今年2020年、練馬区立美術館は、めでたく開館35周年を迎えました。
それを記念して、現在開催されているのが、“Re construction 再構築” という展覧会。
現代作家とともに練馬区立美術館の所蔵作品を再解釈し、新たな視点を提案しようというものです。
参加している現代作家は、全部で4人。
まず 「色」 のセクションを担当するのは、流麻二果さん。
以前、ポーラ美術館での個展で、
ルノワールやモネら印象派の画家の作品の色彩を解釈し直し、
再構成したシリーズ 『色の跡』 を発表した流さんですが。
今回の展覧会では、同様の手法を用いて、
練馬区立美術館が所蔵する松岡映久の 《さつきまつ浜村》 をモチーフにした新作を制作。
2点が並べられて展示されていました。
パット見、タッチも色味も全然違うので、
まったく異なる2点の絵画のように思えたのですが。
不思議なことに、しばらくじーっと見ていたら、なんか似てるように思えてきました。
顔は似てないのに、仕草が似ている親子のような?
ちなみに、こちらは、ちゃんと面影のある (?) 2ショット。
右に飾られているのは、松岡静野の 《舞妓》 という作品。
松岡静野は、松岡映久に学ぶも、すぐに映久と結婚。
そのまま家庭に入り、映久を支えたそうで、
彼女の作品はこの1点くらいしか知られていないのだとか。
これほどの才能があったというのに。
もし、生まれてくる時代がもっと遅かったら、
歴史に名を残す女性画家になっていたかもしれません。
続く 「メディア」 のセクションを担当したのは、
工業用ミシンを用いた刺繍を施した作品で知られる青山悟さんです。
青山さんがコラボしたのは、在日作家の郭徳俊 (クァク・ドクチュン) による 《大統領》 シリーズ。
雑誌 『TIME』 の表紙に掲載されたアメリカ大統領の顔と、
自分の顔とを、HEY!たくちゃんスタイルで (?) 合成させたシリーズです。
会場には、 《大統領》 シリーズ同様に、思わずニヤリとするような新作がズラリ。
ウィズコロナやレジ袋など、時事ネタが多いのも特徴的でした。
アートも一つのメディアである。
そんなことを強く実感させられる展示でした。
「空間」 のセクションを担当するのは、富井大裕さん。
彫刻のようで彫刻でない、いや、やっぱり彫刻かも・・・な富井さんの作品と、
昭和の画家・小野木学の不思議な味わいの油彩画が、一つの空間で共演しています。
なお、会場には巨大なひな壇が設けられており、
そこに登って、上から空間全体を見下ろすことも可能となっています。
「空間」 のセクション、上から見るか?横から見るか?
展覧会を締めくくるのは、「身体」 のセクション。
こちらでは、荒木十畝と池上秀畝の花鳥画とともに、
大小島真木さんの新作が一つのインスタレーションのように展示されています。
“「身体」 を一つの独立した存在としてではなく、
複数のものたちがそこに棲まい、協同する 「共生圏」 としてイメージした” という大小島さん。
確かに、会場のあちこちに・・・・・・
目玉や骨といった人体のパーツが散乱 (?) していました。
そのため、空間全体が一つの身体になっていて、
まるで、その内部に入り込んでしまったかのような強烈な体験をすることに。
美術を鑑賞しているというよりかは、白昼夢を見ているかのようでした。
これが再構築の結果によるものというのであれば、
確実に、僕の美術を観る目はまったく新しいものに再構築されてしまったようです。