト (2020 東京)》
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスの下で許諾されています。
個人的には、1987年に発表された初期の代表作 《30万年の時計》 が見られて満足。
宮島達男 《30万年の時計》
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスの下で許諾されています。
「今何時?」 と聞かれても、だいたい何時かもよくわからない時計ですが。
理論上は、30万年以上の時を刻むことが出来る時計なのだそうです。
・・・・・・・たぶん、その前に発光ダイオードやら電子回路やらの寿命が尽きるでしょうが。
5番目に紹介されていたのは、奈良美智さん。
今回の6人の中ではもっとも映える展示コーナーになっていたように思います。
奈良美智 展示風景
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスの下で許諾されています。
個人的に印象に残ったのは、こちらのドローイング。
右上のドローイングが、一瞬、ホンジャマカの石ちゃんのイラストに見えました。
よく飲食店で見かけるサインに添えられている。
よくよく見てみたら、目ではなく鼻の穴でした (笑)
ということで。
今回トリを飾っていたのは、杉本博司さんでした。
杉本さんのファンとしては、嬉しいサプライズ。
どんな展示が待っているのか、逸る気持ちを押さえつつ会場を進みます。
まずは、出世作の 《シロクマ》 がお出迎え。
博物館に展示された野生動物のジオラマを写した作品です。
杉本博司 《シロクマ》
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスの下で許諾されています。
続いて紹介されていたのは、これまた初期の 《Revolution》 シリーズ。
水平線をモノクロで撮影し、90度回転させたシリーズです。
杉本博司 《Revolution 002 北大西洋、ニューファンドランド》
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスの下で許諾されています。
そして、いよいよ新作。
なんと初となる映画作品でした。
タイトルは、《時間の庭のひとりごと》。
約30分の長尺です。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
その率直な感想は、「江之浦測候所のPRビデオじゃん」 です。
特に盛り上がるところはなく、ただ淡々と、
『そうだ 京都、行こう。』 的なトーンで、江之浦測候所の光景を映した映像でした。
ちなみに、会場の最後には、江之浦測候所のパンフレットが置かれていました。
やっぱり江之浦測候所のPRビデオじゃん。
現代美術ビギナーが、現代美術デビューするには、
これ以上ないくらいに理想的な展覧会といえましょう!
ただ、現代美術が好きな方、見慣れている方にとっては、
すでに見たことがある、もしくは見たことがあるような作品が多いため、
新しい発見は少なく、刺激は薄め。
森美術館には、是非いつか “NEXT STARS展” を開催して頂きたいものです。