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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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【特別展】東山魁夷と四季の日本画

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いろいろあった2020年。

そのラストを飾るべく、現在開催中の特別展、

“東山魁夷と四季の日本画” を観に、山種美術館に行ってきました。

 

 

 

昭和の国民的画家と謳われた東山魁夷。

そんな彼の作品を、「四季」 や 「風景」 といったテーマで紹介する展覧会です。

さらには、東山魁夷だけでなく、近現代の日本画家たちが描いた、

「四季」 や 「風景」 をテーマにした作品も併せて紹介されています。

 

結城素明 《春山晴靄・夏渓欲雨・秋嶺帰雲・冬海雪霽》  1940(昭和15)年頃 絹本・彩色 山種美術館

 

 

例年以上に、家にいることが多く、

例年以上に、旅行して自然を感じることが少なかった2020年。

せめて日本画の世界の中でも、

「四季」 や 「風景」 を存分に味わえてよかったです。

星星

2021年こそは、 「四季」 や 「風景」 を、

たくさんリアルに感じられることを心から願っております。

 

そうそう。

今年見れなかったといえば、花火も。

 

加藤栄三 《流離の灯》 1971(昭和46)年 紙本・彩色 山種美術館

 

 

東山魁夷の東京美術学校時代の同級生の一人、

加藤栄三の 《流離の灯》 が出展されていたおかげで、花火気分も味わえました。

ちなみに、こちらは、加藤の郷里である岐阜の花火大会なのだそう。

長良川に浮かぶ屋形船と灯篭流しも描かれており、なんとも幻想的な光景です。

もちろん、2020年は開催中止だったとのこと。

来年こそは開催されますように!

 

 

さて、展覧会の目玉となるのは、やはり何といっても、

縦約2m、横約9mの東山魁夷の大作 《満ち来る潮》 です。

 

東山魁夷 《満ち来る潮》 1970(昭和45)年 紙本・彩色 山種美術館

 

 

この絵の元ネタ (?) は、皇居新宮殿のために描かれた 《朝明けの潮》
昭和43年に新築された皇居宮殿を飾るべく、

当時の日本画家のレジェンドたちが、その腕を振るいました。
完成後、実際にそれらの絵画を皇居宮殿で目にした、

山種美術館初代館長、山﨑種二は大いに感動したのだとか。
そして、それらの絵画を多くの人にも見てもらいたいと、
同趣向の作品を美術館のために制作してくれるよう、彼らにオファーしました。

 

山口蓬春 《新宮殿杉戸楓 4分の1下絵》 1967(昭和42)年 紙本・彩色 山種美術館

©公益財団法人 JR東海生涯学習財団

 

 

山口蓬春が描いた 《新宮殿杉戸楓 4分の1下絵》 も、

その時に描かれ、山種美術館の所蔵品となったうちの1点。

今展では他にも、種二のオファーにより描かれた、

安田靫彦や上村松篁、杉山寧による皇居新宮殿ゆかりの逸品が勢ぞろいしています。

 

さてさて、話を 《満ち来る潮》 に戻しまして。

実は、《満ち来る潮》 は 《朝明けの潮》 とは決定的に違う部分があります。

引き潮の情景を描いた 《朝明けの潮》 に対し、

東山魁夷は 《満ち来る潮》 を、あえて満ち潮の情景で描いたのです。
山﨑種二が証券会社の社長だったので、縁起を担いだのだとか。

なるほど!

 

ただ、揚げ足を取るようでなんですが。

朝明けのほうが陽が昇るのに対し、満ち来るのほうは夕方、つまり陽が沈むわけです。

それはそれで縁起が悪いような・・・??

とりま、そこは深く考えないようにしまして。

これまでに何度も目にしている 《満ち来る潮》 ですが、

今回改めて、じっくりと向き合って、初めて気が付いたことがありました。

それは、海の色がエメラルドグリーンであるということ。

沖縄やセブ島の海くらいエメラルドグリーンです。

 

東山魁夷 《満ち来る潮》 1970(昭和45)年 紙本・彩色 山種美術館

 

 

冷静に見たなら、リゾート感満載 (?) の海なのに。

特に違和感を覚えることが無く、

なんなら日本の原風景であるように感じられます。

そこに改めて、東山魁夷のスゴ味を感じました。

 

また、京都の四季を描いた 「京洛四季」 のうちの1点、

東山魁夷  《秋彩》 も、改めてよく見てみるとスゴい作品です。

 

東山魁夷 《秋彩》  1986(昭和61)年 紙本・彩色 山種美術館

 

 

真っ黄色に、真っ赤に、真っ青。

実際には、まずありえない光景。

スマホで撮った写真をフィルタで編集したような色合いです。

つまり、インスタ映えな画になっているはずなのですが、

ちゃんと日本の古き良き伝統が、そして、京都の四季が感じられるのです。

ビビッドやドラマチックに加えて、

スマホのフィルタに、「ヒガシヤマ」 があったらいいのに。

 

 

本年も 『観シュランガイド』 にお付き合いくださいまして、誠にありがとうございました。

今年最後に皆様に紹介する美術作品は、こちら。

 

東山魁夷 《年暮る》  1968(昭和43)年 紙本・彩色 山種美術館

 

 

《年暮る》 です。

激動の2020年ではありましたが、

年越しくらいは、この絵のように穏やかな気持ちで過ごしたいものです。

皆さま、どうぞ良い年越しをお迎えくださいませ。





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