東京国立近代美術館工芸館、改め、「国立工芸館」 が、
先月10月25日に、移転先の金沢にてリニューアルオープンしました。
建物は、旧第九師団司令部庁舎と旧金沢偕行社を活用。
2つの歴史的建造物を繋ぎ合わせる形でリニューアルされています。
東京国立近代美術館工芸館よりも、外観は明らかに大きくなりましたが。
実は展示スペースは、向かって左側の旧第九師団司令部庁舎の建物のみ。
緑色の外観が特徴的な右側の旧金沢偕行社は、
事務棟となっており、一般人は立ち入ることができません。
というわけで、トータル的にいえば、
東京国立近代美術館工芸館時代と比べて、
展示スペースの広さは、そんなには変わっていませんでした。
むしろ若干狭くなっていたような。
変わっていないといえば。
内部の雰囲気も、東京国立近代美術館工芸館とそっくり!
あまりにも似すぎているため、
生き別れの兄にでも遭ったかのような気分でした (←?)。
なお、踊り場の窓から、ふと外に目をやると・・・・・・・・・
東京国立近代美術館工芸館時代も、
建物の裏側に設置されていた橋本真之さんの彫刻作品の姿が!
この巨大な作品も、ちゃんと金沢に引っ越してきていたのですね。
懐かしい再会に、思わず胸が熱くなりました。
ちなみに。
国立工芸館の名誉館長に、
ヒデこと中田英寿さんが就任されたということで。
日本酒も提供するカフェスペースなんかが誕生しているかも、と期待していたのですが。
どうやら東京国立近代美術館工芸館時代同様、カフェスペースはない模様です。
逆に、変化したところと言えば。
東京国立近代美術館工芸館にあった展示和室が無くなり、
その代わりに、金沢と縁の深い漆芸家・松田権六の仕事場を再現したスペースと、
若手作家を紹介する 「芽の部屋」 なる展示スペースが新たに誕生していました。
一つ一つのスペースがそう大きくはないので、
かつてのようなダイナミックな展示は出来ないのかも。
何はともあれ、生まれ変わった国立工芸館の今後を注目し続けていこうと思います。
さてさて、そんな国立工芸館のオープニングを飾るのは、
“国立工芸館石川移転開館記念展Ⅰ 工の芸術―素材・わざ・風土” です。
国立工芸館が所蔵する約3900点のコレクションの中から、
「素材・わざ・風土」 をキーワードに、約130点を紹介する展覧会です。
それらの中には、陶芸家初の文化勲章受章者・板谷波山の 《葆光彩磁牡丹文様花瓶》 や、
人間国宝の人形作家・平田郷陽の 《桜梅の少将》 、
さらには、コレクションで唯一の重要文化財である鈴木長吉の 《十二の鷹》 (うち3点) も。
まさしく、名品揃い!
リニューアルオープンを飾るに相応しい豪華なラインナップです。
今、『KOUGEI』 という言葉で、世界から注目を集める日本の工芸。
そのエッセンスをギュッと凝縮したような展覧会でした。
ちなみに。
なんとなくカラーリングが美輪明宏っぽい三代德田八十吉の 《燿彩鉢 創生》 や、
新手のスマートスピーカーのような山脇洋二の 《金彩鳥置物》 をはじめ、
印象深い工芸作品は多々ありましたが。
個人的に “バズるのでは?” と注目しているのが、
彫金作家・三代宮田藍堂 (宏平) による 《蠟型鋳金装身具 美豆波乃女》 シリーズです。
どことなく 「水の呼吸」 を彷彿とさせるデザイン。
鬼滅の刃夢女子に受けそうです。