1年以上ぶりに、市原湖畔美術館に行ってきました。
withコロナ時代ということで、感染症対策はバッチリ!
美術館の監視員も兼ねたKOSUGE1-16によるアート作品 《Toy Soldier》 も・・・・・
ちゃんとマスクを着用していました。
相変わらず、センサーが来場者を感知するまでは、
だらっとしたポーズを取るというサボり癖はありましたが。
マスクに関しては、サボることなく常に着用しているようです。
さてさて、そんな市原湖畔美術館で開催されているのは、
“田中信太郎展 「風景は垂直にやってくる」” という展覧会。
昨年8月に惜しまれつつこの世を去った美術家、田中信太郎さん。
その60年にも及ぶアーティスト人生を振り返る展覧会です。
会場に入ってまず出合ったのは、《音楽》 という作品。
1960年に結成され、数年活動した前衛芸術グループ、
ネオ・ダダイズム・オルガナイザーズに参加していた頃に構想された作品です。
ピアノの上に大量に乗っているのは、さまざまなタイプのヤカン。
そして、その中には人形の身体の一部が詰め込まれています。
なかなかに衝撃的な光景です。。。
夢に出てきそうで、眠るのが怖くなりました。
ちなみに、一つだけヤカンではなく、ランプ (?) に入った人形があります。
完全にスッポリ収まっていますが、どこから入れたのでしょう?
それを考えていると、逆に、夜も眠れなくなりそうです。
さてさて、若き日はこのようなインパクト大な作品を制作していた田中氏ですが。
その後は、当時の美術界の潮流と呼応するかのように、
作風はガラッと変わり、シンプルでミニマムな作品なども制作するようになります。
シンプルでミニマムながらも、どの作品も決して退屈な印象は無く。
むしろ、そこに何か深い意味が込められていそうな、深遠さがありました。
さらに、印象的だったのが、その意味深な作品タイトル。
《彼岸の陽炎、あるいは子宮の彼方から》 や、
《何故、その庭に翳りはないのか》 など、
独特なネーミングセンスを発揮していました。
中でも一番耳に残ったのが、展覧会のタイトルにもなっている 《風景は垂直にやってくるⅡ》。
「風景が垂直にやってくる」 とは、これいかに。
どうやら、田中氏は40代の頃に、
故郷の日立市で、約5年に及ぶ療養生活をしていたのだそう。
そんなある日、雷が落ちる光景を見て、風景が垂直にやってくると感じたのだとか。
さらに、その後、何気なく世界地図を眺めていたところ、
あるページを目にして、まさに雷に打たれるような体験をするのです。
「ナイル川と雷の形は似ているじゃないか!」 と。
かくして、田中氏は作品のモチーフにナイル川を描き込むようになりました。
《風景は垂直にやってくるⅡ》 にも、実はナイル川が描き込まれています。
わかりづらいかもしれませんが、シワのように見えるのがナイル川です。
タイトルは “垂直” なのに。
実際のナイル川も南北に広がっているのに。
なぜか、絵では平行に流れています。
この一筋縄ではいかない、どこかはぐらかされる感じが、田中信太郎ワールド。
じわじわハマるタイプのアーティストといえましょう。
ちなみに、田中信太郎氏といえば、
コミッションワーク・・・いわゆるパブリックアートを多く制作していることでも知られています。
美術館の外にも、赤トンボをモチーフにした作品が設置されていました。
また、会場では、それらのコミッシヨンワークの図面も展示されていました。
建築の図面のように丁寧に描かれているのですが・・・。
なぜか、描かれている人に関しては・・・・・
宇宙人かアメーバかのようでした・・・。
やはり一筋縄ではいかない、掴みどころのない田中信太郎氏。
もしかしたら、この人型はそんな彼自身を表しているのかもしれません。