現在、茨城県近代美術館で開催されているのは、“名作のつくりかた” という企画展。
こちらは、茨城県近代美術館の所蔵作品の中でも、
特に人気の高い作品の作品の素材や技法にフォーカスし、
どのように制作されているのか、その制作の裏側を探る展覧会です。
展覧会は全3章で構成されていました。
まずは、「作品のつくりかた ~資料から読み解く~」。
このコーナーでは、中村彝が描いた 《静物》 の秘密が紹介されています。
パッと見は、よくある普通の静物画のようですが、
よく見ると、手前に棒のようなものが描かれていますね。
それに、テーブルの天板かと思いきや、そのすぐ下に床が見えます。
一体、どうなっているのでしょう・・・??
その答えは、会場の一角に再現された中村彝のアトリエで明らかに!
手前にある家具は、実際に中村彝のアトリエで使われていたものなのだそう。
なるほど。《静物》 は、その下の天板に静物を置いて描いたものなのだったのですね。
四角い枠の中から、覗いてみると・・・・・・
確かに、あの絵の構図と一致しました。
小津安二郎もビックリのローアングル。
中村彝は、床にへばり付くようにして描いていたのでしょう。
傍から見たら、土下座野郎です。
また、こちらのコーナーでは、
水彩画の革新者ともいわれる中西利雄の作品が下絵とともに紹介されていました。
下絵と実作で、どこが変わったのか。
比較しながら観るのは、間違い探しのようで興味深かったです。
ちなみに、こちらの 《トリエール風景》 という作品は、一見すると、ほぼ一緒のように思えますが。
下絵では、看板にハッキリと 『HOTEL RESTRANT』 と文字が書かれていたのに対し。
実作では、『RESTRANT』 がうろ覚えみたいな感じになっていました。
また、実作には、通りに人が描かれていますし、
フランスの国旗が足されていますし、通りの突き当りにある建物も下絵と実作では全然違います。
こんなにも変わるものなのですね。
続く2章のテーマは、「名作とは何か? ~その魅力に迫る~」。
前期では、茨城県近代美術館が所蔵する横山大観作品が紹介されていたそうですが。
8月18日から始まった後期では、菱田春草の作品が数点ほど紹介されています。
特にフィーチャーされていたのは、《落葉》。
菱田春草の代表作の一つです。
何度か拝見していますが、久しぶりに観て、改めて名作だと実感させられました。
ただ、葉っぱの表現が、どこかミュシャっぽく、そこだけ浮いているような印象も。
妙な違和感を覚える作品でもありました。
違和感といえば、常設展示室のほうにも、
春草の作品 《普賢菩薩》 が展示されていたのですが。
一般的な普賢菩薩と違って、象がめちゃリアルに描かれていました。
そのしで、普賢菩薩感は限りなくゼロに。
これはもう単なる像使いの少年です。
さてさて、最後の章のテーマは、「多彩なつくりかた ~素材と技と作品~」。
こちらでは、足で絵を描いた白髪一雄の作品をはじめ、
ちょっと変わった描き方で制作された作品の数々が紹介されていました。
中でも印象的だったのが、現代日本画家・間島秀徳さんの作品。
実に迫力のある作品です。
離れて見ても十分に迫力が感じられますが、
近づいて観てみると、より迫力が感じられます。
なんとこれらの作品は、筆を使わず、
水を流したり、噴霧器で水を噴射することで描かれたもの。
会場では、その様子が映像で紹介されていましたが、だいぶワイルドな制作スタイルでした。
ちなみに。
こちらのコーナーでは、現代彫刻家の中村義孝さんの作品も紹介されています。
展示の一角では、知ってるようで知らないブロンズ像の作り方を、
新作の 《若い力士》 を例に、パネルを交えて詳しく紹介していました。
さらに、パネルだけでなく、原形や石膏の型など、
制作途中の様子の実物も展示されていたのですが。
その一部が完全にヘルレイザー。
・・・・・・・怖いよ。
ちょっとトラウマになりそうです。