この秋、東京藝術大学大学美術館では、
“藝大コレクション展2020―藝大年代記” という展覧会が開催中。
「年代記」 と書いて、「クロニクル」 。
藝大コレクションを年代順に紹介する展覧会です。
(注:館内は写真撮影禁止です。特別な許可を得て撮影しています。)
まず、いきなり展覧会の入り口に飾られているのは、
左から原田直次郎の 《靴屋の親爺》、高橋由一の 《鮭》、黒田清輝の 《婦人像(厨房)》。
東京藝術大学コレクションを代表する・・・・・いや、日本を代表する美術作品の数々です。
今でこそ日本美術史に名を残すこれらの作品ですが、
実はもともとは、東京美術学校 (現・東京藝術大学) の教材として購入されたものとのこと。
なんと当時の学生たちは、これら一級の美術品をお手本にしていたのですね。
とこのように、展覧会の第1部では、藝大コレクションの中から、
かつては教材として使用されていた日本美術や洋画などの名品が紹介されています。
さらには、縁あって東京藝術大学に収蔵されることとなった、
狩野芳崖の 《悲母観音》 や上村松園の 《序の舞》 といった名品の数々も!
あまりにも出し惜しみなく、藝大コレクション特A級の作品が出展されているので、
“もしかしたら、今展をもって最終回なの??” と、不安に感じてしまうほどでした (笑)
(注:東京藝術大学大学美術館は、閉館の予定はありません)
さてさて、第1部では教材としての美術品、
つまり、学校側・教育する側の美術品が紹介されていますが。
第2部では、その逆で、学生側の美術品が紹介されています。
メインとなるのは、卒業制作としての自画像。
何度か中断された時期もあったようですが、明治31年から現在まで、
東京藝術大学では、卒業制作の課題として自画像が制作されているそうです。
そうして制作された自画像は、基本的には東京藝術大学に納入されるのだとか。
その総数は、2020年現在で6000点を超えているのだそう。
今展では、それらの中から厳選された自画像の数々を大放出されています!
まさしく 「年代記」 のように、壁一面にズラリと並べられた様は、実に圧巻。
東京藝術大学が刻んだ歴史の長さを、感じずにはいられない光景です。
ちなみに、これらの自画像の中には、
藤田嗣治、萬鉄五郎、佐伯祐三、香月泰男ら、美術界のレジェンドたちの姿も。
当たり前ですが、どんな巨匠にも学生時代があったのですね。
また、意外なところでは、ガラス工芸家の岩田藤七、
インダストリアルデザイナーの柳宗理、草月流家元の勅使河原
意外にも、彼らは西洋画科で学んでいたのですね。
ちなみに、個人的に興味深かったのは、1920年代あたりの自画像群。
誰とは言いませんが、明らかにピカソの影響を受けている人がいました。
それも2人も。
ピカソ風で描きたくなる気持ちはわかりますが、
何も自分の顔までピカソに寄せなくてもいいのに (笑)
なお、第2部の会場では、自画像とは別に、
卒業制作で制作され、納入された作品の一部も展示されていました。
それらの中には、横山大観の 《村童観猿翁》 や和田英作の 《渡頭の夕暮》 も。
これだけの名品が観られて、観覧料はなんと一般440円 (安~い!)。
ワンコインでお釣りがくるだなんて!
高コスパな展覧会です。