今年2020年は、国際的に活躍した銅版画家・浜口陽三の生誕111年という節目の年。
それを記念して、現在、ミュゼ浜口陽三ヤマサコレクションでは、
“生誕111年浜口陽三銅版画展 幸せな地平線” という展覧会が開催されています。
(注:館内の写真撮影は、特別に許可を得ております)
浜口陽三といえば、さくらんぼ。
さくらんぼといえば、浜口陽三か大塚愛。
というくらいに、代名詞的なモチーフであるさくらんぼのある作品を筆頭に、
浜口陽三がその生涯に残した作品の中から、
特に選りすぐられた名品の数々が出展されています。
こんなに名品ばかりを出していいのか、と、逆に心配になったほど。
さすが生誕111年。1並び。
まさにフィーバー、大当たりな展覧会でした。
浜口陽三の名を世界に知らしめたカラーメゾチントの作品が、
今回の展覧会のメイン、一番の見どころであることは、言わずもがなですが。
個人的には、それ以外の作品にも興味を惹かれました。
例えば、こちらのカラーリトグラフ作品。
一瞬、妻の南桂子の作品かと思ってしまいましたが、
そんなことはなく、こちらも浜口陽三の作品なのだそう。
カラフルでポップな作品も制作されていたのですね。
ちなみに、タイトルは 《ブラジルの太陽(赤)》 とのこと。
ブラジル感こそ感じられませんでしたが、素敵な作品でした。
また例えば、初期に描かれたという油彩画作品。
左の絵はマティス、右の絵はセザンヌっぽいなぁ、と思ったら、
実際、浜口陽三はマティスとセザンヌがお好きだったとのこと。
こういう絵画を描いていた時代もあったのですね。
ちなみに、セザンヌ風の絵画 《榛名湖》 の右下には・・・・・
hamagoutchi
と、ローマ字で書かれたサインがありました。
これでは、「ハマグチ」 ではなく、「ハマゴウッチ」 です。
他にも、初公開となる小学校時代の習字 (普通に上手い!) や、
パリのベルグリューン画廊で開催された初個展のリーフレットなど、
貴重な資料の数々が紹介されていましたが、
個人的に特に興味を惹かれたのが、浜口陽三に関連するポスターの数々。
左は、天満屋という百貨店で開催された展覧会のポスター。
右は、フランスのサルセルという街で行われえる国際版画ビエンナーレの昨年のポスター。
浜口陽三はその招待作家に選ばれたそうで、
作品が特別ブースで展示されるとともに、メインビジュアルにも採用されたそうです。
そして、センターに飾られているのは、
なんと1984年のサラエボ冬季オリンピックのポスターとのこと。
まったくスポーツ感がない斬新にもほどがあるポスターです。
せめて、さくらんぼが5色だったら。
最後に、もう1点だけ印象に残ったご紹介。
初期に制作されたメゾチント作品 《魚河岸の汽車》 です。
初期の作品ということで、いわゆる浜口陽三の深い黒色にはまだ辿り着いていないのですが。
なんとか黒い面を作ろうとしたのでしょう。
画面全体に定規でビッシリと細かい線を引いた、
その努力、そのひたむきさがが伝わってくる作品です。
汽車から立ち上る煙も、後ろの建物に被らないように (?)、
ちゃんと配慮して (??)、絶妙な感じでカーブしていますね。
なんとも気の利く煙です。