現在、板橋区立美術館で開催されているのは、
“だれも知らないレオ・レオーニ展” という展覧会です。
レオ・レオーニを知らないという人の中には、この展覧会タイトルを見て、
「知らないのは私だけじゃないんだ!」 と思われた方もいらっしゃることでしょう。
残念ながら、レオ・レオーニは、決して知名度0な人物ではありません。
もし、その名は知らずとも、彼が創作した絵本 『スイミー』 や、
『フレデリック』 、 『アレクサンダとぜんまいねずみ』 は、一度は読んだことがあるはず。
そう、レオ・レオーニは誰も知らないどころか、
むしろ誰もが知る世界的な絵本作家と言っても過言ではありません。
・・・・・・・・じゃあ、何でこんなタイトルなのかと言いますと。
この展覧会では、レオ・レオーニが絵本作家になる前、
意外と知られていないその半生にスポットが当てられています。
いうなれば、レオ・レオーニのエピソード0を紹介する展覧会なのです。
レオ・レオーニが最初の絵本を出版したのは、実は49歳の時。
その以前は、グラフィックデザイナーとして活動していたそうです。
それも、ヨーロッパやアメリカを転々としながら。
会場では、そんなデザイナー時代に彼が手掛けた広告やグラフィックが展示されていました。
正直なところ、絵本作家のイメージしかないので、
デザイナーとしてはあまりパッとしなかったのかと思いきや。
MoMA (ニューヨーク近代美術館) やユニセフの仕事をはじめ、
タイプライターのオリヴェッティ社や、
ビジネス誌 『フォーチュン』 のアートディレクションなど、大手の仕事を数多く手がけていました。
パッとしないどころか一流も一流。
超一流でした。
デザイナーとして、これほど輝かしい功績を残しているのにも関わらず、
それをすべて上書きしてしまう (?) 絵本作家としての才能のエグさたるや!
これまでも何度かレオ・レオーニの展覧会が開催されており、
そのたびに、彼の絵本作家としてのスゴさを思い知らされてきましたが。
今回の展覧会で、よりその才能のスゴさを思い知らされました。
ちなみに。
個人的に一番印象に残った広告グラフィックは、
アメリカのニコルソン社の棒やすりのための広告です。
レッドブルのCMのような洒脱さがあります。
これが、あのレオ・レオーニが手掛けたものだなんて。
しかも、今から80年前、1940年の広告だなんて。
思わず三度見してしまいました。
人生で初めて、棒やすりを買ってみたい気になりました (笑)
さてさて、展覧会では、誰も知らない広告だけでなく、
誰も知らないレオ・レオーニが描いた風刺画の数々も紹介されていました。
それにくわえて、油彩画や立体作品なども。
レオ・レオーニの誰も知らない一面が、次々と明らかにされます。
とはいえ、レオ・レオーニの絵本のファンの皆さま、ご安心を。
『フレデリック』 や 『アレクサンダとぜんまいねずみ』 といった、
誰もが知るレオ・レオーニの絵本の原画もちゃんと展示されています。
さらに!
今回の展覧会には、昨年初来日し話題となった、
スロバキア国立美術館が所蔵する貴重な 『スイミー』 の原画も出展されていました。
正確には、原画のような原画ではないような。
というのも、昨年の調査により、実際の絵本に使われたものでないことが判明したそうです。
レオ・レオーニが絵本のイラストとそっくりな絵を描き、スロバキア国立美術館に寄贈したのだそう。
本当の原画はどこにあるのか?なぜ、レオ・レオーニは新たな絵を描き下ろしのか?
いろいろと謎のままだそうですが、
『スイミー』 の原画として現存しているのは、この5点のみ。
貴重なことには変わりありません。
板橋区立美術館はもっと大々的に告知すればいいのに。
『スイミー』 の原画が来日していることを、誰も知らない。
ちなみに。
展覧会もかなり充実していますが、
ミュージアムショップもかなり充実しています。
板橋区立美術館の職員さんたち曰く、
立ち入るたびに財布のひもが緩んでしまうので、
なるべく立ち入らないようにしている特設ミュージアムショップとのこと (笑)
クレジットカードが使えないので、懐に余裕をもって訪れることをおススメいたします!