約3年の工事を経て、2018年に新装リニューアルオープンした 「とらや 赤坂店」。
その地下1階にある虎屋 赤坂ギャラリーで、現在開催されているのが、
“ようこそ!お菓子の国へ ―日本とフランス 甘い物語―” という企画展です。
パリのコンコルド広場のほど近く、
オランジュリー美術館からも徒歩7分ほどの距離にある 「とらや パリ店」。
1586年に創業した虎屋の長い歴史からすれば、
まだまだ大したことなく感じられるかもしれませんが。
実は今年、「とらや パリ店」 がオープンしてちょうど40年を迎えました。
(パリでも老舗の部類に入るそうです!)
それを記念して開催されているのが、今回の企画展。
『日仏の菓子くらべ』 をテーマに、5つの切り口 (エリア) で、
和菓子とフランス菓子の違いやそれぞれの魅力を紹介するものです。
ちなみに、こちらの企画展には、
フランスを代表するあのパティスリー 「ピエール・エルメ・パリ」 が全面協力しています!
日本とフランスのお菓子界の2大巨頭がタッグを組んだ、甘党には夢のような企画展です。
まず、企画展は 『お菓子ヒストリー』 のエリアからスタート。
日本とフランスのお菓子の歴史の中で、
特に重要な5人の歴史上の人物が紹介されていました。
また、こちらのエリアには、全長3mと大きすぎて写真に収めきれないお菓子年表も。
「クグロフは、マリー・アントワネットによって、オーストリアからフランスにもたらされた」 とか、
「1961年に林虎彦なる人物によって和菓子界の大発明とされる自動餡包機が発明された」 とか。
興味深いトピックは、多々紹介されていましたが。
アートテラー的に一番驚いたのが、ミルフォイユ (ミルフィーユ) に関してのトピック。
画家のクロード・ロランが菓子職人をしていた頃、
失敗から生まれたのが、ミルフォイユだったという説もあるのだそうです。
意外なトリビアでした。
18へぇ。
続いてのエリアは、『くらしとお菓子』 です。
こちらでは、日本とフランス両国の季節や行事ごとのお菓子が紹介されていました。
桜餅や柏餅、ビュッシュ・ド・ノエルなど、
馴染みのある和菓子やスイーツも紹介されていましたが。
中には、まったく馴染みのないものも。
見た目は、完全に醤油入りのタレ瓶でしたが。
ポワソン・ダブリルなる魚をモチーフにしたスイーツとのこと。
フランスでは、エイプリルフールの時期になると、
魚型のチョコやパイ、パンなどが店頭を飾るのだそうです。
また、日本で馴染みがないといえば、こちらのガレット・デ・ロワも。
フランスでは、1月6日に行われる公現祭という行事の日に食べられるのだそう。
なお、このお菓子の中には、陶製の小さな人形 「フェーヴ」 が入っており、
切り分けられた中に、その 「フェーヴ」 が入っていた人は幸福が訪れるのだとか。
会場では、とらや パリ店とピエール・エルメ・パリで、
これまでに発売されたガレット・デ・ロワの中に忍ばせていたフェーヴが展示されていました。
ピエール・エルメ・パリのフォーヴは、なんともアーティスティック!
対して、とらや パリ店のフェーヴは、
毎年、和菓子をモチーフにしているそうです。
そのキュートさたるや!
ガレット・デ・ロワに限定せず、
むしろ羊羹の中にも忍ばせておいて欲しいものです。
さてさて、展覧会では、この他にも、
日本とフランスの垣根を越えて、お菓子の世界で活躍している方へのインタビューや、
とらやとピエール・エルメ・パリの菓子職人によるインタビュー映像など、
興味深く感じられるコーナーが数多く用意されています。
甘いお菓子のその裏側にある甘くない努力。
お菓子一つに、いろんな歴史や創意工夫、行程が詰まっているのですね。
これからはもっと有難がって、もっと味わって食べたいと思います。
なお、個人的に一番感銘を受けたのは、和菓子 (上生菓子) と、
オート・パティスリー (高級菓子) を、五感ごとに比較したボードです。
詳しく説明すると、それだけで1本の論文になってしまいそうなので、渋々割愛しますが。
(↑実際は面倒くさいだけ。自分に甘い!)
和菓子とフランス菓子の違いは、
日本画とフランス絵画の違いと、かなりリンクするものがありました。
たかがお菓子の展覧会と侮るなかれ。
お菓子を通じて、両国の文化を学べる展覧会です。