2年に1度開催される現代美術のアワード、日産アートアワード。
日産自動車が現代美術における優れた日本のアーティストを支援し、
次世代へと続く日本の文化発展を助力すべく、2013年にスタートさせたアワードです。
これまでに宮永愛子さんや毛利悠子さん、藤井光さんがグランプリを受賞しています。
過去3回の日産アートアワードは、BankARTが会場となっていましたが。
BankARTが閉鎖となってしまったため、今回の “日産アートアワード2020” は、
みなとみらいに、期間限定で誕生した体験型施設ニッサン パビリオンが舞台となっています。
キュレーターや美術館学芸員さんによって推薦された候補者は、28名。
その中から国際審査委員会による第一次選考で選ばれたファイナリストは、わずか5名。
会場では、その5名による新作が発表されています。
まず紹介されていたのは、風間サチコさん。
こちらは、架空のオリンピックをモチーフにした 《ディスリンピック2680》 という作品。
幅約6mの巨大な木版画作品です。
世相を風刺するシニカルな版画を発表し続ける風間さん。
今回発表されていた新作も、風間ワールドが全開でした。
中でも特に皮肉が効いていたのは、こちらの 《PVILION─地球おなら館》 という作品。
描かれているのは、おそらくニッサンの車。
タイトルの 「PVILION」 は、おそらくニッサン パビリオンのこと。
それを、「地球おなら館」 って・・・・・(笑)
この作品を制作した風間さんも只者ではないですが、
この作品をちゃんと飾っている日産も只者ではないです。
続いて紹介されていたのは、三原聡一郎さん。
自然現象とメディアテクノロジーを融合させた作品を制作しているアーティストです。
今回出展されていたのは、こちらの 《無主物》 という新作。
テオ・ヤンセンの作品のように、どことなく動きそうな気がしますが。
待てど暮らせど動くことはありませんでした。
ただしばらく見つめていたら、水滴がポタリと背中に。
「つめてエな」 と思って上を見上げてみると、そこには謎の物体がありました。
どうやらこちらの作品は、空気中の水分を結露させると同時に、
天井から釣られた物体が水滴を作り、水を降らしているのだそう。
空気から水を生み出す。
そんなコンセプトの作品でした。
3人目は、土屋信子さん。
身近なものや自身が拾い集めた廃材などを組み合わせて立体作品を制作するという土屋さん。
コロナの影響で、素材がなかなか手に入らず、
ご苦労されたそうですが、8点の新作を発表していました。
4人目は、和田永さん。
古い電化製品を使ってオリジナルな楽器を産み出してきたアーティスト/ミュージシャンです。
今回発表されていたのは、《無国籍電磁集団:紀元前》 という新作。
まずは、インドネシアやスペインなど、5か国の人に電子楽器のパーツのみを送ります。
受け取った人々は、現地の中古家電と合わせて、
自分で和田さん考案のオリジナル電子楽器を組み立てます。
そして、演奏。
その5人の演奏が、この会場で一つになる。
まさに、リモート時代の今にピッタリな作品です。
ちなみに。
残念ながら、5人のうち1人のもとには、
コロナの影響で、まだ荷物が届いていないそう。
そんなトラブルもまた、今ならでは。
個人的には一番印象に残った作品です。
最後に紹介されていたのは、上海生まれ東京在住の潘逸舟さん。
発表されていたのは、《where are you now》 というインスタレーション作品。
波間をイメージさせる映像が全体にプロジェクションされています。
中心に設置されているのは、巨大なテトラポット。
その表面をエマージェンシーブランケットが覆っています。
新型コロナウイルスによって、人の移動がしづらくなった現状を、
「群」 から離れて、漂流しているようなテトラポッドで表現した作品なのだそうです。
さてさて、以上の5名の中から、グランプリに選ばれるのは果たして誰なのか?
その発表および授賞式は、来週26日の17時40分より、オンラインで生中継される予定とのこと。
ちなみに。
グランプリに選ばれると、賞金300万円。
さらに、200万円相当の海外レジデンス (渡航費・滞在費・研究費など) が授与されるそうです。
やるじゃん、日産。