渋谷区立松濤美術館で開催中の展覧会、
“後藤克芳 ニューヨークだより” に行ってきました。
こちらは、山形県に生まれ、28歳で渡米してから2000年に病没するまで、
ニューヨークで活動を続けたアーティスト後藤克芳の都内では初となる展覧会です。
ぶっちゃけた話、ノーマークもノーマークの展覧会だったのですが。
久しぶりに、ガツンとやられました。
「こんな面白い作家がいたのかーーー!」 と。
展覧会を訪れて数日経っていますが、いまだ興奮冷めやらぬ。
早くも、もう一回改めて訪れたくて、ウズウズしております。
武蔵野美術学校西洋画科に入学した若き日の後藤克芳は、
オーソドックスな肖像画や当時流行していたアンフォルメル風の抽象画を描いていましたが。
(注:館内は写真撮影禁止です。特別な許可を得て撮影しています。)
長年憧れていたニューヨークに渡ってからは、
現地で流行していたポップアートの作風を取り入れるように。
そこから、さらにオリジナリティを模索し続け、
やがて、半立体作品を制作するようになりました。
ちなみに。
こちらの切手をモチーフにした 《COLORADO》 は、
彼がニューヨークで認められるきっかけとなった代表作。
身近なもの同士を組み合わせて、意外な面白さを生み出す。
ポップアートの作家として紹介されていましたが、
その作風は、マグリットやマン・レイらシュルレアリスムの世界観にも通ずるところがありました。
ダイバーが使うフィンがモチーフの 《MEMORY》 も、
思わずニヤリとさせられるマグリット的ユーモアが感じられる作品です。
先端の方が劣化し、ところどころに穴が開いています。
その穴をよくよく見てみると・・・・・
エイやサメなど、魚の形になっていました。
シンプルながら、センスが光る作品です。
この他にも、ドーナッツとレンガを組み合わせた作品や、
どんなに壊そうとしても壊れなかったと思われる愛の南京錠など、
ウィットに富んだ作品が会場いっぱいに展示されています。
そのアイデアもさることながら、何よりも驚かされるのは、
実は、これらの作品がすべて木で制作されているということ。
そう。ゴムのように見えるあのフィンも、
ドーナッツもレンガも、鉄製に見える南京錠も、すべて木!
ベニヤ板や廃材を貼り合わせ、その上に着色を施しているのです。
そう言われたところで、まったく木に見えないのですが。
実は着色されているのは、表面だけとのこと。
裏返すと、ハリボテ感満載 (?) なのだそうです。
単なるアイデア勝負の作品ではなく、
実は超絶技巧で制作された作品だったのですね。
なお、マッチをモチーフにしたこちらの作品にいたっては・・・・・
サイドから覗いてみると、中に燃えたマッチがあるのが確認できました。
なんという芸の細かさ!
実は、幼い頃に脊椎カリエスを患ったという後藤克芳。
大人になっても、その身体にハンディを抱えていたそうです。
そんなハンディと戦いながらも、これだけ細かい作品を制作していたのかと思うと、
さらには、日本ではなくニューヨークを舞台に奮闘していたのかと思うと、胸が熱くなりました。
世の中には、こんな知られざるスゴいアーティストがいたのですね。
だから、展覧会巡りはやめられません!
ちなみに。
展覧会のラストでは、後藤が飼っていた猫をモチーフにした作品群と、
キース・ヘリングの死に大きな影響を受け、
制作するようになったというエイズ問題を取り上げた作品群が紹介されていました。
(男性器やコンドームといったモチーフをポップに仕上げています)
展覧会は前後期制。
わずか3週間で、一部の作品は入れ替わってしまいます。
後藤克芳が気になった方は、今すぐ渋谷区立松濤美術館に・・・・・
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