現在、菊池寛実記念 智美術館で開催されているのは、
“鈴木藏の志野 造化にしたがひて、四時を友とす” という展覧会。
「志野」 の重要無形文化財保持者、いわゆる人間国宝の陶芸家、
鈴木藏 (おさむ) さんによる志野茶碗の近作・新作を中心に紹介する展覧会です。
(注:館内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)
なお、副題の “造化にしたがひて、四時を友とす” は、
松尾芭蕉の紀行文 『笈の小文』 の序文に登場する一節とのこと。
「造化」 とは、神や自然のような絶対的な存在を、
「四時」 は 「よじ」 ではなく、「しいじ」 と読み、四季を意味しているそうです。
ところで、志野とは一体どんなやきものなのでしょうか?
展覧会の冒頭では、このように説明されていました。
「志野は、ざんぐりとした焼け味の土に長石の白釉を合わせることで生まれるあたたかみのある白や、窯の熱により引き出される鮮やかな緋色が魅力のやきものです。」
“ざんぐり” という言葉を初めて聞いたので、
焼け味に関しては、正確に理解できた自信はありませんが。
ざっくりとは、イメージできた気がします。
ちなみに、もともと志野は、岐阜県の東濃地方にて、
桃山から江戸時代初期にかけて、わずか20年ほどの期間に生産されていたのだそう。
その後、パッタリ作られなくなり、技術も途絶えていきます。
再び志野に脚光が浴びるのは、昭和初期になってから。
陶芸家や学者、愛好家らによって復興され、再評価が進んだのだそうです。
そんな志野のふるさと、東濃地方に生まれたという鈴木藏さん。
20代で作陶の道に入ってから、
86歳となった今日まで、志野一筋で取り組んできました。
その直向きな姿勢が、作品名に反映しているのでしょう。
こちらの茶碗も。
こちらの茶碗も。
手前の茶碗も、その奥に見える茶碗も。
すべて、《志野茶碗》 というタイトルでした。
作品名に、余計なものは入れない。
そんな気概のようなものを感じました。
鈴木藏さんが生み出した志野の数々を目にして、
率直に実感したのが、火が生み出した芸術品であるということ。
改めて、やきものが “焼き物” であることを再確認させられました。
特に、炎の勢いが凄まじかったのが、こちらの2点の 《志野茶碗》。
表面に見えているのは、
炎の呼吸の壱ノ型か二ノ型か。
はたまた、肆ノ型か。
(注:つい最近、『劇場版「鬼滅の刃」 無限列車編』 を観たため、その影響が出ています)
展覧会には茶碗だけでなく、
皿や水差、花生なども併せて展示されていましたが。
こちらの 《志野香炉》 に関しては・・・・・
完全に、炎の呼吸の奥義のレベル。
もしかしたら、鈴木藏さんは炎柱なのかもしれません。
この展覧会に一人でも多くのお客さんが動員できますように。
「#鈴木藏さんを3万人の男にしよう」 というハッシュタグで盛り上げたいところです。
ちなみに。
今展には、西田幾多郎や須田剋太による書も参考出品されていました。
書と志野の取り合わせが楽しめます。
会場のラストでは、熊谷守一による書も。
一瞬、『半ぐれ』 と空目してしまいましたが。
ちゃんと読んだら、『土ぐれ』 でした (笑)
“土のかたまり” というような意味だそうです。